20話
予定通りにいけば、あと数話で完結です。
2月3日 修正。
あのあと、一緒に『avil・anel』やろうという話になり、私たちは一度別れた。
現在、始まりの街広場に集合しているが、来ているのは私と晴さんだけ。
鈴崎君は、住んでいるのが隣町の隣町なだけに、やはり時間がかかるようだ。
「あっ、ミミルさんinしてる」
「? 誰?」
「この間のイベントでお世話になった人です。女性の方で」
「へー。あ、そっか。あのイベント、パーティーじゃないとダメだしねぇ」
「そうなんですよ」
私が相槌を打つと、晴さんは再び悪い笑みを浮かべながら、こちらをみた。
「その人、呼んで?」
「良いですけど……」
フレンドの機能にメッセージというものがあり、フレンドにメールを送ることができる。
私はメッセージ作成ボタンを押し、キーボードを表示させた。
『ミミルさん、今どこ?』
『えっ、ええと、リーディにいます』
『あっ、近いね。今からパーティで狩りに行くんだけど、ミミルさんも行かない?』
『えっと……良いんですか?』
『良いから誘ってるんじゃない』
『いえ、違くて……お仲間さんとかが』
『それなら大丈夫だよ。元々、誘おうって言ったのがその人だから』
『……では、よろしくお願いします』
『ん、じゃあ、始まりの街の広場に来てね』
『はいっ』
どうやらオーケーのようだ。
「オッケーみたいですね」
「……何というか、アイナちゃんって女性プレイヤーのエンカウント率高くない? このゲーム、ネカマができないからなかなか見れないのに」
「なんなんでしょうね」
そんな会話をしていると、視界の端に見覚えのある朱色が写った。
相変わらず、戦闘装備が似合わない可愛らしさだ。
「す、すいません……お待たせしました」
「良いよ。気にしないで」
「君がミミルちゃんかぁ……」
ハルナさんが、ミミルさんをまじまじと見る。というか観察?
この視線はコミュ障にはきついようで、ミミルさんが助けの視線を向けてくる。
うんうん、分かるよミミルさん。
「大丈夫。この人はハルナさん。私のパーティメンバーだよ」
「あ、そ、そうでしたか。すいませんでした……」
「いーよいーよ。私もごめんねー?」
「いえ……」
反省なんて空の彼方にふっとんだ謝罪だけど、いいのか。
「ん? ミミルちゃん。その大杖……」
「は、はい……?」
「『世界樹の枝』じゃない? この間のユニークボスのドロップ品!」
「え、あ、はい。そうですが……」
「やっぱり! 凄い!」
「や、そんなこと……ないです」
「あの、すいません。私全然ついてけないです」
世界樹の枝とか、この間のユニークボスとか全くわからない。
「えっと、丁度一月前の今頃なんだけどね」
私がまだ『avil・anel』をプレイしてない時期だ。
「リーディの近くの森に『世界樹ユグドラシル』っていうユニークボスが出たんだけど、それがまた強くてさ。三時間かけて削りきったらしいんだよね」
「は、はい。それで、たまたま私がラストアタックで……」
なるほど。ドロップ品は、基本的にラストアタックをとった人にいくらしいから、考えてみれば当たり前か。
「あの~……」
「わっ!」
「キャッ!」
「……鈴崎君」
いきなり声をかけてきたのは、現実と大体同じ見た目の鈴崎君だった。
「だっだだだだ誰ですか?」
「ミミルさん落ち着いて。この人も一応パーティメンバーだよ」
「ミミルちゃん、この人の存在感のなさは折り紙付きよ。これくらいで驚いてちゃだめ」
「ちょっ、なにこの状況!? 俺呼ばれたんだよね!?」
「ミミルちゃんが怯えるから帰ってくれる?」
「マジか!?」
このノリは、数十分続いた。