13話
ガラケーだと章管理ができないのに気づきました。
1月8日 一部描写を修正しました。初夏を初秋と書いてしまった…恥ずい
朝のやけに眩しい陽光が、私の顔を照らす。
あまりの眩しさに、一度目をギュッと閉じてから、私は目を覚ました。
窓の外に写る住宅街が、朝焼けの黄色がかったオレンジに染まっているのを、寝起きでぼやけた目でじっと見る。薄くかかった霧がとても綺麗だ。
……そうだ、ご飯食べてたら強烈な眠気に襲われて、お風呂だけ入ってベッドに直行したんだっけ。仮想世界では、体は疲れないけど頭が疲れるから。
「久しぶりによく眠れたな……」
……それにしても、久しぶりに昔の夢を見た。
今は何とも思ってないけど、当時はしばらく殺してやりたいと思っていた。
今思うと、物騒だなぁ。
「とりあえず……ご飯」
誰に話すともなく呟くと、私はゆっくりと起き上がった。飾り気のない簡素な自室のドアを開けると、廊下の明かりが薄暗い部屋を僅かに照らす。
ああ、しまった。昨日つけっぱなしで寝ちゃった。電気代勿体ないな。
と、頭の中で反省しながら明かりを消した。
朝食を目玉焼きトーストで手早く済ませ、外出の準備を始める。
買い出し行かないと、いよいよ食べるものが無くなってしまう。
流石に、お腹を空かせたままやりたくはない。
寝間着を脱ぎ、ジーパンとTシャツを着る。
そのまま外出しようしたが、霧がかかっていたのを思いだしてハンガーにかかった薄いパーカーを羽織った。
玄関前の鏡で身だしなみを確認すると……髪が爆発している。手櫛で直してみるが、すぐに戻ってしまう。
こういう時、自分の長い髪が鬱陶しく感じる。切ろうにも自分じゃ切れないし、美容室なんて行ったら生活が苦しくなるから、行ったことない。
ちょっと余裕できてきたし、切ろうかなぁ。
なんて考えているうちに、何とかパッと見わからない程度に直った。
大分時間を食ってしまった。急がないと、朝の野菜が売り切れてしまう。
……自分で言うのもなんだけど、おばさんみたいなこと言ってるなぁ。
生活の為だから、仕方ないんだけどね。
気を取り直し、玄関を出て外に出る。
「うっ……寒い」
夏とは思えない冷たい空気が肌を刺した。深呼吸してみると、吸う空気が冷たすぎて肺が痛くなる。
ほんの数時間前までの暑さが嘘のような寒さだ。
仕方なく、体を温めるために小走りでスーパーへ向かうことにする。
「わっ、とと」
が、想像以上に体が動かず、つんのめって転倒しそうになった。
現実の私の運動神経の悪さは折り紙つきだ。
例をあげるなら、本気で勝ちに来てるドッチボールで、真っ先に狙われるレベル。
ああ、アイナの体が懐かしい。
五分ほど歩く(時々走る)と、目的地が見えてきた。
このスーパーは、新鮮野菜や肉、その場で作る美味しいお惣菜等が売っているため、よく足を運ぶ店だ。
隅っこの方に文房具が売ってるのはご愛嬌。
それにしても、入り口周辺の雨よけがテントなのは田舎だからなのか。
まぁ、どうでもいいか。
今日の昼食、何にしよう。今寒いから暖まるものが食べたいんだけど、昼にはまた暑くなるだろう。それに、暖かいものは必然的にほぼ汁物になる。
ちょっと面倒なんだよね。出汁とったり、柔らかくなるまで煮込んだり、逆に煮崩れしないように気を使ったり。だから、このうち2つ当てはまるじゃがいもなどの芋系は少し苦手だ。食べるのは好きだけど。
ずらっと並ぶ野菜を歩きながら見ていく。
あ、ネギが安い。
あ、冷たい麺にしようかな。ざるそばとか。私大好きだし。そばつゆの為なら出汁をとる時間も惜しくないくらい。
……だんだんそば食べたくなってきた。家に海苔あったかな…
とりあえず、麺を買わないと。
私は、近くの麺コーナーにあるそばを取り、かごに入れた。
「あの~」
不意に、背後から声をかけられた。
知らない声だけど、どこかで聞き覚えがある感じかする……
物思いに耽りつつも、ゲームでは隠れていたコミュ障の虫がひょっこりと顔を出し、一瞬振り返るか躊躇してしまうが、意を決して声の主へ顔を向けた。
その瞬間。
「なんでしょ……う」
……本気で驚いた。
「やっぱり! 君、アイナちゃんでしょ!?」
そこにいたのは、クール顔の美人。それに合わない活発な話し方は最近、というか昨日聞いたばかり。
青髪ではないものの、見慣れたこの人の顔を見間違える筈がない。
「えっ。ハルナさん……ですか?」
そう、『戦う商人』こと、ハルナさんだった。
何故こんな所に居るのかは、直ぐにわかった。おそらく、奇跡的に彼女もこの付近に住んでいるんだろう。
凄い確率だ。もはや運命のようなものを感じつつ、何となく格好が気になって、彼女の服装に目を移した。
薄い水色のワイシャツに、青いチェックのリボン。濃紺のカーディガンに同色のブレザーと目を滑らしたところで、私の体に電気が走った。
1つの可能性を、チェックのスカートが目に入った瞬間、確信する。
いつの間にか、口を開いていた。
「なんで……なんで学校の制服着てるんですか!?」
まさかのハルナさんと同高でした。