読書/酒見賢一『墨攻』 ノート20180318
酒見賢一『墨攻』新潮社1991年
〈墨守〉という熟語がある。とんでもなく強固に守ることをいう。中国春秋戦国時代に墨子という博愛者を筆頭とする教団があり世界平和を訴えた。墨家教団は、紛争地域に信徒からなる部隊を送って、よく弱い側を助けた。城塞防衛のプロフェッショナルで、ありとあらゆる戦術で大軍を撃退し、あるいは負けるにしても相手に大打撃を与えて玉砕してしまう。
物語は戦国時代末期で、墨家教団も本来の志を失ってしまったころだ。そんなところに、小国・梁王国が大国趙王国の大軍二万に囲まれた。墨家出自の主人公・革離は、教団本部が動かないので、単身乗り込んで、指揮権を獲得し、敵の撃退に成功するのだが、出来の悪い王子によって暗殺されてしまう。そして、梁は趙王国に併合され、その趙王国は秦帝国に併合されてしまった。主人公が行動的なので〈墨攻〉となるわけなのだろう。
本作をもとに小学館で漫画版がでて、中国との合作で映画版もだされている。漫画版は革離が弥生時代の日本に渡ってくるラスト、映画版ではラブロマンスが付加されている。
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