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もう一度妻をおとすレシピ 第8冊  作者: 奄美剣星
読書感想文
68/100

読書/夢枕獏『闇狩り師シリーズ・崑崙の王』 ノート20180313

「闇狩り師シリーズ・崑崙の王」


 女学生露木圭子は、織田信長信長関連の研究をする歴女だ。資料を調べて行くと、信長にまつわる糸があり、長野県木祖川町の旧家・久我沼家に辿り着いた。このとき、ランドクルーザーに乗ってやってきた主人公・九十九乱蔵と出会う。九十九は、猫股を肩に乗っけた巨漢で、屈託のない笑顔と食べっぷりにほれ込む。実は拳法の達人で若き仙人でもあった。その九十九は、久我沼家の実質的な当主である議員から、この家にかけられた呪いを解いて欲しいとの依頼を受けた。しかし理由は明らかにしない。そこへ贄師と呼ばれる下法の達人・紅丸がやってきた。紅丸の正体を知る九十九は、裏事情を話すように町会議員に迫るのだが、拒否されたので、契約を取りやめてその場を去り、独自に調査を開始した。

――下法というのはインド起源のダキニ天という夜叉で、戦国武将達に信奉された戦場の女神で、やがて稲荷伸と習合することになる。真言宗高野山の鎮守が稲荷神である兼ね合いから普及する。得意技は雷。――

 裏事情は次の通りだ。

 久我沼家は、町議会を牛耳っていた当主の老人と、後継者の息子夫婦、そして跡継ぎ息子の四人で構成されている。久我沼の隠居と息子はダム工事の推進者だったのだが、川の畔には、信長に仕えていた黒人の侍、黒武士・弥次郎の子孫の家があった。本能寺の変のあと、弥次郎とその子孫はこの川の畔で暮らしていた。彼らは意図的に日本国籍をとらない。ここで十年ほど前に殺人事件が起こった。黒武士の子孫である祖父、息子夫妻の二人がおり、夫妻と双子のうちの一人が、ダム建設反対を訴えにきたとき、久我沼親子によって殺される。妻は身重で木にくくりつけられ、二人に凌辱された上に殺される。このとき双子のうちの一人が生まれた。

 その赤子は、贄師・紅丸の下法の儀式の際、額に釘を打ち付けられて殺された。もう一人の赤子は、祖父が助けにきて、嫁の遺体から腹を裂いて助け出したものだ。この祖父はアフリカ流の呪術というのだが、『遠野物語』にもある筒狐の術を操っている。――管狐の術とは犬を首まで埋めて飢え死にする直前に首を切り落とし、たかった蛆を煎じて粉薬をつくるものだ。――これを少し大きくなった孫に飲ませた。結果、赤子は成長をとめる代わりに、犬の魂魄を憑依させた。老人はこの犬を自在に操って、久我沼の先代に、さらに憑依させた。幽霊犬に身体を乗っ取られた老人は、息子の嫁を犯し、息子と孫を殺し、ついには自らも果ててしまう。

 クライマックスは、九十九と紅丸との決闘で、紅丸を討ち取って終わる。抗争には黒武士の子孫老人も加わって死ぬ。孫の少年は助かるが、管狐の術の影響で短命を宿命づけられ、九十九を嘆かせる。

 エンディングは、女学生露木圭子との爽やかな別れだ。

 なお物語には、『キマイラ』シリーズの主人公少年がゲスト登場しているのだが、こちらのほうは未読である。

 おどおろしくもあるのだが、切ない。人の生命とはガラスのように儚いものかと感じた作品だ。

          ノート20170313

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