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読書/夢枕獏『陰陽師』 ノート20180312
夢枕獏『陰陽師』文藝春秋1991
第一作は、「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」「梔子の女」「黒川主」「蟇」「鬼のみちゆき」「白比丘尼」といった短編群が収録されている。古典『雨月物語』『大鏡』『今昔物語』あたりに取材していたと記憶している。古典の総量からしてもこの陰陽師に関する資料は少ないのによくもまあ、ここまで引き延ばしたものだと思う。この物語が発表される少し前に、荒俣宏氏による『帝都物語』があり、そこでも詳細が述べられている。
第一話の「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」以来、宮廷楽人の貴紳・源博雅が登場し、陰陽師安倍晴明とコンビを組む。原典『今昔物語』には、晴明は顔を出さず、博雅が単独で活躍し、脱走した琵琶を奏でて満足させてやるという内容だった。古典のいくつかを組み合わせが楽しい伝奇である。
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