読書/菊池秀行『魔界都市〈新宿〉』 ノート20180312
菊池秀行『魔界都市〈新宿〉』朝日ソノラマ1982年
東日本大震災をはるかに超えた魔震と呼ばれる、超大型地震が東京・新宿のみで発生し、以来、サイボーグの負傷兵を含めたスラムの人間たち、魔界の住人たちが雑居する治外法権地区となる。新宿は、環状になった堀のような裂け目があり、外部から唯一新宿に通じる橋には、検問所〈ゲート〉がある。そこに、映画『スネーク』よろしく、世界連邦主席ラマ・こずみ主席が拉致されてしまう。主席を救出すべく派遣された超人少年が十六夜京也だ。京也は、主席の娘であるラマ・さやかとともに、〈ゲート〉を通って、魔界都市〈新宿〉に潜入した。
東京都庁が移設される前に書かれているので物語世界にはない。都庁がない時代の中心は東京区役所である。区役所近くに、異界からやって来たらしい手塚治虫の『ブラックジャック』みたいな美形の医師メフィストが開業している。主人公がダメージを食らったとき、世話になっていたと思う。
さて、検問所〈ゲート〉と言えば、柳内たくみの『ゲート 自衛隊 彼の地にて 斯く戦えり』とダブってくる。柳内氏のそれには『エバゲリ』のレイ他、オタク萌えのする名作キャラをさりげなく登場させているので、世界観設定の原型になっているようにも思える。
また、ちょっと萌えた場面は、スラムの女ボスが、ヒロインの美貌をねたんで、大衆の目の前で上半身裸になれと屈辱を与えようとしたとき、サーボーグ負傷兵達は、ヒロインの気高さに打たれて目を閉じる場面がある。そのあたりは、飢饉に苦しむ領民のために、悪政を敷く夫を諫め、裸になって領内をゆく領主夫人を一人だけ覗き見して、他の領民達に捕らえられ目を潰されるという英国版出歯亀太郎〈ピーピング・トム〉と違って、紳士達なのである。
ノート20180312




