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もう一度妻をおとすレシピ 第8冊  作者: 奄美剣星
読書感想文
62/100

読書/菊池秀行『吸血鬼ハンターD 妖殺行』 ノート20180312

 川尻善昭監督1999年アニメ作品『吸血鬼ハンターD Bloodlust』とともに買った原作の菊池秀行『吸血鬼ハンターD 妖殺行』について。

 原作の『吸血鬼ハンターD 妖殺行』については、アニメ版では削った小説的要素がある。つまり人間の内面描写(心の闇・エゴイズム)、具体的にはハンターとモンスターが性についての艶めかしい衝動だ。そこが、荒廃した風景と重なって、醍醐味になっている。

 世界観は、人類が核戦争でほぼ壊滅すると、宇宙の果てから吸血鬼の一族が宇宙船でやってきて、新たな一万年文明を築き地球の支配者〈貴族〉となったのだが、遺伝的な問題から衰退する。やがて中原において人類は復権したが、辺境においては、まだ〈貴族〉は残余の勢力をもっていた。そこで、吸血鬼ハンターという専業集団が生まれる。主人公ハンターDはその一人なのだが、吸血鬼と人間の混血児ダンピールだった。

 小説版の主要登場人物は次の通りだ。

 神祖ドラキュラ……串刺し公・ワラキア公ヴラド3世らしい。案外と名君らしく、吸血鬼と人類との宥和政策をやり失敗する。魔人・バルバロイと呼ばれる多くのミュータント達を混血によって誕生させた。その中での成功例がダンピールという新人種だ。神祖ドラキュラと人間女性との間に生まれたのが、ハンターDである。

 ハンターD……永遠の若さを保つ美麗な容姿で多くの女性を魅了するのだが、とても清潔で口数が少ない。細長い剣を得物としている。

 Dの左手(人面痣)……ワトソン役というのか、おしゃべりで、無口なDの内面を代弁する。適切な助言者でもあり、無謀な行動をするDの窮地を何度も救っている。

 吸血鬼マイエル=リンク男爵……かつて領民としての人類を慈しんだ名君であるが、現在は放浪の身だ。その旅の途中で人間の若い娘シャーロットに出会い駆け落ちする。

 シャーロット……さらわれた富豪の娘。絶世の美少女である。第一ヒロインである。

 マーカス兄弟……人間の吸血鬼ハンター・チームで、ボルゴフ、カイル、グローヴ、ノルトの兄弟四人と末の妹レイラからなる。レイラは四人の兄達の情婦でもある。レイラは第二ヒロインの位置づけだが実質的なヒロインだ。娘をさらわれた依頼主が、ハンターDとは別途に雇った。吸血鬼狩りに失敗すると報復される可能性があるため慣例らしい。

 バルバロイ……バルバロイの里長、および、ダンピール女性カローヌ、好色な人面痣ベンゲ、影使いのマシラの三名がマイエル=リンクの護衛役に就く。アニメ版では義侠心のある人々だが、小説版ではケダモノになっている。このうちカローヌはマイエルリンクやDに恋心に揺れる第三のヒロインだ。マーカス兄弟のレイラと対となる関係だ。


 STORY

 辺境の富豪が、娘シャーロットが吸血鬼マイエル=リンク男爵にさらわれたことにより、ハンターを雇う。ハンターは二手がいる。一方はハンターD、もう一方は、マーカス兄弟だ。ハンター達は同じ獲物を狙って、逃避行をする男爵の後を追う。男爵はかつて〈貴族〉達がつかっていた宇宙港を目指していた。そして追っ手に対抗するため、バルバロイの里に寄って、凄腕の里人三人を雇った。それがダンピール女性カローリーヌ、好色な人面痣ベンゲ、影使いのマシラの三名だ。

 男爵に雇われたバルバロイ達三名のうち影使いのマシラが、Dとの闘いで、まず脱落する。また、マーカス兄弟のうちのグローヴも倒れる。

 ここでハプニングが生じる。ベンゲはシャーロットに横恋慕をして、昼間、男爵が、吸血鬼ゆえに眠らざるを得ない体質であるのを利用して、シャーロットを騙し犯そうとするベンゲは通りかかった猟師に撃たれるが、人面痣なので、逆に猟師を乗っ取った。そこに通りかかったのは、偵察に来ていた、マーカス兄弟の末の妹レイラだ。シャーロットはレイラに助けられる。レイラがシャーロットを兄達のいる装甲車に連れて行こうとするとき、ベンゲやカロリーヌの邪魔が入り、男爵がシャーロットを奪い返す。このとき、レイラとカロリーヌは、Dと出会い、Dの美麗な容姿に魅了された。Dは戦闘直後、陽射病というダンピール特有の持病で倒れ回復のため土中に身を横たえ眠る。偶然通りかかったレイラは、その間Dを護衛した。

 そして、ついに一同は宇宙港に辿り着く。しかしすでに宇宙船は錆びついて星間旅行などできないガラクタと化し、宇宙港は廃墟になっていたのだ。マーカス兄弟のうちここまでたどり着いたのは、ボルゴフとノルト、そしてレイラの三人だ。ノルトは重病人だが幽体離脱して、大量殺戮をする超能力を持っていた。ノルトはどのみち助からないので、ボルゴフは、ベッドに横たわった末弟を時限式で死ぬようにセットしつつ、自らも最後の戦いに出向く。

 廃墟と化した宇宙港は密林で、人食い蟻の巣になっていた。ボルゴフはそこで男爵が別途で雇っていた用心棒と戦って倒す一方で、人食い蟻の巣に落ちて食われるのだが、完全に食われないうちに、ベンケに乗っ取られる。他方でレイラがカロリーヌと戦って倒す。

 飛行場が廃墟と知って落胆する男爵とシャーロット。そこにDがやってきて決闘するのだが、急所をはずし、シャーロットの髪を何本か切って遺髪として依頼人に渡すと言う。だが、傷を負った男爵に、ボルコフを乗っ取ったベンケが襲い掛かって殺した。そのベンケがレイラにも手を出そうとしたので、幽体離脱してきた末弟ノルトが攻撃して、両者ともに果てた。

 男爵が果てると、シャーロットが自死した。

 呆然と立っていたDのところに、レイラがやって来て、今後の身の振り方を話して終わる。

 これって読み終わると、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』なのだなあとつくづく思う。

 皇帝派モンタギュー家ロミオ役が〈吸血鬼・貴族〉マイケル=リンク、教皇派キャピュテット家ジュリエット役が〈人間側名門令嬢〉シャーロット、するとDは二人を仲介するロレンス牧師の役どころ。モンタギュー家側も、キャピュテット家内部も、お家事情を抱えている。そんなところか……。

         ノート20180312

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