読書/フランク・ハーバート 『デューン/砂の惑星』 ノート20180320
フランク・ハーバート 『デューン/砂の惑星』1965年 矢野徹訳・早川書房1985年 全4巻
物語はSFとして発表されているが、実質的に、ヒロイック・ファンタジーである。一族特有の顎の特徴という表記があり、ハプスブルク帝国マクシミリアンⅠ世と子孫たちをイメージして描いたと思われる。舞台となる砂漠の惑星デューンでは、『ナウシカ』の王蟲の原型となる、ウォームこと巨大生物サンド・ウォームが暴れまくっている。このウォームが死んで化石化したものが、超能力を引き出すメランジというスパイスだ。ゆえにデューンは辺境惑星のようだが、とてつもない、利益をもたらす惑星だ。
はるか遠い未来。近衛兵軍団サルダウカーの軍事力によりコリノ王朝を頂点とする帝国は、中世ヨーロッパ風の封建体制をとっており、恒星系を支配する公家と、下位労働者によって支配されていた。帝国の基盤は脆弱であり、超能力をもつ女性種族ベネ・ゲセリットや、メランジの力で恒星間飛行能力を持ったスペースギルドが新勢力をつくり、さらに従来の公家もまた厄介な存在だった。
皇帝の命により、アトレイデ公爵家が、デューンにお国替えとなったことで事件は起きる。同公爵家はデューンのメランジ採掘権を持つハルコネン家とは因縁があり長らく対立していた。犬猿の仲である両家をわざとけしかけて、争っているところを軍事介入して乗っ取る策略だった。アトレイデ家の公爵は殺され、家領は没収されたのだが、公世嗣子ポウルが、砂漠の深部に脱出し、原住民フレーメンに受け入れられる。フレーメンは『ナウシカ』の蟲使いよろしく、ウォームに乗って操る術があった。この騎馬民族のような連中に支持されたポウルは、メランジ・スパイスを多量に含んだ風土で超能力者として覚醒し革命を起こす。
皇帝となったポウルは、フレーメンの娘に、次作『砂漠の子供たち』に続く双子の男女を産ませ、亡くなると、コリノ王朝の皇女を後妻にして養育させた。ポウルとその子孫は皇族以外は等しく平民化させることに努めることになる。このあたりは日本の天皇制をモデルとしているのだろう。
続編に、『砂漠の救世主』『砂丘の子供たち』『砂漠の神皇帝』『砂漠の異端者』『砂丘の大聖堂』とあるが、神皇帝までは読んだ。最初に読んだのが中学生のときで、大学のころ、まとめ買いしたのだけれども、異端者からは読んでいない。著者のご子息がさらに続編を書いているとのことだ。
デューンは『ナウシカ』に影響を与えた。
CGが未発達のころはなかなか映画化できなかったが、80年代あたりで映像化に成功し、CGが発達すると、時々テレビ・ドラマ化されたり、再映画化されてくるようになった。それにしても映画化第一作での朝日新聞映画評がすごかった。「未来なのに中世風のスタイルをしているのが錯誤だ」とか……その口で『ナウシカ』を絶賛していたような気がする。
ノート20180320




