映画/『ダンケルク』(2017年版) ノート20170914
クリストファー・ノーラン監督『ダンケルク』2017年
今年の初めだったか、地元・福島県いわき市に唯一残った映画館で『ダンケルク』の予告があった。それで楽しみにしていて封切り日となる9月9日にネット検索してみるとない。映画館に電話してみても上映する予定すらないという答えだった。それで13日に100キロ離れた水戸の映画館まで出かけて観てきた次第。
映画は、1939年5月下旬から6月初旬にかけて行われた、《ダイナモ作戦》をモチーフにしている。英仏両国がドイツ国境に要塞を築いて待ち構えていると、ドイツは戦車をつかって中立国ベルギーを突破して、フランス領内に入り込み、英仏軍の後ろに回り込んでU字状に包囲した。40万の英仏軍はダンケルクへ追い込まれる。ここで全軍が降服するのは時間の問題のはずだった。しかしイギリス国民は見捨てず、海軍全船舶の1/4と、ヨットを含む国中の民間船をかき集めて友軍を救出するに至る。結果32万人将兵が英国ドーバー海峡に上陸を果たしたのだった。
物語の目線は一介の英国新兵だ。
ダンケルク市街地でドイツとの市街戦をすり抜け、海岸線に並ぶ兵士達の列に並んでも埒が明かない。ちょうど浜辺には担架に乗せられた負傷兵がいた。そこで同じ年ごろのフランス新兵と一緒に負傷兵を、臨時の波止場である防波堤に運んで病院船に紛れ込む。ところが病院船はドイツ爆撃機に襲われて沈没してしまう。
次は、干潮で動けなくなったオランダの小型船に、英国ハイランド連隊兵士と一緒に乗り込む。だが、船体はドイツ軍の小銃で孔を開けられてしまった。潮が満ちてきたらまた泳ぐ羽目になった。途中、通りかかった船に拾われるが沈められ、海岸に逃げる。そんなことを繰り返していて、最後の最後に、撤退戦を指揮していた司令官たちが乗船した、最後から二番目の船でどうにか脱出する。
オプション的な準主人公は、英国空軍最新鋭戦闘機スピット・ファイアのパイロット、息子とヨットで救出に向かう退役軍人らしいヨット船長、防波堤で撤退の指揮をとる司令官や参謀達がいた。三人の準主人公達は、自分の信念のもとに最後まで戦場に踏みとどまる典型的な英国紳士達である。
ネットで反応を見てみると、賛否が極端に分かれている。その要因というのは、サスペンスタッチで、台詞が少なく極めてアクションが多い。しっとりした、恋とかミステリとかいった要素がない。そのあたりで好みが分かれるようなのだ。
ダンケルク撤退戦《ダイナモ作戦》は、英国がドイツにリベンジをする第一歩となった戦闘だ。欧米では極めて有名だが、日本ではほとんど知られていない。
私は家内とこの映画を観た。実を言うと、私は、ダンケルク撤退戦をモチーフとした推理小説を書いていて、下調べをしているので、映画ゆえのフィクションやデフォルメの箇所も気が付いている。家内は私の小説を読んで予習した形となり、映画の背景を理解することが出来た。
そういうわけで、欧米の人達には説明不要だが、日本人には少しばかり予習がないと面白さが半減してしまうタイプの映画という感じがした。――ちょうど、外国人が観る『シン・ゴジラ』みたいなものかもしれない。
うまくシンクロ出来なかった人は確かにつまらかたったことあろう。
だいぶ昔のフランス映画で、同名タイトルの作品がある。古いタイプの映画ファンには、そっちのほうが、ストーリー重視なので向いていると思う。
――いろいろ述べたが、ダンケルクを舞台にした作品の仕上げをこれからやる私にとっては、とてもありがたい映画であった。
ノート20170914