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もう一度妻をおとすレシピ 第8冊  作者: 奄美剣星
読書感想文
26/100

読書/赤川次郎『無言歌』 ノート20180315

赤川次郎『無言歌』新潮社2005年(415頁1節12頁)


〈概要〉

 物語は、N大文学部の柳原利明教授の長女真由美と、教授の派閥に属する馬渕貞之講師の挙式が執り行われた。そのころ、別の式場では、教授の元愛人である内山昌子と、真面目な会社員加賀悟士のペアの挙式が執り行われた。ところが、式の途中で内山昌子が、失踪するというハプニングが起きた(*結論から言えば、昌子が教授の長男・柳原秀郎とも肉体関係を結び、孕ませたため、真面目な加賀に罪悪感をもったことによる失踪である)。物語は、柳原真由美・亜矢の姉妹の視点で綴られ、読後にニヤリとくるブラックユーモア感覚のドタバタなホームドラマである。――他人の不幸は玉露の香り。――ミステリーの手法を用いているため、思わせぶりだが、殺人事件ではない。登場人物が多いのと、カットバックが多いというのがあり、読むのがしんどかった。2014年に紙ノートにしたものをワープロ処理した。


〈登場人物〉

●柳原家関係者●

柳原利明……N大教授。学部長候補。過去に内山昌子と不倫関係があった。脳卒中により退職する。トリックスター役。

柳原昭子……利明の妻。

柳原真由美……利明の長女。N大事務員、第二ヒロイン26歳。進行役。

柳原秀郎……利明の長男。真由美の弟、亜矢の兄。S大生。

柳原亜矢……利明の次女。K女子高三年生、第一ヒロイン18歳。進行役。

馬渕貞之……柳原真由美の婚約者→夫→離婚。N大講師で不正事件に関与し発覚後に失踪。真犯人。


●N大関係者●

故仲本学部長……この人の急死で空いた学部長の席を巡って学部内で派閥争いが起きる。

神田教授……学部長候補。

河原教授……学部長候補。

山野事務局長……N大事務局長。真由美の上司。

山野広美……山野事務局長の妻。

井上妙子……柳原真由美の同僚。

畑小夜子……N大一年生。神田教授と不倫関係。過去実夫に性的暴力を受けたトラウマをもつ。終盤で柳原昭子に可愛がられる。


●内山家関係者●

内山昌子……柳原利明の元愛人。息子秀郎に孕まされる。まじめな会社員・加賀悟士との結婚当日に失踪する。被害者役。

内山久……内山昌子の父親。

内山清美……内山昌子の継母。

村木智子……内山昌子の実母で内山久の先妻。


●その他●

加賀悟士……内山昌子の新郎で結婚式当日に花嫁が失踪する。

津田弥生……内山昌子失踪後に加賀悟士といい仲になるのだが、結婚式場で、偶然予行演習に来た女性を階段から突き落として大怪我をさせ逮捕される。

大熊刑事……内山昌子失踪事件担当者。

倉谷純子……柳原亜矢の親友。K女子高三年生。

倉谷君江……純子の母親。シングルマザー。

本間……妻のある身で倉谷純子と不倫する。


〈プロット〉

第1章 事件の発生

01「美しい朝」……柳原利明教授宅では、長女の真由美が馬淵講師に嫁ごうと支度していた。そこに教授の元愛人内山昌子から携帯電話がかかってきた。真由美視点。

02「五分遅れ」……柳原亜矢視点。柳原秀郎登場。教授の異常な行動を補足説明。自宅からタクシーで式場に向かう。式場直前の調整をしていた。

03「結婚式披露宴」……式には柳原利明教授のライバル・神田教授が招待されていて、火花を散らす。

04「夜」……結婚式を終えて、柳原夫妻が久しぶりに共寝すると、亜矢は嫌悪感を持った。翌朝、ライバルの神田教授から携帯電話をもらう。神田いわく、長女の結婚式が行われている間に、別の式場で式を挙げていた柳原教授の元愛人・内山昌子が失踪した。事件性があるとして、警察が捜査に乗り出した。

05「喪失」……失踪最多内山昌子の新郎・加賀悟士の自問自答。加賀の携帯が内山昌子につながるが……。

06「村木智子」……花嫁内山昌子失踪を受けて、昌子の実母・村木智子が柳原家に探しにきた。柳原昭子と亜矢が応対する。

07「村木智子の証言」……失踪当日、昌子がいた控室の模様。聞いていた亜矢は同日に行われた姉の結婚式と重ねて感慨深く思う。

08「倉谷純子」……高校三年生である亜矢には倉谷純子という親友がいる。亜矢と純子が映画の帰りに喫茶店によると、偶然、会社員男性・本間(30)を見かけて驚く。本間には妻がおり、純子とは不倫関係にある。純子の家庭事情紹介。他方、新婦の失踪を受けて傷心の加賀は会社で、仲人の課長に慰められている。そんな加賀を、同僚の津田やよい(24)が同情的にみていた。

09「葬儀」……N大文学部状況説明。仲本学部長が急逝し葬儀が行われ関係者が弔問に訪れていた。

柳原利明教授、柳原派の馬淵講師、馬淵に嫁いだ旧姓柳原真由美、山野事務局長夫妻、神田教授が顔をそろえていた。事務局長夫人広美が馬淵に焚きつけるのを前振りとして、神田教授が柳原教授に、仲本学部長の死を受けて、空いたポストの選挙が行われることになるという話をする。

10「失われた時間」……喫茶店で亜矢と倉谷純子とのお喋り。純子は本間に孕まされたことを打ち明けた。他方で、内山昌子失踪で傷心の加賀悟士と津田やよいがいい感じになったところに、内山昌子からメールがきて、公園で待ち合わせすることになった。

11「夜更けに」……柳原家では、教授夫妻が再び共寝していて、教授が妻に学部長選挙の抱負を述べいていた。内山昌子との不倫が常態化していた柳原家に慣れていた亜矢は、突然の夫婦関係修復に混乱する。その一方で、夜中の一時、加賀が失踪した内山昌子から指定された公園に行ってみたが見事にすっぽかされた。代わりに津田やよいがやってきた。


第2章 事件の捜査

12「刑事」……N大事務局長山野が、馬淵講師に、警察が来たことを告げる。内山昌子失踪事件に関する事情聴取と説明した(*だが、実際は、後で発覚する馬淵講師の横領事件の捜査だ。ミスリードである)。大熊刑事登場(名前のみ)。事務局の柳原真由美のどうりょう井上妙子による証言。警察によると、式場の植え込みで血の付いたタオルが発見された。

13「冷気」……柳原昭子は、神田教授に呼ばれ、地階レストランにタクシーできた。柳原教授は、子飼いの馬淵講師をつかい、文学部内で多数派工作をしていた。神田教授は、長女の真由美の結婚式当日に、席を外した魔の空白があったが、その時間をつかって、同時刻に行われていた内山昌子の式場に行って殺したのではないかと疑っていた。それをネタに夫人を揺すって、学部長に立候補することを断念するように迫った。話が終わると昭子は、Kホテルで、娘婿の馬淵と密談する(*ミスリード)。

14「熱」……津田やよいが風邪をひいて会社を休んだので、加賀は、そのボロアパートを訪ねて仲を深める。他方、柳原家では、大熊刑事たちが事情聴取にきていた。長男の柳原秀郎が応対し、母の昭子が帰宅すると質問内容を報告した。自室にいた進行役の次女柳原亜矢はさりげなく聞き耳をたてる。

15「番号」……朝、N大学に馬淵と真由美の夫妻がそろって出勤。真由美は馬淵がどこかぼうっとしているのが気がかりだった。同時刻、会社オフィスで、加賀が津田やよいを食事に誘った。そんなとき、馬淵が、柳原教授の学部長立候補の汚点を消すため、失踪した内山昌子捜索について強力したいと、接触を求めてくる。津田やよいとのランチ・デートの直前に、喫茶店で話をした。

16「隠し事」……三学期の下校時校門前で、柳原亜矢は、本間から純子に渡して欲しいと現金入り封筒を渡された。他方、N大事務曲では、真由美が判をもらいに山野事務局長を捜していると、馬渕が事務室で不審な行動をしているのに出くわす。さらに場所代わって美術展会場から喫茶店となる。柳原昭子が馬渕に指示。馬渕は神田教授が講義中に、柳原教授のライバルである神田教授の携帯電話に、失踪した内山昌子の名前と電話番号を打ち込む計画をするように密談していたのだ。柳原亜矢が家に帰ると、倉谷純子の母親から電話があり、娘が家出したと告げた。

17「長い夜」……その夜、倉谷君江が柳原亜矢の家を訪ねてくる。純子は本間から封筒を貰い開封して手紙を読んだ直後に家出したのだという。純子は本間の愛人になっていた。亜矢は君江と一緒に本間の家を訪ねる。すると本間の細君・治子が玄関先に出てきて、激しい言い合いをする。それから本間がメールで、居場所を知らせてきた。公園にいるとのことだ。

18「空白」……ホテルで加賀と津田やよいが共寝をしていた。加賀がやよいにプロポーズする。そして加賀がシャワーを浴びに行っているとき、携帯に、失踪している内山昌子からメールが届いたのだが、やよいは、嫉妬からメールを削除してしまう。ところ変わってN大学。山野事務局長が真由美に封筒を医務室に届けるように指示した。途中で、馬渕とすれ違ったとき、医務室に一緒に入って、神田教授控室の合鍵をとってこいと指示。

19「微笑」……真由美から受け取った合鍵で馬渕は神田教授の部屋に忍び込むと、中に、一年生の畑小夜子が椅子に座っていた。小夜子は神田教授の愛人だ。馬渕は事態を把握した小夜子に弱みを握られてしまった。馬渕の講義コマを受講しているので、それをパスさせるように脅される。場所変わって、津田弥生と加賀のランチデート。加賀は内山昌子のアドレスを解除してしまった。このため昌子は連絡がとれなくなった。

20「白いシーツ」……倉谷純子が、母親君江と、親友柳原亜矢との付き添いのもと、産婦人科病院で子供を堕胎する。亜矢が引き返すとき、すれ違いで、君江の交際相手が純子を見舞う。亜矢が柳原家に帰宅すると、姉の真由美が来ていた。姉妹は純子や選挙の話題をした。そこで亜矢の携帯に電話がかかってきた。

21「秘めた顔」……柳原家である。電話の主は兄の秀郎だった。携帯電話は姉に渡された。秀郎は姉に金を無心した。それから姉妹は指示された盛り場へでかけ秀郎に会いに行くのだが、途中で内山昌子とすれ違う。秀郎は真由美から三万円を受け取る(*内山昌子に渡すため)。その夜、柳原家の全員と馬渕とがそろって柳原教授の学部長選挙当選の前祝をやった。亜矢がふと窓の外を見ると、内山昌子の姿があった。

22「報酬」……N大では、畑小夜子が、事務室の真由美を見に来た。馬淵は小夜子に誘惑された。真由美の不安。他方で、津田やよいと結婚意思を固めていた加賀のもとに、失踪した内山昌子の実母・村木智子が現れて、昌子のメッセージを伝える。というのも、先日、加賀とホテルで共寝をしていた、やよいが昌子のメールを消去してしまったからだ。


第3章 事件の解決

23「選挙」……N大文学部では、学部長選挙。二次にわたり行われる。二次で神田教授が棄権したので柳原教授が当選した。祝賀ムードのN大。不機嫌な柳原教授。真由美とお出かけ予定の馬渕の前に小夜子現れる。柳原教授が体調を崩す。他方、K高校校門前で柳原亜矢が父親の学部長当選を知る。倉谷純子と帰ろうとしたとき、大熊刑事が現れ、失踪していた内山昌子のことを訊く。亜矢のショートメールに昌子の写真が転送され、先日、家の前にいた女が昌子で、生きていたということを知る。

24「祝宴」……柳原一家は、馬渕を加え、馴染みの中華料理店で、柳原教授の祝賀会をする。亜矢は、内山昌子と兄の秀郎がケータイでやりとりしているのを聴く。姉の真由美が、「自分を納得させる事が大人なのか」(『無言歌』テーマ)とつぶやくのを聞いて、妹の亜矢は、真由美が幸せじゃないと考える。

25「帰り道」……ロビーでタクシーを呼んで帰る。柳原教授夫妻と亜矢は自宅に、真由美は大学に、秀郎は内山昌子のところに行く。馬渕は教授達と同じタクシーに乗って、途中で自分の家に戻る。亜矢は、兄が内山昌子こ交際し、姉が夫とうまく行っていないことを察する。その姉・真由美は、夫の馬渕が小夜子と不倫していると疑う。馬淵がマンションに帰ると、なんと小夜子が合鍵で侵入し待っていた。そして共寝する。

26「崩れる日」……オフィス街。高校三年生は冬休みから大学に行くまで休みだ。倉谷純子が本間治子と会って、懐妊を自慢すると、純子はショックを受ける。会社近くの公園で、加賀と内山昌子が再会する。昌子は、母から状況をきいたと切り出す。二人が会っている現場を、たまたま資料コビーにでていた同僚に見られる。

27「引出」……柳原家で、亜矢が手紙を書いているときにクリップが必要になり、父親の机をみると携帯があった。メールを読む亜矢。内山昌子が、柳原教授に会いたいという内容だ。他方、N大にいた真由美は、女子大生たちが、夫の馬渕講師が、小夜子と不倫しているという噂を耳にする。

28「狭い場所」……N大図書館。真由美は小夜子と対面する。小夜子は高度な文学作品など知っていて意気投合する。そこへ妹の亜矢から、内山昌子の剣でメールが届く。事務室に戻ると馬渕がいて、義母・柳原昭子と電話で内山昌子対策をしていた。それを見て、小夜子と不倫している馬渕にいら立つ。真由美は、内山昌子に来るなと伝えて欲しいと亜矢に指示するメールを送った。

29「仕掛け」……別れる腹を決めた真由美は小屋子を伴ってタクシーで帰宅。車中で互いの夢を語り合う。真由美は馬渕はいつかは自身も学部長を狙う俗物だという。寝室から馬渕が出てくる。

30「すれ違い」……加賀とやよいが結婚式場に出向き式の準備をする。このとき、やよいは、内山昌子によく似た女性を見かける。他方、柳原家では、教授の妻・柳原昭子が、息子の秀郎がいる内山昌子のところへ乗り込む。さらに場所変わって、倉谷純子の携帯に、半狂乱になった本間治子から、夫が失踪したという電話を受ける。

31「真相解明」……柳原真由美・柳原亜矢・畑小夜子・倉谷純子が小さなビストロを貸り切って内山昌子の登場を待つ。関係者一同が会したところで、真相解明となる。式場の下見をしにいった加賀とやよいはラブホテルで逢瀬をしていたところに、内山昌子からメールがあった。他方加賀がいる会社では、式場の受付嬢が、やよいによって他の客が突き落とされたと連絡がある。別れると告げる弥生。他方で柳原教授もやってきて馬渕と別れると告げる。そこに加賀と内山昌子が入店してくる。01‐03場面の空白の説明。内山昌子が柳原教授・秀郎父子との肉体関係を明かす。

32「闇夜」……内山昌子が、冒頭にあった花嫁失踪に至る空白説明をする。愛人・昌子の式場に表れた柳原教授がショックで昌子を殴る。昌子が花嫁衣裳を血で汚す。それを見られまいと会場から姿を隠した。他方で、秀郎に孕まされていることもあり、加賀に対する罪悪感もあってその後も姿を消していた。落ち着いたところで真実を話そうとすると、新しい恋人の津田やよいがメール登録を切るなどの邪魔をしたので、連絡がとれなくなっていたのだ。そういうことから昌子は加賀と津田やよいとの結婚を祝福していた。しかし津田やよいは傷害罪で逮捕されていた。他方、N大では、柳原昭子と馬渕がいたところに、神田教授がやってくる。真由美がやってきて馬渕に離婚を告げる。柳原昭子は今までの鬱積を爆発させたtので柳原教授は卒倒する。

33「エピローグ」……N大校門前だ。柳原亜矢と倉谷純子の会話。後日談。倒れた柳原教授はリハビリ中で近く引退する。馬渕は大学研究費を流用して豪遊。警察は横領事件を捜査しだした。神田教授は、馬渕の不正を知っていながら口止め料をもらって見逃したので辞職することになった。馬渕は蒸発し、真由美は柳原家に出戻る。畑小夜子は子供のときに父親に強姦された過去を持つ。そのことを知った真由美はなおさらに小夜子を可愛がる。秀郎に子を孕まされた内山昌子は、柳原家と和解し、出入りを許される。倉谷純子がふと通りに目をやると失踪中の本間が前を横切ったのだが、すぐに見失う。

          ノート20180315

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