読書/鈴木輝一郎『他人の不幸は銭の味』 ノート20180508
鈴木輝一郎『他人の不幸は銭の味』小学館2000年
ホーラーやコメディー、古典ミステリ要素等を加えたサスペンスの短編集だ。読後に苦笑いをするブラック・ユーモアがある。個人的な好みでいうと、下記の目次でいう、「人形のいない家」「いっしょにいたい」かなあと。昔あった映画『トワイライト・ゾーン』のようなシュールさはあるのだが、怖いというよりも、色香と切なさに魅力を感じた。
目次
01 他人の不幸は銭の味
市役職職員で糊口を得る岡村哲夫は、プロとアマチュアの境目にいる陶芸家だ。陶芸雑誌の記者・千種は偶然に係った。ものによっては高価だが、大半は駄作だ。ある日、その岡村が死んだという話を聞き、値上がりを期待して、遺族から大量に作品を買い付けに、自宅兼工房に駆けつけると……。
02 健康のためなら死んでもいい
健康オタクの男性が、無理な運動をして亡くなった。男性が住んでいた部屋にはランニング姿の幽霊が出没する。
03 人形のいない家
長らく独身だった陶芸家が結婚して子供を持った。その陶芸家が突然亡くなった。警察の検死が入ったとき、友人の語り手が事情聴取された。というのも、陶芸家には妻子がなく、実態と証言が食い違い、陶芸家は無理心中してから自死したのかという疑いがでてきたのだ。結局のところ、陶芸家の妻子というのは……。
04 老年探偵団
老年探偵団は、検事や弁護士のOBたちで構成されたボランティア団体だ。この逸話では、老人を食い物にする詐欺師をやっつける話なのだが、被害者の老婆が……という捻りがオチとなる。ミステリ。
05 老人教習所
主人公は妻を亡くし息子夫婦や孫と暮らしている。漫画『巨人の星』にでてくる星一徹みたいな昔気質の雷親爺で、家族に恐れられていた。そんな主人公も定年を迎え、老人教習所に通い、いいお爺ちゃんになるように奮闘する。しかしあるとき過程は修了したといい渡された。その結末というのが……。コメディー。
06 寄生虫でダイエット
南米奥地でみつかった寄生虫を改良しダイエットさせる。その卵をつかってダイエットが行われたのが、主人公の知人が亡くなる。主人公は自分の妻が犯人ではと疑う。
07 あなたのためを思って
会社近くのボロ・アパートに住んでいる若いサラリーマンの悩みは、お節介な地元の老婆だ。老婆は地元振興会のようなものに所属していて、青年にお節介して、合鍵で勝手に部屋にまで上がり込んだ。逆上した青年は……。
08 このおみくじは当たります
主人公である記者が、神社を模した祠からおみくじをとってくる、リスの飼主を取材した。そのおみくじ占いはよくあたるのだ。飼い主は元資産家なのだが、ほどなく、謎めいた言葉を残して没する。記者は、元資産家が、どうも遺産を祠の中に隠しているのではと考えた。その話を遺族たちにすると、リスの祠に食らいつく。果たして、その祠には……。
09 いっしょにいたい
運送会社に勤める兼業農家の主人公は実家を継いで妻と暮らしていた。妻は妊娠していたのだが流産した。ある夜、皆で外出したときに、幼子をみつけた。妻は死んだ子供の代わりに引き取ろうとした。しかし幼子は妖童であった。ホラー。
10 茶釜の夜泣きの虫
お調子者のサラリーマン。リストラの危機となっていたときに、妖怪のとりついた茶釜を会社の会長から預かる羽目になった。
11 裏切りの遁走曲
セックスフレンド女性は本妻のいる男性の愛人だった。その男性が死に、棺をめぐって、本妻は愛人にゲームを提案した。なんと二つの棺を用意して、どっちに遺体が入っているでしょうというものだった。
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