太陽電池のある暮らし
太陽電池を買った。以前から、いつかは買おうと考えていたのだけど、昨今の不安定な経済情勢を観て、「こりゃ、何かが起きる前に実物資産に変えておいた方が良いか」と、考え計画を前倒ししたのだ。
通貨なんてものは、しょせんただの紙切れ… いや、今は電子マネー化しているから、紙切れですらない。皆が価値があると思っているから成り立っているだけの幻。何かの切っ掛けで、価値が大幅に減ってしまう可能性は充分にあるんだ。
実物資産だったら、他にも色々あるじゃないかって不思議に思うかい? 不動産もあれば、金やプラチナといった貴金属、宝石類だってあるじゃないか。どうして、わざわざ太陽電池なんだ?
理由は簡単。太陽電池は、生活に直結している上に、安全資産だから。
多くの実物資産は、価値が激しく上下するし、持っていたって別に生活が楽になる訳でもなんでもない。対して、太陽電池は暮らしに必要な電力を、維持費がほとんどかからずに生産し続けてくれる。この価値が低下する事はまずないだろうし、当然、生活が楽になる。
それに、この“維持費がかからない”という特性は、物価上昇を警戒する上で、とても重要なんだ。
つまり、物価が安い時期に太陽電池を買って、その後で電力料金が上がると、利回りは良くなるって事だ。
何故か、この点… つまり、物価変動は太陽電池の利益計算で考慮されない事が多い。僕としては不思議なのだけど。
と、そんな事を言ったら、知り合いの一人に馬鹿にされた。
「物価上昇なんてするのかよ。電力料金だって、そんなにしょっちゅう上がるか?」
ただ、そんな矢先にいきなり電力料金が上がったので、何も言わなくなったけど。
因みに、4月に入ってからは、家全体の電力消費量よりも、発電量の方が多くなった。多分だけど、蓄電池さえあれば、春と秋に関しては、電力の自給自足が可能だろう。もしかしたら、夏も。夢みたいな話だと思う。
話を戻して、物価上昇の話をもうちょっとすると、あまり分かっていない人も多いけど、実は将来的な物価上昇はほぼ避けられないと観て、まず間違いない。
まず、発展途上国の経済発展で、エネルギー需要が更に増加する。反対に、エネルギー資源は枯渇していく(最近になって、新たなエネルギー源が増え始めたけど)。また、日本は少子化の影響で、労働力が減る。それは、供給能力が減るという事だから、当然、物価は上昇してしまう。加えて、金融的な要素もある。円の価値が下がったり、財政が破綻したりすれば、やはり物価は上がる。
物価が安い時は、投資のチャンスというのは経営の常識で、当然、維持費が安価なものほど、それには相応しい。太陽電池は、その条件にピッタリだ。
と、そんな事を自慢げに語ったら、やはり知り合いの一人から、こんな事を言われてしまった。
「お前、そんな事言ったって、太陽電池はコストがかかるじゃないか」
それに僕はこう答えた。
「いやいや、今、日本には労働力が余っているだろう? その労働力を使って、太陽電池を造れば、むしろ経済成長するんだよ。もちろん、買う人が必要だけど」
余った労働力で、別の何かを生産する。それで、経済ってものは成長してきたんだ。因みに、将来的な労働力不足を考慮するのなら、維持費のかからない太陽電池は、その対策にもなるって事になる。
僕の返答を聞くと、その知り合いはこんな反論をして来た。
「だって、太陽電池の所為で、電力料金が高くなるって聞いたぞ。ドイツでは、実際に高くなったって……」
僕はそれにこう返す。
「まぁ、そりゃ事実だよ。でも、それは一面しか捉えてはいない。確かに、電力料金は上がるが、その代わり収入も増える。ちょっと考えれば分かるけど、原油や天然ガスの輸入で海外に出て行っていたお金が、太陽電池で発電すれば、国内で回るようになるんだ。
実際、電力料金が上がったドイツは経済的に成長をし、EUの経済を引っ張っているだろう? 少なくともマイナスにはならないと評価すべきだ」
太陽電池についての話題では、何故かこの点も考慮されない事が多い。エネルギー自給率を増やす事の、本当の意味を理解していないのかもしれない。
しかし、それを聞くと、そいつはこう文句を言った。
「そりゃ、お前はいいだろうさ。太陽電池の発電で、むしろ金が増える側なんだから。それを負担するのは、こっちだぞ?」
僕はそれに笑いながら、こう返す。
「そりゃ、確かに悪いと思う。太陽電池を設置できる家庭だけ、優遇されているようなもんだからな。だが、それもエネルギー資源の価格が、上昇すれば変わって来るよ。
エネルギー資源が高くなって、太陽電池発電買い取り額を上回れば、むしろ太陽電池のお蔭で、電力料金が抑えられるんだ。その時は、助かる事になる……」
それを聞くと、その知り合いは、渋々納得をした。
……僕は国が太陽電池を設置する政策を実施すべきだと考えている。先にも述べたけど、それは経済成長になる。支出が増えるけど、収入も増えるんだ。そして、それで発電した分で、海外企業と競合する国内企業の電気料金を安くすれば、国際競争力も高められる。良い案だと思うのだけど。