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トカゲといっしょ  作者: (=`ω´=)


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グラウデウス公爵との対決

「トエス!」

 激突をした魔法兵たちを前にして、ハザマは叫んでいた。

「水妖使いたちを!」

『もうやってるー』

『ダメダメよー』

『力が届かないー』

 トエスがなにか答える前に、ドゥ、トロワ、キャトルたちから通信が届く。

 どうやら、水妖たち本来の力、水を操る能力はグラウデウス公爵には通用しなかったようだ。

 三人が口を揃えてこういっているということは、つまりはすでに試した後なのだろう。

 ま、あの巨人だった男にも通用しなかったわけだしな。

 と、ハザマはすぐに納得をする。

 あの男はおそらく、ハザマたちへの対策がどれほど有効であるのか、その試験を兼ねて先行してぶつけるよう、仕向けられていたのだろう。

「って、ことは」

 ハザマは素早く周囲に視線を巡らせた。

 どこかに、水妖使いの能力さえ無効化するほどのルシアナ甲紋が仕込まれているか、それとも同じような機能を持つなんらかの仕掛けが存在するはずだった。

 見たところ、魔法兵たちは明らかに常人離れをした速度と膂力を持って相対した相手に武器を振るい続けている。

 ということは、つまりは結界のたぐいではなく、なんらかの方向性、指向性を持って魔法の効果を消去している、ということで。

 そのなにかを発見し、破壊することさえできれば、水妖使いの能力はグラウデウス公爵にも届くはずだった。

 しかし、それをするには。

「魔法兵が邪魔だな」

 ぽつりと、ハザマは呟いた。

「牙猫ども。

 敵の魔法兵だけをお前らの力で片付けることは出来るか?」

『無理ー』

『さっきからやっているけどー』

『やっぱり力が届かないー』

 水妖使いたちはのんびりとした調子でそう返答し、しかしその場にうずくまってのんびりと毛繕いをしはじめた。

 やるべきことはハザマが指摘をする前にやっているわけだが、それにしてもお前ら寛ぎすぎだろう。

 と、ハザマは思う。

 こんな場合でもまったく緊張感がないやつらだった。


 ハザマたちがそんなやり取りをしている間にも、すぐ目の前では敵味方の魔法兵同士が肉弾戦を繰り広げていた。

 屋内では使用出来る攻撃魔法がかなり制限されるため、自然と原始的な殴り合いになってしまうらしい。

 とはいえ、魔法により身体能力を底上げされた兵士同士が完全武装の状態で巨大な武器をぶつけ合ってどつき合うわけで、ハザマとしてもこれほど緊迫した状況でなければ完全に見物に回っていたはずだ。

 それほどの、迫力がある。

 中の人たちは、大変そうだったが。

 だがそんな状況も、あんまり長引いてもらっても、困る。

「敵の兵士だけ、動きを止めましょうか?」

 ハザマはアズラウストにそう提案した。

「そうしていただけると、大変に助かります」

 アズラウストは、うやうやしい口調で応じる。

「では」

 ハザマは即座にそういってバジルの能力を解放し、敵の魔法兵だけを選択的に動きを止めようとしてみた。

 グラウデウス公爵には通用しなかったバジルの能力は、今度はすぐに効果を発揮して、三十人ほど居た敵の魔法兵たちはぴたりと動きを止め、しかしブラズニア公爵側の魔法兵たちにしてみればだからといって遠慮するべき理由もなく、かなり乱雑な動きで不動となった敵側の魔法兵たちの体を数メートル先へと弾き飛ばした。

 うむ。

 と、ハザマは心の中で頷く。

 グラウデウス公爵自身には、バジルの能力は届かない。

 しかし、その配下には、普通に通用するようだった。

 つまり厄介なのは、グラウデウス公爵だけってことだな。

 と、ハザマはそんな風に推測をする。


「やりますね」

 自分を護衛していた魔法兵たちが一掃されても、グラウデウス公爵は特に慌てる様子はなかった。

「では、もう一度お願いします」

 落ち着いた口調でそういい終えるのと同時に、グラウデウス公爵とハザマたちの間にまた三十名ほどの魔法兵が出現する。

 ハザマはその場で新たに出現した魔法兵の動きを封じ、ブラズニア公爵家の魔法兵たちが不動となった敵魔法兵を再度左右に吹き飛ばした。

「見た通り、その抵抗に意味はない」

 ハザマは、グラウデウス公爵にいった。

「何度繰り返しても、結果は同じだ」

「さらにいえば、あなた方の兵力ももう残り少ないはずです」

 それに続けてアズラウストが断言をする。

「これまでの交戦で、もうかなり目減りしているはずですから。

 十分に戦える者は、後百名も存在しないはずです」

 こんな抵抗は時間稼ぎにしかならない。

 というのが、ハザマの出した結論だった。

 アズラウストの発言も、そのことを裏付けている。

「では、これならどうですか?」

 グラウデウス公爵は涼しい顔でそういって身をかがめ、そして、足元から血に汚れたなにかを掴み、片手で高々と掲げた。

「ええと。

 このような状況には慣れていないもので。

 このようなときには、確かこういうのでしたね。

 この王子の命が惜しくはないのか? と。

 そのまま一切の抵抗を止めてください」

「総員、その場で待機せよ!」

 ハザマが反応するよりも早く、アズラウストが鋭い語気で叫んだ。

「流石に、この王国の世継ぎの命運を決める権利は、ぼくにはありませんからね」

 続けてそういったのは、おそらくはハザマに聞かせるための言葉だったのだろう。

「王子様は無事なんだろうな?」

 ハザマは確認をした。

「無論、無事ですとも。

 大事な人質を傷つけるわけがありません」

 グラウデウス公爵は静かな口調で応じる。

「この子を護衛していた人たちは、あまりに聞き分けがないので黙っていただきましたがね。

 そのため血でだいぶ汚れてはいますが、この子自身には傷ひとつありませんよ」

「そいつはよかった」

 ハザマは大きく頷いた。

「じゃあ、トエス!」

「はいな!」

 槍を持ち、サーベルタイガーにまたがったトエスがグラウデウス公爵に突進をする。

 その他の二匹のサーベルタイガーも、それぞれ別の方向からグラウデウス公爵に迫っていた。

 野獣たつの瞬発力はすさまじく、瞬時にグラウデウス公爵との距離を詰める。

「おっと」

 グラウデウス公爵は、しかし慌てる様子もなく、サーベルタイガーたちの猛攻を躱した。

 ゆらゆらとした足取りで、しかし最小限の移動でサーベルタイガーの攻撃範囲から逃れている。

「危ない危ない」

 グラウデウス公爵はのんびりとした口調でそういった。

「ハザマ男爵は頼りになる手勢をお持ちだ」

「そりゃどうも!」

 そういって、ハザマは拾いあげたばかりのメイスをグラウデウス公爵に投げつける。

 グラウデウス公爵がサーベルタイガーの動きに気を取られた隙に、敵側の魔法兵が落とした得物を急ぎ拾い、投げつけたのだ。

 そのメイスは魔法兵用の物であり、従ってかなりの大きさと重さがあったが、今のハザマにとっては決して投げられない代物でもない。

 ハザマ自身の体重にも匹敵するほどの質量を、全身のバネを使用してハザマは次々とグラウデウス公爵に投げつけた。

 一応、王子様の身には当たらないように心がけてはいたが、ハザマはアズラウストほどにはこの王国に対して義理を感じているわけではない。

 なにかの間違いで王子様にその攻撃が当たったとしても、その時はその時と割り切っていた。

 王子様一人の安全よりも、今はこの王国を壊しかねない怪人物を排除する方が重要だし有益であると、そう判断していた。


「無駄ですよ」

 グラウデウス公爵は平然とした態度を崩すことなく、ハザマの攻撃を受け止めた。

 なにによって、風を切って迫る重たい金属の塊を受け止めたのか?

 グラウデウス公爵の背中から半透明の細長い物体が何本も伸びて、その物体がメイスやその直後に投げつけられた魔法兵の武器を受け止めたのだ。

「本当に、自分の体を改造しちまったんだなあ」

 そういって、ハザマは顔を顰めた。

「自分自身を改造するなんて、あんたは特撮番組のボスキャラか」

 あるいは、ゲームのボスキャラにもこんなのが出て来そうだな。

 主人公側が追い詰めると、手下を何度も召喚するところなんかもゲームっぽい。

「そのトクサツバングミとやらがなにかはわかりませんが」

 グラウデウス公爵は静かな口調で応じる。

「この体は、これでなにかと重宝をするものです。

 どうもあの術士は、使いこなすところまではいかなかったようですが」

 あの、巨人であった男になされていたものと同質の改造である、というころらしい。

 つまりは、別の世界から召喚した得体の知れない不定形生物と融合した上で、その制御も自身の意思により行っているようだった。

「確かにその体は、無敵に近いのかも知れない」

 ハザマは冷静に指摘をした。

「しかしそんな化け物同然の体になったあんたを、それも私利私欲によりそんな体になったあんたを、領主だの国王だとして崇めたがる領民がどれほどいると思うかね?」

「下々の者の敬意や崇拝を、わたしは必要としていません」

 グラウデウス公爵は、ハザマの指摘にも動揺することがなかった。

「彼らはただひたすらに、このわたしのために働いてくれればそれでよい。

 彼らがなにを思いどう考えるのかなどと、そんなことを気にかけるのは貴族のするべきことではありませんよ」

「あんたが首尾よく王族を根絶やしにしてこの王国を乗っ取ったとして」

 ハザマは、さらに指摘をする。

「その後になっても逃げ出さずわざわざこの王国に留まろうとするのは、自分の見識を持たない腑抜けや臆病者だけだぞ。

 そしておそらくは、すぐに周辺諸国との格差が広がっていく。

 経済的、文化的……とにかく、ありとあらゆる面で、この王国は遅れていくだろう。

 そんな閉鎖的な環境下で、不甲斐ない連中の頂点に立って粋がることに、どれほどの意味があるというんだ?」


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