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プロローグ:酩酊の底

初めましての人は初めまして、瀬戸内と申します。

気分とノリで現代ファンタジー書いていってます。

あいさつはそこそこに、本編どうぞ!

プロローグ


 溺れていた。

 逃げていた。

 女、ギャンブル、遊興、妄想、薬物……

 世の中には逃避の方法は山ほどあるが、私は酒しか知らなかった。

 素泊まり三千円の安ホテルで、部屋の片隅で、浮ついた頭で何を考えるまでもなく、空になった缶を積み上げている。

 だから、


「捜したよ」


 旧師、射場(いば)(しげ)(ふじ)が前触れもなく目の前に現れたとき、幻か何かかと思った。

 だが歳月は前髪の後退ぶりに顕れていて、現実であることを示してくれる。

 笑い、返事もせず、私は飲んだ。


「よくもまぁこんなやっすいカクテルで酔えるもんだ」

 桃のラベルの缶を、空になったことを確かめるように振り、師は、呆れた表情を作る。

「……いつまでこんな生活を続ける気だ?」

「二年目ですね」

 嘆息が耳元で聞こえる。

「分かっているなら酔いから醒めて十神に戻ったらどうだ? 壊滅した組織の再編、君にも責任の一端はある」

 私は甘ったるい液体を口に抱えたまま、恐喝じみた誘いを黙殺する。

 二度目の嘆息が聞こえた。

「わかった。無理強いはしない。けどな、いつまでもブラブラしてるわけにもいかないだろ? 身体を動かさないと、心の傷は痛んだままだぞ? だから……」

「……ははっ」


 黙殺せず、笑殺する。

 言葉と共に身振り手振りが出るところは変わらない。

 手足を上下させ、足踏みする姿が滑稽で、おもわず歪んだ笑いが出る。

 背を壁に預けるが、私は何も言う気になれなかった。


「シンプルに言ってもらいたいんですがね。仕事をしろと……こんな私なんかに何やらせる気で?」

「教師だ」

「は?」


「君、高校のセンセイになる気はないか?」


 唐突なその言葉に、私はただ、舌の上で苦くなった酒をゆっくりと飲み込むことしかできなかった。

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