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作中短歌
雨の音に
まぎれて消ゆる ものの影
なほ手をのべて 触れむとぞする
――詠み人知らず
意味:
春の雨音に紛れるように、あの影は消えていく。
届かないとわかっているのに、私はまだ、手を伸ばし続けている。
解説:
東宮・鷹宮の歌と伝わる上の句に、何者かが後に下の句を補ったとも言われる。
***
問はれしを
忘れぬままに 春は来て
鳴く鳥のこゑ
君を呼びたり
――東宮妃・綾子
意味:
あのときあなたに問われたことを、忘れられないまま、とうとう春が来てしまいました。
あなたはいません。
鶯の鳴く声が、あなたを呼んでいます――
解説:
東宮妃・綾子の歌。
東宮・鷹宮と交わした約束に応えたとされる。




