8話 ぬいぐるみと今までとこれから
いやぁ、シロタマと再会できて、しかも話までできて、楽しいなんてもんじゃなかった。本当に、話が尽きなかったよ。
でも、3時間も静かにだけど、飲んで食べてしゃべり続けてたら、さすがにテンションが上がりすぎた俺たちは疲れてきて、その場に寝転びながら話を続けることに。今シロタマは、修復したネコのぬいぐるみに、アゴを乗せて寝ているよ。
「……そのぬいぐるみ、ずっと持っててくれたんだな。ありがとう」
『当たり前だろう。お前がくれた、大切な俺のぬいぐるみだぞ。ただ、かなりボロボロになってたからな。だからお前のじいちゃんに直してもらおうと思ったんだよ。だけど、じいちゃんが昔の事とはいえ、今もこのぬいぐるみのことを覚えていたら、ちょっとまずいか? と思ってな』
「まぁ、それはな」
俺だって、違和感が確信に変わってからは、俺が作ったぬいぐるみだって、じいちゃんにバレないように行動してたし。ほら、サインとか気づかれないようにさ。
『で、困ってたら、じいちゃんが電話で、お前がここで暮らすって話しているのを聞いてな。なら、お前に直してもらうかって。一か八かで玄関先に置いてみた。お前がこれに気づいて、直してくれるかもしれないし。ま、拾ってもらえなかったら、また何回でも置けば良いってな』
「おいおい、それでもしも捨てられてたら、どうするつもりだったんだ?」
『そんなのすぐに助れば良いじゃないか。大体じいちゃんや神谷のあんちゃんが、調べもせずに捨てるわけないし、お前だって、そうだろう? まぁ、成長したお前がぬいぐるみを嫌いになってたら、もしかしたら捨てられたかもしれないがな。ハハハハハッ!』
「お前なぁ」
『しかし、ここまで元の状態に戻すなんて、お前が今もぬいぐるみを作ってくれてて良かったぜ』
「そうだ、そのぬいぐるみさ、新しいの作ろうか? なにしろ俺の初めて1人で作ったぬいぐるみだろう? 古いし歪過ぎるし、今ならもっとちゃんとしたぬいぐるみを、作ってあげられるよ?」
『俺はこれが良いんだ。お前だって分かってるだろう? じいちゃんたちと仕事をしていて、お前もまだぬいぐるみを作っている。だからこのぬいぐるみが俺にとって、どれだけ大切な物かってな』
「う~ん、なんかなぁ。分かってるよ。分かってるけどさ、あまりの出来栄えで……。酷いっって意味でさ。何とも言えないし、作った俺としては恥ずかしいんだよ」
『俺はこれが良いんだ』
「はいはい、分かったよ。……ありがとう」
俺は起き上がり、最後のジュースを飲み干した。
『そういえば、俺の話はしたけど、お前の方はどうなんだ?』
さっき、俺が引っ越してからのシロタマのことを聞いたんだ。……うん、いろいろやらかしてたよ。それについては、まぁ、そのうちに。
『引っ越してからも相変わらず、もじもじよ、なよなしてたんじゃないか? ちゃんと友達は作ったか? 俺はお前が引っ越し先でもちゃんとやってけてるか、心配してたんだぜ』
「お前は俺の父さんか母さんか」
『俺としては、お前の両親みたいなもんだと思ってるからな! 息子のことは心配なんだよ』
「誰が息子だ!」
『で、どうなんだよ』
「……それなりに元気にやってたよ」
『ぬいぐるみばっかり作って、友達を作らなかったなんてないだろうな』
「……ふっ、どうだろうな? まぁ、俺はこれといって何事もなく、ごく普通に生活してたよ」
『本当かぁ?』
「本当だって」
『……まあ、お前がそう言うならな』
シロタマが俺の腕に、ふたつのしっぽをそっと絡ませてきた。もしかしたら、何か気づいたのかもしれない。子供の頃も、俺が何も言わなくても、気持ちをわかってるようなところがあった。
でも、本当のことはまだ言えないんだ。大切なお前には、心配をかけたくないから。俺はシロタマの頭を、そっと撫でた。
『それで、これからずっとここで暮らすのか?』
「いや、まだ決まってなくてさ。一応1年はいる予定だよ。その後はちょっと分からない」
『そうか、せっかくだから、もうここで暮らせば良いじゃないか』
「いろいろ考えてから決めるよ」
『俺はずっとお前がいてくれたら嬉しいけどな!』
「ありがとう」
『でも、そうか。1年は一緒にいられるんだな。……うーん、じゃあ大丈夫か。いや、でも俺との時間が減るのは……』
「ん? 最後の方、なんて言ったか聞こえなかったけど?」
『あ、ああ! これから楽しい日が続くなって言ったんだ!』
「そうか?」
こうして、そのまま話しを続けた俺たちだったけど、いつの間にかそのままの格好で寝てしまっていたよ。




