41話 継縁子と修復の間5
『そうそう、そこをね、こうやって伸ばすようにして、それから針を通すと……。ほら、良い感じに縫えるんだよ』
『ワタは、こうやってほぐすと、よりふわふわになるんだぜ。もししっかりした硬さのぬいぐるみにしたいなら、ただ詰めるだけじゃなくて、こうやってまとめる入れると、しっかりできるぞ』
『分かっているとは思いますが、それぞれ生地によって、洗い方は変わってきます。いいですか? ここにあるぬいぐるみの数だけ、洗い方があるという事です。まず、こっちのぬいぐるみは……』
なるほど、ここはこうするのか、ここはこうやれば良いのか、と。継縁子たちの指導を受ける俺。そんな俺の横で……。
『そこ、もう少し手を伸ばすと、もっとしっかり持てるんじゃない?』
『しっぽもさ、もう少しこの角度にすると、カッコよく見えるよ』
『片足あげてみれば良いじゃなね? ただ歩くだけなら、もうできてるんだからさ』
『それは、最後の決めの時にやった方が良くない?』
『こう、決まりました!! って』
『あっ! 確かにそうか』
『うむ。じゃあそれの練習でもしてみるか』
……こっちは真剣に練習してるのに、そっちは何してるんだよ。そう思いながら、俺は修復し終わったぬいぐるみを、継縁子たちの前に置いた。
『うん! 良いね! みんなどう? 今回はこの辺で良いんじゃない?』
『だな。俺は良いと思うぞ』
『まぁ、一応及第点でしょうか』
『いやいや、良くできてるだろう』
『思っていたより出来が良くて、わざと言ってるんじゃない?』
『私は事実を言ったまでです』
『じゃあ、今回の練習はここまでにする?』
『『『意義なし!!』』』
『それじゃあ決まり!! 晴翔、お疲れ様!! 合格! 練習は終わりだよ!!』
「みんなありがとう!!」
良かった。何とか合格をもらえたよ。ホッとする俺。が、しかし。
『これで、次回はもっと練習の幅が広がるね!!』
「これで?」
『うん! またいつか、この続きを教えにくるから、その時までしっかりと練習しててね』
これで終わりじゃないのか? そう何度も来られると、やっぱり困るんだが。でも……。
最初は、なんでこんなことになったんだ、面倒だな、なんて思っていたけれど。継縁子たちの指導は、ツムギやユイトのようにとても分かりやすく。
それに、俺の悪い部分を的確に指摘してくれて、その改善方法も丁寧に説明してくれて。
こんな縫い方があったのか、こうやってワタをほぐして入れればいいのか、などなど、学ぶことは多く、とても有意義な練習ができ。結果的には、ありがたい経験となった。
「みんな、丁寧に教えてくれてありがとう」
俺は継縁子たちにお礼を言う。俺の練習が終わったのを見て、シロタマたちが俺たちの所へ戻ってくる。
『俺もいろいろと、感想を言ってもらえて良かった。ありがとう』
『タマもだいぶ良い感じになったよね』
『だよなぁ』
『後は練習あるのみだね』
……練習ねぇ。本人が有意義な練習ができたなら良いけどさ。
シロタマが何を練習していたか。それはあの立ち上がり、頭と両手と、両しっぽにぬいぐるみを5個ずつ乗せ歩く。それの練習だった。
俺の家に来た時に、シロタマのその姿を見て、もう少し手の角度を変えた方が良いとか、しっぽもこうした方が良いとか、こっちのポーズの方が良いよね、なんて。継縁子たちは、いろいろ思っていたらしい。
それでそれを伝え、シロタマに練習させるために、俺と一緒にシロタマもこの空間へ連れてきたって。思わず突っ込みそうになったよ。裁縫も修復も関係ないだろ!! って。
それで真剣に練習する俺の横で、ずっとそれの練習をしてるんだもんな。まったく、気になって仕方がなかったよ。
『あっ、そろそろ帰った方が良いね』
『他の話しは戻ってからにしよう』
どうやら現実では、2時間経過したらしい。シロタマを抱き上げると、来た時のように周りが光初め、俺は目を閉じた。そして……。
『到着!!』
『晴翔、タマ。戻ってきたよ』
継縁子たちの声にそっと目を開ければ、俺はベッドに寝ていた。無事に現実に戻ってくられたようだ。
そうして俺が周りを確認すると。顔の横の所に、ツムギやユイトの姿があった。
『お帰り!!』
『しっかり練習してきたか?』
『あっ、久しぶり!!』
『帰ってきてたんだな!!』
お互いに挨拶し始める、ツムギやユイトと継縁子たち。何かと思えば、みんな顔見知りだった。昔、一緒に行動していたらしい。
『押入れの中の糸屑と、晴翔たちの様子を見て、みんながきてるって思って。起きて待ってたんだよ』
『本当久しぶりだな』
朝早くから出かけていたツムギやユイト。どうやたら2人が出かけてから少しして、継縁子たちはここへきて、押入れで休んでいたようだ。
そうして継縁子たちは深夜になって、俺たちをあの空間へ連れて行き。その1時間後くらいに、ツムギやユイトたちは帰宅。
それで寝ようと思い押入れに入ったら、糸屑がたくさん落ちていて、しかも継縁子たちの気配もしたから。すぐに俺が向こうの空間で、練習していると気づき。そのまま起きて、待っていてくれたようだ。
ちなみに、糸屑は継縁子たちが移動する時に必ず落ちるらしい。試しに歩いてもらったら、一定の間隔でどこからか糸屑を落としていた。俺が掃除の時に見た糸屑は、継縁子たちの物だったんだ。
『それで晴翔はどうだった?』
『すぐにいろいろ覚えてくれたよ』
『それに修復したぬいぐるみは、良い感じだったぜ。誰かは及第点とか言ってたけど』
『本当のことを言ったまでです』
『つまり良いってことだ。お前の及第点って、十分良いって意味だからな』
『違います、及第点です』
『はいはい』
その後も、久しぶりの再会と、俺の練習の話しと、シロタマの話しで盛り上がるツムギやユイトと継縁子たち。俺はそんなみんなに、お礼も込めて本当のお菓子を用意し、気の済むまで楽しんでもらった。
そして早朝……。
「もう行くのか? 寝てないだろう? 少し寝てから帰ったらどうだ?」
『ばぁばに報告しなくちゃ』
『楽しかったから、話すこといっぱい』
『だから時間かかる』
『それに、早く帰らないと怒られるんだよ』
『私たちは、少しくらい眠らなくても平気でるからね、問題ありません』
「そうか、それなら良いんだけど」
『ねぇねぇ、みんな。晴翔の練習関係なく、遊びに来てよ』
『だな。遊びだけで来ても、怒られないだろう?』
『う~ん、どうかな?』
『聞いてみないと分からない』
『でも、ダメなら説得して、遊びに来るぞ!!』
「じゃあその時は、たくさんお菓子を用意しておくな」
シロタマに手伝ってもらって、そっと屋根まで登らせてもらい、継縁子たちを見送る。
『これからも練習を怠らないようにね』
『次に腕が落ちていたら許しません』
『まぁ、人それぞれだから、どうなるか分からないけどな。できるなら練習して、もっと上手くなってほしいぞ!』
「ああ! これからも練習を続けて、みんなのぬいぐるみを、しっかり心を込めて修復するよ」
『絶対だよ!! それじゃあね!!』
ハムスターのぬいぐるみが、空を飛んでいく。何とも言えに光景に、苦笑いしてしまった。かなり遠くから来たみたいで、来る時は他のあやかしに連れてきてもらったらしい。だから帰りもそうなのかとおもったら、みんなで飛んでいくと。
「人に見られないように気をつけるんだぞ!」
『うん!!』
『バイバイ!!』
どんどん小さくなっていく継縁子たちの姿。
そうして俺たちは、継縁子たちが完全に見えなくなってから部屋に戻った。
すると朝日に照らされた、ハムスターのぬいぐるみが目に入る。継縁子たちに合格をもらえると、もらえるとぬいぐるみなんだ。これからも来るって言ってただろう? それで3つ貯まると、何か良い物を貰えるらしい。
なんか人間みたいなことをやっているなと思ったら。人間を観察して、そしてテレビでも見て、ポイントカードの事を知り、それの真似をしたって。みんなそれの方が、やる気が出るんでしょう? ってさ。
まぁ、人によると思うが、俺的には、何が貰えるか、ちょっと今から楽しみだ。
「さて、俺たちは寝るか」
『そうだな。バイトがあるんだろう? 少ししか寝られないが、大丈夫か?』
「ああ、大丈夫だよ」
『ふわぁぁぁ、僕も寝よ』
『俺も寝るぜ』
それぞれベッドと布団に入る。
寝る前にもう1度、ハムスターのぬいぐるみを見た。継縁子たちが作った可愛いぬいぐるみ。うん、これからも練習を欠かさずに、次も頑張って合格を貰わないとな。




