40話 継縁子と修復の間4
俺とシロタマは今、たくさんのお菓子の前に座っている。それから少し離れた場所には、たくさんのぬいぐるみと、ぬいぐるみを修復するために必要な道具も、たくさん置かれている。
あー、まず結論から言うと。あのハムスターのあやかしは、危険な存在じゃなかった。さらに正確に言うと、ハムスターのあやかしじゃなくて、ハムスターのぬいぐるみを器にしている、別のあやかしだったんだ。
シロタマによると、俺たちのところに遊びに来るあやかしは、皆そのままの姿で遊びに来ているが。中には、自分の本来の姿を見せず、何かを器としてその中に入り、生活しているあやかしもいるようで。今回のあやかしはそのタイプだった。
あやかしの名前は継縁子。本来の姿は、小人のような姿をしているらしいけど。今は色や模様の違う、眼鏡っ子、リボンつき、ぽっちゃりなど。様々な手のひらサイズのハムスターのぬいぐるみに入っているぞ。
そして、どんなあやかしかというと、洋服でもぬいぐるみでも、どんな物でも完璧に作り上げ、修復までも一切の妥協なく仕上げる。簡単に言えば、裁縫のエキスパートだと。
着られなくなってしまった洋服や壊れたぬいぐるみを見つけると、そっと修復してくれる、優しいあやかしで。けして人やあやかしに、害を及ぼすあやかしではないようだ。
ただ、この継縁子たち。危険はないものの、ある人々やあやかしにとって、そして状況によっては、少々面倒なあやかしでもあった。
洋服やぬいぐるみを作ったり、修復したりしている人やあやかしを見つけると。その裁縫の腕を、もっと上げさせようとして。今回みたいに自分たちの空間に引き入れて、自分たちの気が済むまで練習させるらしいんだ。
そうしてそれに、今回は俺とシロタマが選ばれたと。
「はぁ、まったく、いきなり連れて来て。先に説明してくれれば良かったのに、いつもこうなのか?」
『うん、連れてくる人だけを、きちんと連れて来たいから、他に誰もいないのを確認したらひょいって』
「ひょい、じゃないよ。大体俺たちが元の部屋にいない事に他の人が気づいたら、大問題になるんだぞ」
『あ、それは大丈夫だぞ。体は向こうにあるから。他の人が見ても、ただ寝てるだけに見えるんだ。感覚だけこっちに来てる感じだ』
『それに時間も安心して。こっちで何時間経ってても、向こうでは2時間くらいだから。前に人間に時間を測ってもらったんだ。だからいろいろ大丈夫』
「大丈夫って、はぁぁぁ」
『それにさ、さっきそっちのネコが言ったけど……』
『ネコではない猫又のシロタマだ』
『タマがさ……』
『シロタマだ』
『もう、タマで良いじゃん。タマが僕たちの気が済むまで帰さないって言ってたけど、ちゃんと時間を考えて帰すから、それも大丈夫』
『ですからここで、たくさん練習して帰ってください。私たちがアドバイスしますから』
『このお菓子、食べた気になって、頑張って練習だ!!』
「……これは、やらないとダメな感じか?」
『あやかしには、こんな風に強引や奴も多いいんだ。俺が本気を出せば、すぐにここから出る事ができるが。それをしても、またここへ連れてこられるだけだろう。ここはさっさと練習して、奴らから帰してもらった方が良い』
はぁ、しょうがない。ここはシロタマの言う通りにしておくか。
ん? ところで、練習は良いけど、それは俺だけで良いんじゃないか? シロタマは確かに手伝ってくれてるけど、関係ないんじゃ? それとも人型になれるのを知っていて、一緒に練習しろって事か?
そんな事を考えながら、俺は仕方なく継縁子たちが作り出した空間で、お菓子を食べた後、ぬいぐるみ修復の練習をすることになったんだ。
ただ、これがとても不思議な感覚だった。体はちゃんと俺の部屋で寝ているのに、精神だけがこの空間に来ている感じなんだけど。
それなのに、お菓子を食べた時の味や、何かを手に持った時の感触は、ちゃんと感じられたんだよ。
だからいざ修復の練習を始めて、継縁子たちが細かくアドバイスをくれて、その通りに手を動かしてみると。現実で練習しているみたいに、しっかりと練習する事ができ。気がつけば、なんだかんだ集中して練習していたんだ。
そんな集中していた俺の横で。何で連れてこられたか分からなかったシロタマだけど。まさかあれの練習をするとは、思っていなかった……。




