39話 継縁子と修復の間3
『あっ、今なら他に誰もいないよ』
『本当だ。じゃあ、すぐやろう!』
『だな! 今度はどれくらいで、どれだけ上手になるか、楽しみだな!!』
『私たちの言うことを、ちゃんと理解できれば良いですが』
『大丈夫だよ。だって優しそうだもん。それにあやかしと仲が良い人間は、みんな良い人なんだから』
『理解する能力とそれは関係ないと思いますが?』
『久しぶりじゃない? これだけあやかしが集まってる人間は』
『俺達とも仲良くしてくれると良いな!』
『ボク、楽しみ!!』
『私の話しを聞いていますか?』
『じゃ、今から呼ぶよ~』
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結局、どれだけ待ってもツムギとユイトは戻らず、俺たちが寝る時間になっても帰って来ることはなかった。シロタマ曰く、新商品に夢中で、まだお店に残っているんだろう。そのうち帰ってくるから大丈夫だと言われ。俺たちはとりあえず寝る事に。
そんな俺をシロタマが起こしたのは、深夜3時くらいだった。突然体に衝撃が走り、シロタマの俺を起こす声が聞こえ、俺は慌てて起きたよ。そうしたら……。
「……おいおい、何だよこれ」
俺とシロタマは、ベッドに寝ていたはずなのに、いつの間にか何もない白い空間とでも言うのか、そんな場所に居たんだ。
「シロタマ、これは?」
『やられたら。これはあやかしの力だ。奴ら、俺が気付けないほど、しっかりと気配を消していたらしい。突然押入れから現れ、力を使ってきた。今はお前と俺を、別の空間へ引き摺り込んでいる最中だ』
「別の空間?」
『ああ。まだこれをやったあやかしを見ていないし、どこへ連れて行こうとしているのか分からないが。空間自体が安定していない今、ここから逃げるのは危険だ。この空間が落ち着き次第、どうにか元の場所へ戻れるようやってみる。だから晴翔、お前は絶対に俺から離れるな』
「分かった!」
一体どんなあやかしが、俺とシロタマをどこへ連れて行こうとしているのか。この前のあやかしの事があったから、気をつけてはいたのに。まさかこんな事になるなんて。しかも、シロタマに分からないように、気配を消していたって。
シロタマは、こんな普通のネコの姿をしているが、力が強い猫又だ。そんなシロタマに、気づかれないように隠れていて、力を使うなんて。それだけ向こうも、力が強いあやかしの可能性がある。
シロタマたちみたいに強くない、そして結城さんのような力がない俺は、シロタマの言うことを聞いて、静かにしていた方が良い。
俺が立ち上がると、俺の腕の中にシロタマが飛び込んでくる。
『まったく、俺たちにこんなことをして。もしも晴翔に何かあってみろ? ここから出られて、向こうをきっちり確認できるようになったら、時には覚えておけよ』
「どんなあやかしだろうな」
『初めて感じる気配だからな。街にいないあやかしだろう』
「そうか」
『!! 晴翔気をつけろ! 空間が安定して来た。もうすぐ呼ばれた場所へ出るはずだ』
「分かった!!」
身構える俺。俺の肌に刺さらないように、それでも爪を立て威嚇するシロタマ。その数秒後だった。俺たちを明るい光が包み、あまりの光の強さに、俺は目を瞑った。そして……。
「……シロタマ?」
何となく光が収まって来た事が分かり、シロタマに声をかけながら目を開ける。腕の中には、シロタマの感触があるから、ちゃんと抱っこしているとは思うんだけど。
「シロタマ? 大丈夫か?」
返事を返さないシロタマ。俺は目を軽く擦りながら、もう1度だけ声をかける。目を擦ったおかげか、ようやく周りをしっかりと見る事ができ、返事をしないシロタマを確認した。
良かった、ちゃんとシロタマを抱いていた! ホッとする俺。だけど……。なんで返事を返してくれないんだ? もしかしてどこか怪我をして、話す事ができない!?
俺は急いで、シロタマの体を確認しようとした。が、シロタマの表情を見て、止まってしまった。さっきまでの威嚇はどこへやら、目を大きく開き、驚きの表情で前の方を見ていたんだ。
「シロタマ?」
『あっ! 人間の方も、ちゃんと見えるようになったみたい』
『良かった良かった』
『ちゃんと連れてこられたな!!』
『さて、これからですね』
誰の声だ!? 問題のあやかしか!? 俺はシロタマが見ている方を見る。
するとそこには、小さな手のひらサイズの、ハムスターのぬいぐるみが何個も並んでいたんだ。
え? ハムスターのぬいぐるみがあやかし? シロタマじゃないが、俺も思わずじっとぬいぐるみを見てしまう。すると……。
パンッ! パンッ! パンッ!!
『人間、猫又、僕たちの大切な空間にようこそ!!』
『『『ようこそ!!』』』
『楽しみながら、たくさんの事を勉強して行ってね!!』
どこから出したのか、クラッカーをパンパン鳴らし、ようこそ!! と挨拶されてしまった。




