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猫又と俺の願いを縫う不思議な工房  作者: ありぽん


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36話 土に中かのエールともう1度芽が出る日5

「よし、そっち、もう少し耕してくれ!!」


『これはどこに運べば良い?』


「ああ、それは向こうに頼む」


「結城さん、これはどうしますか?」


「お、届いたか。よし、それは向こうに持って行ってくれ。後でみんなで植えるからな」


『何植えるもぐ?』


「とりあえず、俺が育てたことがあって、初めてのあやかしでも、育てやすい物だな、ミニトマトにきゅうりにナスに、それから枝豆、大根、レタスだ」


『わわ! いっぱいもぐね!! 嬉しいもぐ!!』


「他はまだ、草を刈って耕したばかりだから、植えるまでにもう少し時間がいるが。お前達が今まで大切に使ってくれていた場所は、すぐに植えられるからな」


『今から植えるもぐ?』


「ここと、向こうの作業が終わってからだ」


『分かったもぐ! みんなに伝えてくるもぐ!! みんな喜ぶもぐよ!!』


 根応が仲間の元へ走っていく。そうして根応から話しを聞いたんだろう。根応たちの間で歓声が上がった。


 ぬいぐるみを修復してから10日後。あの日結城さんに連れられてきた畑に、今日も俺たちは来ていて、農作業をしている。結城さんが、草がぼうぼう生えている畑を借りたんだ。


 そう、この畑は。老夫婦の畑で、根応たちが守り応援してきた畑だ。


 この前結城さんが話してくれただろう? 前に住んでいた所で、庭に小さな畑を作って、そこで野菜を育てていたって。それでまたリンと影嗅が、それをやりたいって言っていて。


 それで今回、根応の話しを聞いた結城さんは。根応が今住んでいる、老夫婦の家を確認しに行き。その後老夫婦について調べ、そして老夫婦の家族に連絡を取ったんだ。そう、畑を貸してくれないかって。


 そうしたら老夫婦がとても喜んでくれて、すぐにいろいろな手続きを開始。そして、俺にはその辺の手続きのことは分からないけど。

 話しはあれよあれよという間に進み、予定していたよりも早く畑を借りられたため。結城さんは昨日から作業を始め、俺たちは今日から手伝いに来たんだ。


 ちなみに草ぼうぼうだった畑だけど。今日俺たちが来た時には、畑のほとんどが、草はなくなり綺麗に耕し終わっていたよ。


 結城さんがお兄さんに連絡。お兄さんは刈草童子という、鎌を自在に操り、伸びすぎた草を瞬時に刈り取るり、刈った草を自然にまとめる力にあるあやかしと。

 土母熊という、地を耕して育んでくれる、クマのような、かなり大きなあやかしと暮らしており。昨日、その2人に綺麗にしてもらったって。


 ちなみにお兄さんは、仕事があるって、畑を耕した後、すぐに帰ってしまったようだ。


『晴翔、こっちに来てくれ!!』


『わわ!? ハマっちゃった!?』


『それ!!』


『やったな!! えい!!』


「ほら、みんな遊んでないで、ちゃんと手伝ってくれ! これから苗を植えるんだぞ!!」


『『『は~い!!』』』


 これは帰りに、全員まとめて洗わないとダメだな。全身土と泥だらけだ。あれでうちに上がられたら、たまったもんじゃない。


 こうして畑仕事を初めて2時間。初めての畑に、遊びまくるみんなを何とかしながら。ようやく苗を植えられるまでに、他の作業は終わらせ、いよいよ苗植えの時間になった。


 苗植えは、もともと根応たちが、今まで使っていた場所を使わせてもらう。根応がみんなに植え方を教えてくれて、みんなこの作業は真面目にやっていたよ。俺も初めての作業で、結構楽しかった。


 どれくらいの深さに植えるとか、土をかける時は、どのくらいの力でとか、結構気にすることがあって。それでいろいろ変わってくるらしい。


 小学生の時にミニトマトを育てた時は、そんなこと考えずに植えてたからな。しかも時々水をやるのを忘れていたし。


 根応が教えてくれている姿を見たら、何とも言えなくなってしまった。うん、俺もじいちゃんに頼んで、ミニトマト育てるかな?


「よし、これで今日は終わりだ! みんな手伝いありがとな!!」


 全ての苗を植え終わり、水を巻けば俺たちの今日の仕事は終わりだ。だけどこの後、1番大切な事が待っている。


 根応たちが、土地を花々を、野菜を、元気にしてくれる、応援の舞をやってくれるんだ。


 久しぶりのたくさんの野菜に、根応たちはやる気満々で、全員が農道に並ぶ。俺たちは邪魔にならないように、少し離れた場所で、応援の舞を見ることにした。


『みんな、やるもぐよ!!』


『『『おー!!』』』


 そして応援の舞が始まった。……始まった?


「……これが応援の舞?」


「ああ、これが根応たちの応援の舞だ。驚いたか?」


「いや、驚いたっていうか、舞って神社でやる神さまに向けた踊りみたいなイメージだったんで。あ、こういうのだったんだ、っていうか」


「まぁ、そう思うよな。でも根応たちの応援の舞はあれだ。盆踊りみたいだろ?」


 結城さんの言う通りだった。笛や太鼓をどこからか取り出し、始まった応援の舞は、完璧に盆踊りだった。


 いや、うん。俺の勝手なイメージで。しかも何も聞かずに、そういうもんだと思い込んでたからさ、こうギャップが。まさか盆踊りだったとは。


 根応たちは踊りながら、楽しそうに、そして嬉しそうに、あっちへそっちへと踊り歩き回る。


『うむ。楽しそうだな。俺も行ってこよう』


『なら俺も行くか』


『それで踊った後は、何か飲みに行こうよ』


『うん、それが良い』


『踊りの後の、お酒とおつまみって良いんだよねぇ』


『枝豆あるかな?』


『居酒屋に行けば何でもあんじゃない?』


『だな、いっぱい踊って居酒屋行こうぜ』


 根応たちの応援の舞を見て、それを真似していたシロタマたち。が、もっと踊りたくなったのか、根応たちの方へ行き、一緒に並んで踊り始めた。


 さっきの会話。どう考えても、盆踊りでお酒を飲み、おつまみを食べる、じいちゃんたちと同じなんだけど。


「やっぱり盆踊り?」


「ハハハッ、まぁ、シロタマたちじゃそうなるな。でも、ほらみて見ろ」


 結城さんが指差した方を見てみる。すると……。


 畑に植えた苗が全てキラキラ光り初め、その後一気に、最初に植えた苗の3倍まで、苗が成長したんだ。


「え?」


「あいつらの応援の舞が届いたらしい。本来なら力を制限して、一気に育たないようにしてるから、あんなに育たないんだが。……嬉しかったんだろうな。つい、力を込め過ぎたようだ。俺たちだから良かったよ。知らない人間が見ていたら、ビックリして、場所によっては騒ぎになってただろうからな」


 サブロウじいちゃんと同じか!! ぬいぐるみじゃなく、別のことでも騒ぎになるところだったよ。


「まぁ、今日は初日だし良いだろう。後でちゃんと注意しておくさ」


「はぁ」


 俺はぬいぐるみの修復を頼んできた根応を見る。嬉しそうに踊る根応。頭の上には透明な袋に入っている根応のぬいぐるみを掲げている。


 俺が透明の袋を何枚かあげたんだよ。最初にここへ来た時、根応に最後にやる事があるって言ったろう?


 それが透明袋に、根応のぬいぐるみを入れることだった。これからもどうせ、ぬいぐるみは泥だらけになるだろうからな。毎回洗うわけにはいかないし、それで生地も痛むし。だから透明袋に入れて、綺麗にしておけって言ったんだ。


 もしも袋がなくなった時は、取りに来いとも言っておいた。俺がこの街に居るうちはな。もしも俺が帰ってしまったら、結城さんにって、結城さんにも頼んである。


 いや、入れておいて良かったよ。今日の作業だけで、透明袋は泥だらけだからな。でも……。


「みんな、嬉しそうで良かったですね。ちょっとやり過ぎだけど」


「ああ。……あやかしには、この間のあやかしみたいに、面倒な奴もいる。もっと危険な奴もな。だが、こうして良い関係を築けるあやかしたちもいる。そいつらと共に暮らすの悪くはない」


「そうですね」


「時々来てやってくれ。たくさん人もあやかしも居た方が、あいつらも楽しいと思うから」


「ええ、時々遊びにきます。それで畑仕事を手伝いますよ」


「……ありがとな。さて! そろそろ止めるか。さすがにこれ以上はやり過ぎだ。おい、お前ら、そろそろやめろ! 植えていないはずの野菜の芽まで出てるし。前に植えてあった野菜の種が、土に残ってたか?」


 俺は畑の中を見る。そこには元の大きさから、5倍程大きく育った苗が。レタスなんて、もう収穫できるんじゃ? ってほどになっていたよ。そして、ところどころに出ている、新しい芽。


 キラキラ光る苗と芽が、光の海みたいになっていて、とても綺麗だった。

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