33話 土に中かのエールともう1度芽が出る日2
「お、そうか? じゃあ明日にでも仕入れに行くか」
「あ、もしかしてシロタマたちが、よくお店に来るからですか? ここのところ誰かしらここに来ているから。すみません」
「ああ、違う違う。新しい場所に引っ越してきて、仕入れ先を変えたもんだから、どうにも勝手が違ってな。今までのクセで、まだ材料は大丈夫だろうって思ってると、時々足りなくなるんだよ。こいつらが、食べ過ぎて飲み過ぎってんじゃないから気にするな」
「それなら良いんですけど」
『ねぇ、結城』
「ん? 何だ?」
『ここではお野菜育てない? リン、畑でお野菜育てたい。影嗅も遊びたいって言ってた』
「ああ、それな。それも今、ちょっと考えてることがあってな。もう少しだけ待ってくれるか」
「リン、野菜育てるの好きなんだ」
『うん! リン大好き!! 影嗅は穴掘るの大好き!! それに虫もいっぱいになるから、それも好き。だけど白火は汚れるから、あんまり好きじゃない。お野菜収穫の時も摘む』
リンがカブの葉っぱを摘んで持ち上げる。
『白火はこうやって引っ張る。他も同じ』
……野菜って摘んで引っこ抜けるのか? あやかしだから、力が強くて引っこ抜けつとか?
『何であんなに汚れる事が好きなのか、理解できん』
「そう言うな白火。2人は大好きなんだから。前に住んでいた所で、庭に小さな畑を作って、そこで野菜を育ててたんだよな」
『うん!! だからここでもやりたい。結城待つって言った。だからリン、待ってる。影嗅も』
『ああ、待ってる』
どうやら本当に好きらしい。
そんな話しを聞きながら、その後も結城さんの料理を味わった俺。シロタマたちは途中から、べろんべろんに酔っ払い、その場で寝初めてしまい、俺はまたシロタマ達を怒る羽目に。まったくお店で寝るなんて。
「ほら、もう解散するぞ。みんな家に帰れ。いいか、商店街に行って、また飲むんじゃないぞ」
『まだ、飲めるぞい』
『だよなぁ、ネズじぃ』
『そうだぞ、まだ飲める』
「飲みすぎ寝てるのはどこの誰だよ。小さなあやかしに示しがつかないだろう」
『小さくたって、生まれたばかりだと言ったって、あやかしはあやかし。お酒はそんなに問題にならないから大丈夫だ』
「大丈夫じゃない! まったく」
「ハハハッ。まぁ、今は他の客も帰ったし、今日は貸切にするから、そのまま少し酔いを覚ましてから帰らせろ。そのまま商店街で、面倒を起こされてもな」
「すみません」
そう俺が謝った時だった。ガララとドアが開いて、小さなあやかしが中へ入ってきた。お客さんだと思い、俺はシロタマ達を起こそうとする。貸切にって結城さんは言ってくれたけど、お客さんが来たなら別だ。
「今、シロタマたちをどかすよ。ちょっと待ってくれ」
「ああ、ここに座ってもらうから大丈夫だ。初めてのやつだな。ほら、こっちに座れ」
『あ、あのもぐ。今ここに、晴翔っていう人間が来てるって聞いたもぐ。おいら、晴翔にお願いがあってきたもぐよ』
「晴翔に?」
結城さんたちが俺の方を見る。するとあやかしも俺の方を見てきて、俺の前にちょこちょこ歩いてきた。そして。
『初めましてもぐ。晴翔もぐか?』
「ああ、俺が晴翔だ。俺を訪ねてきたってことは、俺にぬいぐるみの相談か?」
『良かったもぐ!! 晴翔に会えたもぐ!! そうもぐ、おいら大切なぬいぐるみを治してほしくて、今度晴翔のお家に行こうと思ってたもぐよ!!』
「そうか! じゃあ、話しを聞くからちょっと待っててくれ。今、この邪魔な連中を退かすから。ほら、酔っ払いは退いた退いた」
俺はシロタマたちをグイグイ押して、その場を開ける。
「ほら、仕事の話しをするんだから、向こうに行けって」
『……ん? なんだ根応か』
すると動かして起きたシロタマが、あやかしをチラッと見てそう言ってきた。
「根応?」
「簡単に言うと、モグラのあやかしだ。自然の花々や畑を耕す人々、野菜たちにそっと寄り添い、静かに応援してくれる。その応援の力は根っこへと伝わり、植物たちに元気を与えるんだ。もちろん、人間にも元気を分けてくれるぞ」
へぇ、そんなあやかしもいるのか。
『おいらの応援で、みんな元気元気もぐ!! でも……、今はちょっとダメもぐよ』
「そうなのか。よし、しっかり話しを聞いて、ぬいぐるみを修復できるか確認しよう」
『ありがとうもぐ!!』




