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猫又と俺の願いを縫う不思議な工房  作者: ありぽん


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32話 土に中かのエールともう1度芽が出る日1

『僕、これ食べたい!』


『おい! それは俺のだ。食べたいなら自分で注文しろ!』


『え~、これが良いんだよ。ね、ピヨ助、ピヨ吉』


『そうだぞ。これが良いんだぞ!』


『そう、これが良い』


『だから、自分たちで注文しろって。……って、話してる間に、食べるなよ!』


『ふぇ、カエンがおこっちゃ……。わあぁぁぁん!!』


『ネズじいちゃん、ご飯なくなったぁ』


『別の食べても良い?』


『ねぇねぇ、ネズじいちゃん!』


『んあ? ご飯?』


「おい! みんな騒ぎすぎだぞ!! 他にもあやかしが来てるんだから! 騒いでみんなの邪魔するなよ! カエン! ひと口くらい食べさせてやっても良いだろう! ピヨ太たちも自分たちで頼め! ネズじいちゃんも飲んでばかりいないで、小さい子たちの面倒見てくれよ。シロタマ! 少しは手伝ってくれ!!」


『俺だって、さっきまではちゃんと手伝ってただろう。今度は俺が飲む番だ。それこそカエンお前が今度は、他のあやかしの世話をしろ』


『なんだよ。お前だって大して手伝ってないだろうが! ほとんど晴翔がやってんじゃないかよ』


「分かってるなら手伝ってくれよ!」


「ハハハハハッ! これだけ騒がしいのは久しぶりだな。ほら、新しい料理だ! 白火、リン、料理を運んでくれ。影嗅は飲み物を頼む」


「ほら、みんなも自分で取りにいけよ」


「良いんだ良いんだ。みんなお客だからな。どんどん調理を作ってやるから喧嘩するなよ!」


「結城さん、すみません。こんなに騒がしくしちゃって。それに影嗅、白火、リン、運んでくれてありがとう」


「晴翔気にするな、宴会好きのあやかしなんてこんなもんだ。みんな騒いで飲むのが楽しくて仕方ないんだよ。晴翔もそっちは放っておいて食べろ。ほら、ハンバーグ定食だ」


 リンが俺の前に、ハンバーグ定食を置いてくれる。


「リン、ありがとう」


『リン、お手伝い好き!!』

 

 にっこり笑って、結城さんの元へ戻るリン。そうしてまた、新たな料理を結城さんから受け取り、他のテーブルへ運んでいく。お手伝いが大好きか、リンは可愛いなぁ。それに比べて、こっちのあやかし連中ときたら。


 俺がみんなを見れば、みんなは不思議な顔をして俺を見てきた。


『ん? 晴翔どうした?』


『こっちのご飯が欲しいのか? これは俺にだからやらねぇぞ』


『お酒もじゃ』


 お酒はもともと飲めないよ。はぁぁぁ。


 俺たちは今日、昼間から結城さんの『居酒屋あやかし』に来ていて、宴会をしている。結城さんが、今日は俺もゆっくり食べたり飲んだりできるようにって、お昼少し前からお店を開けてくれたんだ。


 ほら、基本夜、深夜、朝方の営業だから、俺が来るとなると問題だろう? だからってわざわざお昼に開けてくれて。で、まぁ、シロタマたちは大騒ぎをしてるっていう。まったく、警戒していたのはなんだったのか。


 そう、結城さんたちのことを、あれだけ警戒していたんだぞ? それが今じゃ、これだけ騒いで宴会してるなんて。


 実は初めて結城さん達と接触してから。俺と関わりのあるあやかしの誰かが、必ず結城さんの居酒屋へ通って。もちろんシロタマも通って。それで1ヶ月もすれば、全員が結城さんの居酒屋を気に入り、危険はないと判断。


 それからはなんだかんだと、居酒屋に通うようになり、今では『居酒屋あやかし』の常連客になってしまったんだ。

 まぁ、問題がないなら良いけどさ。本当、あれだけ警戒していたのはなんだったんだよって。


 ただ、どこまで信用できるのかっていうと……。誰かしら結城さんのことを、まだ見張っているようだ。ほら、あのあやかしを消す力を持っているから。その辺はシロタマたちが、俺の知らないあやかしたちとで話し合って、見張る順番を決めたとシロタマが言っていた。


 なら、こんな大騒ぎの宴会は大丈夫なのか? って思うけど。本人たちが大丈夫っていうんだから大丈夫なんだろう。俺も一応気をつけてるようにはしている。


「どうだ?」


「美味しいです」


「だろう? ハンバーグは俺の得意料理なんだ。他にも食べたい物があったら言ってくれ。作れるものなら何でも良いぞ」


「ありがとうございます」


 結城さんはいろいろ料理ができる。和食だろうが、フレンチだろうが、イタリアンだろうが、みんなが注文したものを、ほとんど作ってくれるんだ。しかも全て美味しい。


 この前なんてあまりに美味しくて、グラタンのレシピを教えてもらって。じいちゃんと神谷さんに作ったらとっても喜んでもらえた。だから料理に関しては、とても感謝している。それと、この前の事件に関しては……。


『結城、そろそろ野菜を買ってきた方が良いぞ』


 話していると、小屋に野菜を取りに行っていた白火が戻ってきて、そう言った。

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