29話 ぬいぐるみの花と優しく降る雨3
「これは凄いな。全部花のぬいぐるみか」
『わぁ、お花いっぱい』
『ちゃんと中にワタが入ってるんだね!』
『こっちの茎付きのやつ。葉っぱにも茎にも、ちゃんとワタかが入ってるぞ』
潤花音が風呂敷から出してきたのは、たくさんの花のぬいぐるみだった。時々花のぬいぐるみを見ることはあったけれど、いっぺんに30個以上は初めてだったよ。
しかも、それぞれところどころ壊れているとはいえ、その全てがじいちゃんみたいに、とても綺麗に縫ってあることが見てとれた。
「チューリップにアジサイに桜。コスモスに、薔薇にパンジー、ポピーにひまわり。他にもいっぱいだな」
『これはある人間から貰った物なのだが。30年くらい前だったか、今日のようにある家の前で倒れてしまってな。するとその家の住人が私を助けてくれたのだ。今のお主のように』
『なんだ、お前。前にも行き倒れたのか?』
『はははっ!! 私はよく倒れるのでな、いつもの事だ! 寒さであったり、お腹が空き過ぎていたり、今日のような時もあるし。その度に助けてもらっている、はははははっ!!』
『……お前、今までよく無事でこられたな』
シロタマの言う通りだ。行き倒れがいつもの事って、それどうなんだよ。
『それでだな、話しを戻すが。そんな私を助けてくれた人間の老婆が、私の具合が良くなるまでの間、家に置いてくれ。その間に私の話しを聞き、この花のぬいぐるみを作ってくれたのだ』
潤花音は花に雨を届けるあやかしだ。雨を届ける事で、花々を元気にする。その老婆は、花がとても大好きで、潤花音の話しを聞き。そんな花を大切にしてくれる潤花音とと、元気な様子の花のぬいぐるみを作ってくれたらしい。
『するとな、その後不思議な事が起こってな。花に雨を届ける時、この花のぬいぐるみも一緒に見せると、なぜが花がいつもよりも元気に咲くようのなったのだ』
「元気に?」
『ああ。最初は気のせいかと思ったのだが、どこへ行っても同じでな。それで、花たちに聞いてみたのだ。私は花と話ができるからな。すると、この元気のいい花のぬいぐるみを見ると、私の雨と合わさって、さらに元気になれるのだと、そう言ってきたのだ』
そう言われた潤花音は、それからは必ず花々に、花のぬいぐるみを見せるようにしたと。そして、いろいろな場所を周り、老婆の元へ戻ってくると、必ず花のぬいぐるみを修復してもらっていたと。しかし……。
『……数年後、ついに逝ってしまってな』
『人間とあやかしでは、寿命は全然違うからな。しかもお前が出会った時に老人だったのなら、仕方ないだろう』
カエンの言う通り、シロタマにも聞いたんだけど。やっぱり一般的に言われている通り、あやかしと人間の寿命はかなり違うようだ。
『ああ。だが最後の時に間に合ってね。すると最後のぬいぐるみを用意しておいてくれて。それを私に渡し、その者は旅立って行った』
寂しそうに話す潤花音。それから潤花音は、自分でぬいぐるみを修復しながら、各地を回っていたのだが。その人のように修復する事ができず、どんどんぬいぐるみはボロボロになっていき。
そうして隣町に着いた時のは、大変な事になったと。そこでどうしようか考えていたら、俺にぬいぐるみを修復してもらったというあやかしに出会い。俺のことを聞いて、急いで俺の所へやって来たと。
しかし急いできたのは良いが、着いた時に体力の限界が来て、家の前で倒れたらしい。
『晴翔殿、どうかこのぬいぐるみを修復してもらえないだろうか。あの者が私に残してくれた、このぬいぐるみたちを、これからも大切にしていきたいし。花たちも元気にしてやりたいのだ』
「それはもちろん! お前にとっても花たちにとっも、とても大切な物。修復しないわけにはいかないよ。ただ、これだけの量があるから、修復にはちょっと時間がかかるぞ」
『そうか!! 感謝する!! 時間は気にしないから、どうかこのぬいぐるみ達をよろしく頼む』
こうして俺は潤花音の、花のぬいぐるみを修復する事になった。
『こっち、ワタとったよ!!』
『こっちも終わり!!』
『晴翔、この生地はもうダメそうだから、新しい似ている生地を探すね』
「ありがとう、頼むな!」
『終わったの、こっちに持ってきて! 洗う水用意できたから!!』
かき氷で元気になったみんなと、手分けしてそれぞれ作業を進めていく。潤花音もこれから自分でまた修復するだろうと、真剣に俺たちの作業を見学しているっぞ。
そうして作業は、特に問題なく進んでいき。俺は花のぬいぐるみの中で、1番大きいひまわりのぬいぐるみの修復に入る事に。
それで状態を確認しようと、ひまわりのぬいぐるみを手に取った時だった。カチャン、カラカラというような感じの音が、ひまわりのぬいぐるみの中から聞こえたんだ。




