28話 ぬいぐるみの花と優しく降る雨2
「……」
『……』
『ガッガッガッガッガッ!!』
「あー、マルル、もう少し氷を出してくれるか?」
『うん!! ボクだしゅ!!』
俺がマルルの頭を撫でると、すぐにマルルがかき氷用の氷を出してくれて。俺はそれを器に入れ直し、いちごシロップをかけて、あやかしの前に出してやる。
『むっ!! おかわりすまない!!』
そしてそのかき氷も、ガッガッガッガッガッ!! と勢いよく食べ始めて。
これで10杯目だぞ。というか、よくその勢いでかき氷が食べられるな? 頭痛くならないのか? お腹壊したりしないのか? 後で具合が悪くなったって言われても、責任持てないぞ。
そうしてそれからも、ずっとかき氷を食べ続けたあやかしは、合計15杯のかき氷を完食したよ。そして……。
『いやぁ、本当の助かった。この通りだ!!』
俺の前であやかしは、『ありがとう」と言って、土下座までしてきた。
「いや、別にかき氷くらい、というか氷菓丸にお礼を言ってくれ。この子がたくさん氷を出してくれたからな」
『むっ! そうであるな。この小さなあやかしにもお礼を言わねば。氷、ありがとう! とても助かったぞ!』
『えへへぇ、ボク、がんばっちゃ』
「まぁ、元気になって良かったよ。それで、落ち着いてすぐで悪いんだけど、何がどうしてあんなことになっていたのか。そして俺に何の用があるのか、話しを聞かせてくれるか?」
『もちろんだ! まず自己紹介から。私は潤花音ともうす』
『潤花音? 聞いた事があるな』
「シロタマ、知ってるのか?」
『ああ。確か、雨が好きな花にはたくさんの雨を。他の花々には、晴れた後もずっと元気に咲けるように雨を。また、晴れが続き、萎れてしまった花々にも雨をと。そう、花に雨を届けるあやかしだったはず。間違いないか』
『ああ、ほぼその通りだ!』
『じゃあ、この長雨はお前がやってるのか?』
『全てではない。私はちゃんと雨の量を調節しているからな。降り過ぎの場合はほぼ天気によるもので、私は何もしていない。それに今は時期が時期だからな。今は、少し降らせている感じだ』
「そうなのか。なるほど。それで、そんな花に雨を届ける潤花音が、何でじいちゃんの家の前で、行き倒れしてたんだ」
『それはだな……』
そう、この潤花音というあやかし、実は家の前で行き倒れていたんだ。
それは俺たちがかき氷を始めて、30分ほど経った頃のことだった。丸っこい体に氷の角に、可愛いスプーンみたいなしっぽ。人懐っこくて、頭を撫でるとふわふわの氷を出してくれる、小さな子犬のような、氷菓丸っていうあやかしがいるんだけど。
俺はその子をマルルと名付けて。マルルにかき氷用の氷を出してもらい、みんなでかき氷を楽しんでいたんだ。
するとそこへ、ヒビキがやってきて、家の前に人が倒れてると教えてくれて。急いで駆けつけてみると、そこには……。いかにもあやかしです、って雰囲気の人物が、倒れていたんだ。
すぐにシロタマたちに確かめてもらうと、悪意は感じないという事で、とりあえず家に入れることに。でも、もしかしたらってこともあるから、シロタマたちには念の為に、監視しはしてもらったよ。
が、その助けている最中に氷菓丸が、『つ、冷たいものを』と助けを求めてきたため、かき氷を出すと、チャーハンでもかき込んでるのか? ってくらいの勢いで、なんと15杯を完食したんだ。
『お主に用があって急いで移動してきたのだが、それがよくなかったようだ。最近は休まずに花に雨を届けていたうえ、そのまま移動を続けていたせいで、疲れが溜まっていらしい。そこへこのジメジメとした天気だ。さらに体力を奪われてしまってな。あまりの湿気に、玄関前で倒れてしまったのだ』
『お前、雨のあやかしなんだろう? このジメジメした天気なんか、関係ないんじゃないのか? というか、お前がこの蒸し暑い中、雨を降らせるから、ジメジメするんじゃないか』
『雨のあやかしだろうと、このジメジメが平気なわけではない。それに先ほど言っただろう。ほぼ天気によるものだと。私はきちんと調節しているのだ。だからお主らのように、ジメジメにイライラしたり、ムカムカする。いやぁ、かき氷、最高だったぞ!!』
「ははは、イライラするか。まぁ、かき氷が美味しかったのなら良かった。それで、そんな倒れるまで急いで移動してきて、俺に何の用だ?」
『おお!! そうそう、それが本来の重大な目的だった!! お主のことを耳にしてな。お主に私のぬいぐるみを修復してもらいたいのだ。全ての花を元気にするために』
「花を元気にするため?」




