23話 新たな出会いと危険なあやかし2
『それで、なんかさぁ、ぬいぐるみがなくなったって言ってる人たちが多くて』
『隣に置いておいたのに、ふと目を話した隙になくなった奴もいる』
『起きたらなくなってた人も』
『泥棒かあやかしかもって、みんな言ってる』
『それからねぇ、健人が住んでるところじゃなくて、別の山のふもとにね、変なお店ができたんだよ』
『あやかしの文字が書いてある』
『『居酒屋あやかし』って書いてあった。それにあやかし専用って書いてあった』
『でも、あやかしと仲良しの人は入って良いって』
『でもさ、それってあやかしを捕まえる罠かもしれないじゃん? だから今夜、カエンたちが見に行くことになってるんだ』
『ボク達は外から観察』
「あー、待て待て。いろいろまとめて話すな。1つずつ順番にだ」
その後の日も、シロタマとゆっくり過ごそうとしていた俺のもとに、午前中からやってきたのは、ピヨ太、ピヨ助、ピヨ吉の3匹。せっかくのんびりするつもりだったのに、到着するなりズババババッと、あれこれ一気に話し話してきたよ。
ゆいぐるみがなくなったからどうしたって? あやかし専用の何ができたって?
「それじゃあまず、ぬいぐるみの話しからだ」
まず最初に、ぬいぐるみの件について聞くことにした。どうやら俺たちが、ピョコとクルリの相手をしていた間に。街や、少し離れた場所にある民家などで、ぬいぐるみがなくなるという事件が頻発していたらしい。
なくなったぬいぐるみは、売られている物や、個人で所有している物など、関係なくなくなっていて。泥棒かもしれないと、警察も出動したと。
だが、犯人の痕跡は一切見つからず。中には、ほんの一瞬目を離した隙になくなったというケースもあって。もちろん警察は、犯人は人間として捜査するから。隣に置いてあったぬいぐるみを、持ち主に気づかれずに取ることができるのか?
そして、現金や宝石などには手を付けられていないし、ぬいぐるみだけが盗まれていたため。警察も、本当に犯人がいるのか? なぜぬいぐるみだけが? と困惑しているらしい。
あやかしの間では、今のところ被害はないみたいだけど。でもみんな、大切なぬいぐるみを持っているからな。とても心配していて。
それに犯人が誰にも気づかれないなら、あやかしが姿を消したり、力を使って盗んでいるんじゃないか、って話しが出ているようだ。
シロタマに聞くと、書物に出てくるような悪いあやかしも、やはり実在するようで。自分たちのように人と仲良くする者ばかりではなく、人間や他のあやかしに害を与える存在もいると。そして、その中には、ぬいぐるみにまつわる悪さをするやつもいるらしい。
だからあやかしたちは今、できるだけぬいぐるみを持ち歩くようにしていて。持ち歩けないあやかしたちはその場に留まり、代わりに仲間のあやかしたちがご飯を運んだり、用事を済ませたりして支えているそうだ。
『ふむ、そうか。皆じゃないが、俺たちも気をつけた方が良いだろう。そうだな、俺もカエンたち町を見回って、面倒なあやかしがいないか調べてみよう』
「シロタマ、頼むな。俺もできる限り一緒に調べるよ。ただ、その。完璧に化けているあやかしの場合、人と間違える可能性もあるからさ。どこまで手伝えるか」
『まったく、人の大切なぬいぐるみを盗むとは』
「本当だよ。ピヨ太たちも気をつけろよ」
『僕たちは、カエンに隠してもらったから大丈夫』
「そうか。で、ぬいぐるみの話しはとりあえず分かったけど。そういえば、カエンたちの話しもしてたけど、カエンたちがどうするって? 居酒屋がどうしたんだ?」
俺はすぐに次の話しに移った。すると、どうやら健斗君の家の方ではなく、別の山のふもとにある空き家に、新しい住人が引っ越してきたようだ。
ところが、引っ越してきてまだ1日しか経っていないのに、早くも店には看板がかけられ、『本日より居酒屋オープン』という張り紙が貼られおり。しかもその文字は、あやかしにしか読めない文字で書かれていた。
他にも、看板には同じくあやかし文字で、『居酒屋あやかし』と書かれており? その隣には、『*あやかし専用。ただし、あやかしの友人である人間は入店可』の張り紙もあったようだ。営業時間は、夜の21時から明け方4時まで。ただし、時と場合により変更されるらしい。
そんな店ができたとなれば、酒好きのあやかしたちが行かないわけがない。が、人間の中には、あやかしの存在を知っていながら、それを捕まえようとする愚かな者たちもいるようで。あの居酒屋が、そういった人間たちの罠である可能性も否定できない。
ということで、今日、力の強いあやかしたち、カエンたちが。様子を確認しに行くことになっているんだと。
『そうか。なら俺も、ぬいぐるみのあやかしを調べながら、その居酒屋も調べてくるか』
「シロタマ。安全だったらお酒が飲みたい、なんて思ってて、行くんじゃないだろうな」
『そ、そんな事あるわけないだろう。俺はあやかしたちにとって安全か、しっかりと確認しようと思っているだけだ』
「はぁ。まったくどうだか? あんまり酔って帰ってくるなよ。それでぬいぐるみのあやかしを見逃したらしょうがないからな」
と、話しを聞き、シロタマまで居酒屋に行くことに。ぬいぐるみが問題だってのに、まったく。でも、シロタマたちじゃないけど、確かにその居酒屋も気になるからな。確かめるのは大切だ。
このままぬいぐるみの犯人が普通に見つかり、居酒屋も何も問題がなければ良いんだけど……。
と、この時の俺はそんな風に思っていた。しかしその日の深夜、シロタマがいない時に事件は起きたんだ。




