22話 新たな出会いと危険なあやかし1
「さて、今日からこの町で暮らすのか」
「お客さん! お客さんが住むのは、もう少し向こうだろう? 早く行かないと、引っ越し業者が待ってるんじゃないのか!?」
「今行きますよ! これからここでゆっくり暮らせると思うと嬉しいんだが、どうにも引っ越しってのは慌ただしくて苦手だ。……それにしても、ここにはかなりの数がいるみたいだな。これなら、俺の店もうまくやっていけそうだ。ん?」
「ほら、シロタマ!! 早く帰らないと、じいちゃんの手伝いがあるんだから。それにあんまり遅く帰ると、今買ったおやつを食べられなくなるぞ。ちゃんとおやつの時間を決めておいたろ。じゃないとお前、夕飯を抜かしておやつばかり食べるんだから」
『にゃあっ!!』
『文句を言われたって、時間は変えないからな。14時から16時の間におやつは食べること。ほら、急いで帰れば間に合うから。せっかくかった大福、一緒に食べよう』
『にゃっ!!』
「……へぇ。あれだけ仲良くしてるのを見るのは久しぶりだな。小さな街だし、また会えるかもしれない。その時は、声でもかけてみるか。……それか俺の敵になるか」
「お客さん!! 早く行きますよ!!」
「分かってるって!! ……まぁ、近いうちに分かるだろう」
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「はぁ、疲れた。お前がいつまでも、おやつを選んでるからだぞ」
『仕方ないだろう。どれも美味しそうだったんだから。久しぶりにお前と2人だけで過ごせんだ。美味しいおやつを選ばなくては』
「だからって悩みすぎだよ。まったく、それで時間を使ってたら、2人で過ごす時間も減るんだぞ?」
『ハッ!? そうか!!』
「はぁ。俺はお茶を淹れてくるから、おやつを用意しておいてくれ」
すぐに台所へ行き、お茶とジュース、それにコップを持って戻る。戻ってくるとシロタマは、小皿に大福をきれいに並べてくれていた。そして俺がジュースを注いでやれば、久しぶりの2人だけのおやつの時間の始まりだ。
あまりにみんなが遊びに来るものだから、シロタマが怒って、週に3日は俺とシロタマだけの日、って決めたんだよ、まあ、ぬいぐるみの修復依頼があるときは例外だけど。だから今日は、ほんとうに久しぶりの、2人だけの時間なんだ。
『それで、何を買うって?』
「小さな冷蔵庫を買おうと思っててさ」
『小さな?』
「そう。1階にある大きな冷蔵庫じゃなくて、ちょっとした物を冷やすようの小さな冷蔵庫だよ。そうだな、大きな段ボールの半分くらいのサイズかな」
『ずいぶん小さいな』
「小さくて良いんだよ。ほら、今みたいに、毎回下の冷蔵庫から持ってくるのは面倒だろう? 俺とお前の飲み物と食べ物を入れられれば良いからさ。例えば、暑い中シロタマが帰ってきても、すぐに冷たい飲み物を用意してやれるぞ」
『そんな物買ったら、他の奴らが使わせろって言いそうだな』
「それは使わせないようにするさ。俺とお前の専用なんだから、触ったら出入り禁止にするぞとか言ってな」
『うむ、俺とお前の専用か。……なかなか良いな』
シロタマが、嬉しそうにしっぽに先を小刻みに震わせながら、大福を頬張る。俺はそんなシロタマを見ながら、1人に2つずつ買ってきた大福の1つを半分にして、シロタマのお皿に乗せてやった。すると、さらにしっぽを振るわせて、ゴロゴロ鳴いたシロタマ。
良いな、こういうの。最近本当に忙しかったからな。たまにはこれくらいゆっくりする日があったって良い。俺もシロタマと過ごせて嬉しいし。みんなに言ってくれたシロタマには感謝だな。
こうしてその日、1日中ゆっくり過ごし俺たちは。次の日も休みで誰も来ないってことで、またまたのんびりし。久しぶりに、静かな時間を満喫したんだ。だけど……。
まさかその後、あんな事態になるなんて。そして、あやかしに関わる新たな出会いがあるなんて、思ってもいなかった。
それは3日後、ピヨ太たちによってもたらされたんだ。




