20話 ふたりでひとつの贈りもの4
「そうそう、その調子。そこをこう持つと、もっと縫いやすいよ」
「わぁ、本当だ!! お兄ちゃん凄いねぇ!!」
「ははっ、俺も教えてもらったばっかりなんだよ」
「お兄ちゃんも?」
「うん。先生にこの前習ったんだ。俺もまだまだ勉強中なんだよ」
「そっか! お兄ちゃん、僕と一緒だね!」
まだか? まだ見つからないのか? 俺は今、健斗くんと一緒に、健人くんがピョコとクルリにプレゼントして、でも2人が壊してしまったぬいぐるみを修復しながら。ピョコとクルリを探しに行った、シロタマ達を待っている。
まさかのまさかで、ピョコとクルリの友達の健斗くんが、ぬいぐるみを修復をして欲しいって尋ねてくるなんて、思いもしていなかった。しかも何故かじいちゃん達にじゃなくて、俺に頼みにきて。
何で俺を知っているのか聞いたよ。あやかしや動物たちには、俺の話しは出回っているけれど、人の方では別に俺の宣伝なんてしていなかったからさ。
すると、商店街を歩いている時、路地に集まっている人達がいて。その人たちが、シロタマのぬいぐるみを修復した、ピヨ太の友達のぬいぐるみを修復した。サブロウじいちゃんのぬいぐるみは、みんなで修復したとらしい、なんて話していたらしく。
それから、今度俺に修復を頼もうと思っている、とも言っていたようで。それで俺の事を知ったらしい。
それ、絶対人に変身してるあやかしだよな? まったく人に聞かれそうな場所で、話しをするなよ。今度みんなに、気をつけるように言わないと。なんて思った俺。
だけどまぁ、今回はせっかく俺を訪ねてきてくれたんだから、ぬいぐるみを修復する事に。そうしてぬいぐるみを見せて貰えば、健人くんは小学4年生なんだけど、かなりの腕前なのが分かったから、一緒に修復する事にしたんだ。
そして修復を進めながら、今回の話しをそれとなく聞いてみると、健斗くんの気持ちと、どうやらピョコたちがある勘違いをしていることが分かり。だから話しを聞いてもらおうと、急いでシロタマたちに、2人を探しに行ってもらったんだ。
だけどまだ、シロタマたちは帰って来ていない。早くしてくれ。大切な話しを2人がいない時にされたら。俺や隠れて様子を見ているみんなが、後で2人話しても良いけど。ここはしっかり本人の言葉を聞いた方が良いと思うんだよ。
少し焦って来た俺。隣でニコニコしながら修復する健斗君。と、また30分程経った時だった。窓の方からコツンと音がして、そっちを見てみれば。うんうん頷いているピヨ太たちの姿が。
間に合ったか!! ピョコたちを連れて来てもらったら、俺の部屋に接している、隣の押入れから、話しを聞いてもらう事になっていたから。俺はすぐに話しを始めた。
「それで健斗君は、このぬいぐるみをもう1度、大切なお友達にプレゼントしたいんだね」
「うん!! 2匹が壊して逃げちゃってから、ずっと遊びに来てくれないんだ。きっと僕が怒ってると思ってるんだよ。遊んでて壊れちゃったなら仕方ないのにね。だから直して、また2匹にあげれば、また遊びに来てくれると思うんだ」
「健斗君は、その2匹のことが大好きなんだね」
「うん!! 僕の大切な大好きなお友達だよ!!」
「そうか。大切で大好きなお友達か。それを聞いたらきっと2匹は喜ぶよ」
「僕ね、早く2人と遊びたいんだ。あのね、僕もうすぐお引越しするの。あ、でも、今度はすぐに戻ってくるんだよ。1年で戻ってくるの。でも、その間遊べないから、今いっぱい遊んでおきたいんだ」
「そっかぁ、俺と同じだな。俺もよく引っ越ししてたんだ」
「お兄ちゃんも!! これも同じだね!! でもさ、それなのに、遊びに来てくれないんだもん。だから早くぬいぐるみを直して、また遊ぼうと思ったの」
「なるほど。じゃあ頑張って修復しないとね」
「うん!!」
俺はここで、今回のぬいぐるみの真実を知るための質問をする事にした。たぶんそうだと思うんだけど……。
「ところで健斗君。お友達はキツネとタヌキなんだろう? 何でタヌキのぬいぐるみを作ったんだ? キツネじゃないのは何で?」
「えー、違うよ! これはタヌキじゃないよ。あっ、違った。タヌキだけどタヌキじゃないの。これはタヌキとキツネの合体ぬいぐるみなの!」
やっぱり!!
「耳と顔の膨らみはタヌキで、鼻としっぽがキツネ。手の先がタヌキで足の先がキツネだよ。2匹はいつも一緒でね、合体した1つのぬいぐるみを作ったら、2匹はこれからお友達でいられると思ったんだ。それに合体カッコいいもん!!」
やっぱりなぁ。たぶんピョコたちは、ぬいぐるみを正面からしかちゃんと見ていなかったんだろう。正面からだとクルリの部分が多く見えるから、たぬきのぬいぐるみだと思い込んでしまって。
そのあともちゃんと確認することなく、結局そのまま気づかずに過ごしてしまったんだ。まったく、ちゃんと見ていれば分かったはずなのに。
「じゃあさ、この毛の色は? タヌキっぽいけど」
「ちゃんと見て。ほら、2色の毛なんだよ。2匹の毛の色、2つが混ざってるの。似ている色見つけるの大変だったんだ」
……すみません。それは気づいてませんでした。よく毛を調べてみる。すると健斗君が言った通り、毛の色が2色だった。しかも2人の毛色そっくりの。なるほど、ピョコの方の毛色が薄いから、クルリの毛色が目立って見えちゃったのか。
凄いな、合体ぬいぐるみ。俺、こんな合体ぬいぐるみ作ったことないよ。健人君、よく思いついたな。
「2匹の合体、カッコいいでしょう!?」
「ああ、カッコいいね。凄いよ、俺でもこんなカッコいい合体のぬいぐるみ、そう作れない」
「えへへへへ」
「こんなにカッコいいぬいぐるみ、俺にできる限りで修復するからな。健斗君も頑張れ。それで2匹に届けて、また一緒に遊ばないとな」
「うん!!」
こうして俺たちは、その後もぬいぐるみの修復を続けて。夕方、健斗君は次の修復の約束をして帰って行った。
それから俺は、隣の部屋にいたクルリとピョコを呼んだよ。
「話しは聞いていたな? 健斗君の気持ちと、ぬいぐるみの本当の真実が分かっただろう? 健斗君は、どっちかだけが好きなわけじゃない。2人のことが大好きなんだよ。俺もどうやって謝るか考えるから、ちゃんと健斗君に謝ろう」
『……』
『……』




