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第9話 最強の魔法少女!

「あちぃーーー。」


扇風機を勢いよく稼働させ、自らの手で団扇で仰ぐ。愛は夏の暑さで溶けていくような体勢で、窓際に倒れ込んでいた。


「なんで夏って暑いんかなぁー。もう無理…」


「全く、何やってんのよ。」


人の声がし、首だけ動かして振り返ると凛が立っていた。


「凛ちゃん!今日の部活どうしたの?」

「今日は休み!こんな暑い日にクーラーもつけずに…水分は?」


実の母より母親らしい性格の凛にはいつも助けられている。例年通りの会話であった。


「お母さん病院だからその間くらい扇風機で乗り越えようと…でも暑いよお…」


「そりゃそうよ、夏だもの。熱中症なる前に、ほら。」


凛に渡されたキンキンに冷えたジュースを一気に飲み干す。


「プハァー!夏は冷たいものに限りますな!」

「夏バテになるわよ。それはともかく、暇かなっと思って誘いにきたんだけど。」 


凛の誘いの内容を確認せず愛は「暑くて動けない〜」と再度体の力を抜いて横たわる。


「そう、一駅離れてるけどグルメフェスしてるから誘ったんだけど、いいわ、またね」


立ち去ろうとする凛の手を掴み「お供させてください!」と懇願する愛であった。


ーーーーーーーーーー

以前凛が県大会に出場したドームの横に広場がある。

そこの広場では季節ごとにイベントが開催されている。2人も何度も足を運んでいる場所である。


「今日はグッドグルメフェスなんですね!凛様!」

「そうよって…その呼び方やめてくれない?」

「さあさあ!何から行きますか!」

「そうねぇ…」


パンフレットを見ながら悩んだ。


「まずはお肉から!」

「さっすが凛様!」


並びに行くと吹雪、詩依、仁菜の3人がいた。


「みんなー!やっほー!」

「あら、暑いのに元気ね。」

「さっきまで部屋で死んでましたよ…」

(めぐ)らしいなぁ〜!寝てばっかりじゃ体力無くなるで!」

「こ、こんにちは!ここ食べました?美味しいですよ!」


いちご飴を食べながら、いつもより食い気味に話しかけてくる仁菜に詩依と吹雪は顔を合わせて笑う。


「うちらついさっききて、数店舗回ったとこなんや。まだまだ巡るんやけど時間合えば帰ろうな!」

「はーい!またねぇ〜。」


愛と凛は何店舗か巡りイートインスペースで食べることとなった。


「はぁ〜ん!美味しそう!フルーツいっぱいのかき氷にたこ焼き!ポテト添えのカットステーキにかき揚げの乗ったおうどん!更にはナン付きカレー!」


「こんなにいっぺんに買って食べれるの?」

「もちのろん!ぺろっといっちゃうよ〜!」


いただきます!と挨拶すると愛は机の上の食事をみるみる平らげていく。


「美味しそうに食べるわね。」


いつもと変わらず元気な愛を見て凛は笑う。


愛が3品目を食べ終わる頃に警報が鳴り始める。


「うそ?!こんな時に?」

「あと数分待ってよぉ〜!」


建物か何かの壊れる音と弾けるような音が聞こえる。


「近づいてるわ、食べるのは後にして、変身するよ!」


口の中に詰め込んだ愛も立ち上がった。

「わはっは!ふぇ〜んしーん!」


2人は魔法少女に変身した。


「もー!こうなったらちゃっちゃとやっつけちゃうよ!」


物音の激しい方向へ急ぐ。


ーギャオオオオオオ

怪物の叫ぶ声がする。中には人間の悲鳴も聞こえる。


「急ぐわよ!逃げ遅れてる人がいるみたい!」 


怪物を見つけ愛が蹴る。

「とぉぉぉーー!」


怪物はよろけて反対側に倒れ込む。

「さあ!今のうちに!」


逃げ遅れた数人の大人に避難を急かした。


ー ちっ。もっと早くこいよ。


「え?」


愛は振り返った。誰が言ったかはわからないが…


「愛!」


呟きに気を取られ怪物に飛ばされるも体勢を整え壁への衝撃は軽減される。


怪物は凛の銃弾に翻弄される。


すると3人もどこからか変身してかけつけた。


「ご、ごめんなさい!遅くなりました…」

「今日フェスでたくさん人がいて避難に時間がかかってしまったわ。」

「ほなうちらも参戦するで!」


すると遠くから何かが崩れる音と警報が響く。


ー…繰り返します…まだの方は近くの…所へ至急避……さい。今回…が3……繰り…


「まさか…あっちにも怪物が?」

「うちらはあっち見にいこう!ここは頼むで!」

「おっけ!任せて!」


ーギャオオオオオオオ

凛の狙撃により思い通りに動けないことに激怒したのか、怪物が液体を吐き出した。


液体は酸っぱいような臭いを放ち、かかった建物を溶かした。


「まさか…酸なの?!」


銃弾で液体を撃つと破裂し、周辺に飛び散る。

飛び立ったところがみるみる溶けていく。


「これじゃあ私の武器でも切ることしかできないから…意味ないじゃん!!」


怪物は空にめがけて5発の液砲を吐き出した。


「えっやばっ!」


その一つが愛の真上に落ちてくる。


「あひゃぁー!」


なんとか躱わすも先のブロックでつまづいてしまう。


「こりゃ絶体絶命…?!」


凛が怪物にめがけて命中させると体が二つに別れるが、ぽよぽよ跳ねてくっつき再生してしまう。


「まさか…体も液体でできてるの…嘘でしょ。」


愛は体勢を立て直そうとするも怪物は液体を吐き出す。


その液体を凛が銃で破裂させる。


「愛!逃げて!物理攻撃が効かない!」


一時撤退しようとした先に、男の子と女の子がいた。


兄弟なのか、お兄ちゃんと思われる子が一生懸命妹を抱きしめていた。


後ろから液体が迫ってきている。凛が撃ってもなんとかかわしても、液体は破裂して彼らにかかってしまう。

愛は迷わずその場に立ち止まった。


「愛!」


ストーンから大鎌を出し、回す。


「なんとか止まれぇぇー!」


寸前で鎌による風圧により液体がふよふよと浮いて止まった。


「このままどーにかなってとんでけぇーー!」


誰もいない方角へなんとか液体を飛ばす。落ちた先は抉れるように一面溶けてしまう。


「あ、危なかった…」

2人の子供は会釈し、急いで逃げた。


「愛!あいつの体液体でできててこのままじゃ無理…。」

「よし!吹雪さんのような必殺技を使うしかないね!」

「それってそんな考えてできるものなの?」

「あ、やっぱ無理かな?それなら私にできることをするだけだ!」


愛の適当な返事に凛は疑うも今は打開策がない。


「あんたに任せるしかないわね。それと、あの怪物、撃った時によくわからなかったけど黒く光る丸い玉?みたいなのがあったわよ。」


「それって漫画とかである敵の弱点なんじゃない?!」


ぐぬぬぬと愛は考え込み閃く。


「切り刻んで核を壊せばいいんだ!」

「でも見間違いかもしれないし、そもそも弱点じゃないかも知らないわよ。あの液体に触れたらあんたの体…」


「わからないならやってみればいい!大丈夫!私たちでこの街を救おう!」


愛は鎌に力を込める。


凛は瓦礫を持ち力を込める。

「わかったわ。道は私が作る!」


怪物が再度液体を直線に吐き出す。

愛と凛はかわしつつ怪物に近づく。

ハッと見上げると上からも液体が降ってくる。


凛は見逃さず撃つ。細かくなるまで撃つも量が多く弾切れとなる。


「補充…無理…なら!」


背中で愛を庇う。


「凛ちゃん!」 


「あぁぁぁぁぁっ!!」

ジュウっと肌や服の焦げる音がする。


凛は痛みをこらえ愛に伝える。


「愛!今よ!」


「塵になるまで切り刻まれろ!スーパーラッシュスライサー!!」


激しく大鎌を振い怪物の体を細かくする。小さなスライムのようになっていく。再生しようとする怪物より早く刻み、遂に核が現れる。


「そこかぁーー!」


愛が力強く核めがけて大鎌を振るう。核がパキッと割れバラバラになり、怪物ごと煙となり消えた。


「あの形って…あ、凛ちゃん!」


駆け寄ると凛の背中と右足が火傷のように皮膚が真っ赤に爛れている。


「愛、やったね。必殺技、名前ほんのちょっとはマシになったね。」


「いっぱい漫画読んだから…早く冷やさなきゃ!誰か!」


避難所からいち早く帰ってきた住人は愛と凛を睨みつけるように立っていた。


ー なんでここまでボロボロに

ー もっと早くきてくれれば被害は少なかったのに

ー ヒーローなら圧勝しろよ

ー 私の家が…ローンどうしてくれるんだよ


「え…」


ハッキリと言われないが口々に呟かれてるのがわかった。


「愛、ひとまず早く3人に合流しましょう。」

「で、でも!傷が…」


「私なら大丈夫、戦闘服ってすごいのね、服が先に溶けたからそこまで痛くないの。途中で水道見つけたらいいから。」


愛は右足をやや引きずる凛に肩を貸して3人を追いかけた。


向かうと3人は怪物を倒したところだった。


「手強いけどうちらの敵じゃなかったわな!」

「あら、そっちの方が早かったわね…っ!!」


「凛さん!!その傷どうしたんですか!は、早く手当を!」


慌てた仁菜と吹雪が治療に取り掛かる。


「私のせいで…ごめんね…」


「誰も悪くないわ。強いて言うなら私たちも加勢して倒してから次に行くべきだったわ。」


「でも…被害を抑えるには!」


「命を失ってからじゃ遅いのよ。」


吹雪の言葉に愛は言い返す言葉が見つからなかった。


「そこまで深くない火傷のようですね…でもしっかり休んでくださいね…範囲が広いですから…」


「仁菜ちゃんありがとう、私の危機管理能力が低下してたわね。」


「なーに、これくらいの傷くらいすーぐ治るやろ!まあ!お大事にな!吹雪…どないしたんや?」


吹雪は考えていた。

「避難放送で怪物が複数体出現したって言ってたの。確か3だったような…」

「そ、そういえば…私たちと愛さんたちで2…」


瞬間、吹雪の体の中央を怪物が喰らいついた。


「ーグフッ!…ガハッ…」


口から血を吐いた吹雪は、そのまま体を二つに割けられ鈍い音と共に地面に落ちた。


「ふ、吹雪!!」

「お、お姉ちゃん離れるよ!」


4人はなんとか怪物から距離をとった。


怪物は、黒い触手のような手を動かしながら吹雪を掴み、グチャグチャと咀嚼音を出しながら喰らった。


「吹雪ぃー!!貴様ーー!」


襲い掛かろうとするも触手に叩き落とされる。


「ガぁ……ぅ…く…そ…」


立ちあがろうとする詩依を触手は掴み、吹雪同様食べようとする。


「お姉ちゃん!!」


その瞬間、何かが触手に当たり触手ごと詩依は床に落ちた。


ー「死ね。」


オレンジ色の衣を纏った少女は目にも止まらない速さで両手を動かし、怪物を切り刻んだ。


ーグギャァァァァァ


少女の着地と同時に怪物は爆散。


「ふ、吹雪…なんでや…なんで…」

「吹雪さん…」


詩依を筆頭に泣いているとミュータが現れた。


「やぁ、間に合ったようだね。」

「何がや!何も間に合って…」

「君たちあのままじゃ怪物にやられてたよ。あまりにも来るのが遅いから彼女を僕が探してきたんだよ。」


ミュータ紹介のもと、先ほど現れた少女を見た。


丸くなっている刀を2つ携えた少女だが、衣は部分的にしか出現してない。


「見ての通り、彼女は部分変身しかできないけど立派な魔法少女なんだ。忘れっぽいのが致命的だけど強さは今見ただろ?歴代最強とも匹敵するほどの実力を持った魔法少女なんだ。」


ふらふらな足取りで詩依は現れた魔法少女の元まで行き、胸ぐらを掴む。


「なんで…なんでもっとはよ来なかったんや!あんたがいたら吹雪は…吹雪は!」


オレンジの少女は小さくため息をつき、詩依と目線を合わせることなく答えた。


「よく知らないけどそこの猫に連れてこられただけ。その先に怪物がいたから切っただけ。よく分からんが誰か死んだならそいつが弱かっただけ。」


「なんやって?!なんやその言い方は…」

殴りかかろうとする詩依を仁菜は止める。


「お姉ちゃん落ち着いて。」


「落ち着いていられるか!吹雪は…吹雪は…ああああぁぁぁぁ!」


詩依はその場で再び泣き崩れてしまった。


「まあそういうことだ、吹雪は敗れてしまったが、これからこの5人でこの街を守ってくれ。」

オレンジの少女は魔法を解くとそのままどこかに向かった。


無言の時間がいつまでも続いた。


貴重なお時間で見てくださりありがとうございます!誤字脱字、コメント等いつでもお待ちしております!

ここが物語の折り返しといったところでしょうか…結果は皆様の想像通りになると思いますがこのままお付き合いくださると非常に嬉しく思います!

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