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第6話 弱虫でも戦うんです!

「ふんふんふーん♪」


三つ編みの少女は登校時間より早めに登校し、学校の花壇に水を撒く。


「お花さん、今日も綺麗に咲いてくださいね。」

「お花好きなんだね!」


ひょこっと愛が顔を出すと仁菜はよろめき、

「ひいいいいぃぃー!」と声を出しながら愛にジョウロで水をかけてしまう。


「ご、ごめん仁菜ちゃん!大丈…」


愛が話し合える前に仁菜は勢いよく謝り始めた。


「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「お、落ち着いて!仁菜ちゃん!」


愛の言葉で仁菜はハッとするも、今度は目に涙を浮かべ始める。


「制服びしょびしょにしちゃいました…小さいかもですが私の服を着てください…」


その場で制服を脱ぎ始めようとする仁菜を愛は全力で止める。


「す、ストップストップ!仁菜ちゃん落ち着いて!確かに濡れたけど汚れてないし、何より暑かったから気持ちいいよ!この時期だから濡れてもすぐに乾くし!」


「愛さんはお優しいんですね…」


仁菜はやっと落ち着く。その様子を見て愛は安堵した。


「ところで仁菜ちゃんは朝早く何してるの?」


「私美化委員なんです!お花のお世話を担当させてもらってて。」


仁菜は花壇の花に視線を落とす。


「お花って時期によって咲く種類違いますし、何よりお花を見ていると心が落ち着くんです。」


花弁に優しく触れる。その時の表情は愛おしいものを見つめるような暖かい表情であった。


「お花ってみんなの心を癒してくれるし笑顔にしてくれると思うんです。言葉がなくても気持ちを届けることができます。」


「へぇ〜仁菜ちゃんはお花が好きなんだね!」


「そ、そんなことないですよ…」


仁菜の声は小さくなるも嬉しかったのか顔を赤らめる。


仁菜は話し合えると、丁寧に枯れた葉や花を取り除いたり、雑草を抜き始める。


「作業が丁寧で速いね!将来お花屋さんになれるね!」


愛がそう伝えると仁菜はえへへと笑い

「将来の夢はお花屋さんで自分の店を持つことなんです。」と夢を教えてくれる。


「仁菜ちゃんならなれるよ!」

2人で笑い合った。


「ところで、愛さんは何してるんですか?登校時間より30分も速いですが…」


愛はガックリと体の力を抜き、

「凛ちゃんにしぼられてたの…」

とやつれた声を出す。


仁菜は「仲良いんですね」と笑った。



ーーーーーーーーーー

この学校を選んだのはお姉ちゃんがいたから。


スタイルも顔も性格も言葉も何もかも違う私とお姉ちゃんはお母さんが違う。

でも私はお母さんを見たことはないけど。


そんな私にもお姉ちゃんは優しかった。私にとってのお母さんだった。


どんなにチグハグ姉妹だって言われてもお姉ちゃんは気にせずずっと自慢の妹だって言ってくれた。


だから私は、お姉ちゃんのために頑張りたい。私を応援してくれるお姉ちゃんのために。


ーーーーーーーーーー

今日の授業が終わる。


帰り支度をしていつもなら3年の教室に向かうが2年のクラスに向かう。


「仁菜ちゃん早いね!朝ぶり!」


愛は仁菜を見つけるとぺこりと頭を下げ、声をかけた。


「愛さん!具合は大丈夫ですか?」


愛はその言葉に握り拳を仁菜に向けられ安堵する。


クラス内をキョロキョロと探すも愛しかいない。


「他の皆さんは?」

「凛ちゃんは部活、吹雪さんは図書委員だってさ!」

そう言い終わると愛は自分のバックを持ち、行こう!と図書館へ向かう。

優しい背中は姉のようであった。


ーーーーーーーーーー

図書館で時間を潰し凛を待つ。

詩依は途中から図書館に合流し、仕事中の吹雪にちょっかいをかけていた。


ーお姉ちゃんが元気そうでよかった。


仁菜はあの日、魔法少女になれず塞ぎ込んだ姉を知っていた。だから前回魔法少女になった姉を見て姉以上に喜びを感じていた。


「仁菜ちゃんも魔法少女なれるかな!」

愛は仁菜に尋ねた。


「わ、私には無理ですよ。度胸も勇気もないし、私では足手纏いだもの。でも…」


言葉を区切って顔を上げた。


「魔法少女になれなくてもなっても、私はお姉ちゃんのために戦いたい。お姉ちゃんのお荷物にはいつまでもなっていられないから」

仁菜はまっすぐな眼差しで姉を見つめた。


凛の部活が終わり5人で下校する。


「みなさん、お待たせしてすみません」


「ほんまやで、みんなで待ってたんやで?感謝してな?」


詩依はニヤニヤと凛にちょっかいを出し、凛は唸るような表情で睨みつける。


「2人は犬猿の仲ね」

吹雪はふふっと笑う。


「あ、そうそう!ここ寄りたいんだ!ちょっと来て来て!」

急に愛は寄り道を始めた。愛の急な行動に振り回されるもいつものことだと皆ついて行くと公園が見えてきた。


「すごく綺麗…」


公園の一面にはたくさんの花が咲いていた。


「でしょ!仁菜ちゃんお花好きって言ってたから!この時期が1番綺麗なんだ!」


「こんなところにこんなところが…」


吹雪も凛も花畑を見て驚く。


「こんな時代によくここまで花が残ってるもんやなぁ。仁菜、綺麗やな?」


詩依は仁菜に声をかけると仁菜は目を輝かせて勢いよく首を縦に何度も振る。


「ほな花冠作ったるわ!」


花を抜こうとするとすごい速さで手を掴まれる。


「お姉ちゃん…こんな綺麗なお花さん達を傷つけてはいけません!!!」


仁菜の花への想いは強いようだった。


ーーーーーーーーーー


花を堪能し終え、再度帰宅路を歩いているとサイレンが鳴り響いた。


「また怪物?今度はどこ?」

「どんな怪物が出てもお姉ちゃんが一撃や」


吹雪がストーンを構える

「気配が強いわ」

すると後ろから大きな水晶を抱えたような怪物が現れる。


「よし!みんないくよ!」

4人は魔法少女へ変身する。


「ほな、いくでー!」

センスを振り回すも怪物はするりとかわす。


交わした先に吹雪の伸びた長棒が突き当たる。


「ナイスや!」


「連携も任せて。」


しかし怪物はさらに下がっていく


「逃さない!」


凛はピストル2丁で迎撃し、一弾が水晶にヒビをつけた。


そのヒビに向かって愛が大釜を振る。

「うりゃーーー!」


ービキッ

ヒビを拡大させられた。


「よし!このままもう一回いくぞー!」


その瞬間、水晶が光り輝いた。


「え?」

仁菜が目を開けると4人は水晶の中に捉えられていた。


「な、なんなのこれ?!」

「どうやって出ればいいの?」

中から武器で叩いているがビクともしないのか。先ほどのヒビも無くなっている。


怪物は動き出す。


「ひっ。」


仁菜は隠れていたためか怪物は見向きもせず進む。


「よかった…でもこの道の先って…」


仁菜は追いかけた。怪物は周りを破壊しながら公園に入って行った。


そして、怪物は水晶のビームを溜めて


草花に照射した。


「ッーーー」

仁菜は絶句した。


さっきまで一面に咲いていた花畑に一筋、地面が剥き出しとなってしまった。


もう一度怪物がビームを出そうとする。


「そんなことしないで!」


仁菜は花が傷つく姿を見ていられず怪物の前に姿を現してしまう。


「仁菜!あかん!逃げな!」


怪物は後ろを振り返り仁菜を見つめる。


仁菜は涙目で怪物の目の前に姿を現したことを激しく後悔した。


「ど、どうしよ…戦いたくない…」


手足が激しく震え動くことがままならない。

怪物は左手のような長い体で仁菜を叩き飛ばした。

「ガハッ」

口から血が出た仁菜は恐怖で目が霞んだ。

「怖いよう…助けて…お姉ちゃ…」


しかし、頼れるお姉ちゃんは水晶の中だ。


「にな!」


姉の声は聞こえないが、口パクで仁菜を呼んでいる気がした。


「にげて!」


仁菜は逃げ出そうとした。4人が無理だったのに自分にはできるはずないと。


逃げ出そうと後ろを振り向いた瞬間、ミュータがいた。


「君は戦わないんだね」


「だって、あんなの無理だもん」


「やってもないのにかい?」


「やり合わなくても私にはむり!みんなみたいに度胸もないし、魔法少女への想いだって無い!」


ミュータは顔色変えずさらに仁菜に言った。


「でも今、戦えるのは君だけだよ?大好きな姉をほって逃げ出すのかい?君はいつも助けられてばかりだね」


「そうだよ!逃げてばかりだよ!でも…それしか…私には…」


仁菜はポロポロと泣いた。勇気のない無力な自分に嫌気がさした。


「そっか、それは失礼したね。嫌なことから逃げてしまおう。僕も戦えないしさ。一緒にこの地一帯が滅ぶところでも見るとしようか。」


ミュータは仁菜に背を向け、来た道を帰り始めた。


「君は僕と一緒さ」


仁菜はその言葉に反応した。


「違う…私はあなたと一緒なんかじゃない。」


ミュータは立ち止まる。


「大好きなこの街が滅んでいくなんて嫌…大好きなお姉ちゃんと2度と会えないなんて嫌…私だって戦えるもん!」


仁菜のストーンが水色に激しく輝く。


「いや、僕と一緒さ。君は弱虫で何も成し遂げれなくて周り頼り。何をするにも誰かから言われないと動けないクズさ。」


仁菜は怪物に向き直す。


「そんなことない…私だってやってやる…お姉ちゃんの妹なんだから!」


ストーンの激しい光に仁菜は包まれる。

次々と衣装が変わり、全体的に水色の、ふわふわとした衣装に変わる。


「仁菜ちゃんが変身した!」

「仁菜…お姉ちゃん信じてるで。」

皆固唾を飲んで見守る。

「私達にもできることを考えましょう。」

吹雪は仁菜や怪物について深く考察し始めた。


仁菜の手足の震えは止まっていたが、今にも逃げ出したい気持ちは変わらなかった。


だが、水晶越しの姉や仲間達からは信頼の視線が突き刺さる。


「うぅ…怖い…けどやらなきゃ。」


姉の見様見真似で武器を取り出した。

片腕サイズのハサミであった。


「ハサミ…普段使い慣れてますけど…近接武器…」


凛のような遠距離武器を期待してただけに涙が出そうであった。


怪物は仁菜に目掛けてビームを撃つ。


間一髪のとこでかわすも仁菜は着地がうまくできずこけてしまう。


「び、ビームは無理です…お姉ちゃんのような盾があれば…」


防御特化でもよかったなと後悔した。


怪物は次々とビームを撃ってくる。

仁菜は体勢を整えてギリギリでかわす。


「近づかないと攻撃できない…」


仁菜は水晶を見ると、吹雪が何やら腕を合わせて上下に開いている。


「ハサミで切るような動作をしている?」


仁菜は唾を飲み込んだ。ビームを切れと言っているようだ。できっこないと思うが今はそれしか方法がない。


「皆さんを信じます!!」


怪物がビームを出すと同時に水晶に駆け出し、ハサミでビームを切り裂く。


「ひ、ひぃーーー!」

目を閉じながらではあるが、綺麗にビームが二つに割れ、みるみる水晶まで近づける。


そしてビームが止まり、ハサミをそのまま水晶に突き刺した。


ーピキッ!


「今よ!」

吹雪がハサミで傷をつけた部分に向けて、長棒を激しく伸ばし、中と外から傷をつけた。そして愛が鎌で切り刻んだ。


ービキッ!!!!パリン!


水晶が粉々に割れ、4人は解放された。

「お姉ちゃん!みなさん!」


吹雪は怪物に向きステッキサイズの長棒を掲げる。


「私のビームもお見舞いしてあげる!

天の星々の力よ、ここに集まれ!スターダストビーム!」


チリチリと輝くビームが怪物を貫き、怪物は消滅する。


「仁菜!ありがとう!詩依さっすがうちの妹!」


呆然と立っている仁菜を詩依は抱きしめた。

仁菜は興奮から落ち着き、泣き出した。


「お、お姉ちゃんー!」


2人の様子を見ていた愛のお腹の音が鳴る。


「お腹すいちゃった…」


「それならこの前出来たアイス屋に行きましょう!」


吹雪の提案に愛と泣いていた仁菜は目を輝かせる。

「アイス!!」


「仁菜は今回1番頑張ったからお姉ちゃんのお金で好きなだけ食べてええよ!」


仁菜は笑顔で答えた

「じゃあ5段にします!」

姉の顔からは笑顔と魂が抜け消えた。


貴重なお時間で見ていただきありがとうございます!

誤字脱字、ご感想等いつでもお待ちしております!

起承転結の起が終わったところでしょうか。魔法少女たちは幸せになれるのでしょうか…幸せとはなんでしょうか…乞うご期待ください!

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