第3話 凛として挑む!
凛の体は眩い光で包まれる。
その間強く願った。ー愛をサポートしたい、と。
足元からくすぐったい風で包み込まれていく。
紫を基調とした衣装を身に纏うと光が消失。
「紫か…」
派手な色でないことに安堵した。
愛よりやや短めのスカートだが右目にメガネのようなものが付いている。集中すると視界がアップされ遠くのものがよく見える。
白猫は語る。
「そのストーンは君の気持ちに応えるもの。願えばそれが力になる。そのストーンには君の力になるであろう武器や力が込められている。」
「あんたは何者なの?」
白猫は怪物のいる方角に向きぽつり、
「僕はしがない案内猫さ。」
とぶっきらぼうに言い放つ。それ以上白猫が語ることはなかった。
凛は胸元に手を当てると武器が出てきた。
ライフル銃に似た長い銃であった。
「銃刀法違反で捕まるんですけど。」
「この世界は魔法少女に寛大さ。」
猫は耳がいいようだ。
しかし、ライフルに弾が装填されていない。
「弾は君が作り出すのさ。言っただろう?気持ちが力になるって。」
凛は首を捻るもそばにあった瓦礫を手に持ち、弾になるよう祈ると紫色の銃弾に変わる。
「魔法って便利ね。」
弾を装填した銃を教室の窓から怪物に向け、照準を合わせる。
引き金を引くと体が後ろにのけ反るもヒット。
怪物は片羽を庇うようにゆらゆらと落ちていく。
凛はその様子を見て教室から飛び降りる。
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グオオオオオオオ!
突如現れた光に撃たれたのか怪物はふらふらとグラウンドに降りてきた。
「あれ?私何かしちゃったかな?!」
「いや、光はあそこの教室から…」
冷静な米川の指した教室から紫の塊がこちらに向けて飛んでくる。
2人にぶつかる寸前でピタッと立ち止まる。
目の前には紫色の魔法少女が立っていた。
「愛、大丈夫?」
「もしかして…凛ちゃん?!」
凛が頷くと、驚いたままの愛は凛の周りをぐるぐると回る。
「めちゃくちゃ可愛いじゃん!!そして強いじゃん!何したの?ビーム?」
「まさか、これよ」
胸元のストーンから銃を取り出す。
「やばー!でも助かった!ありがとう!」
「でもまだ倒しきれてないわ、油断は禁物よ。」
3人は再び飛ぼうとする怪物に向き直る。
「あいつ飛んでて私達の武器じゃ攻撃当たらなくて…」
愛が俯くと凛が
「撃ち落とすのは任せて」
と、凛はクラウチングスタートで怪物に向かい駆けていく。
「は、速いわね。」
「凛ちゃんは中学陸上で短距離県一位、高校で全国2位になったすごい子なんですよ!」
愛はえっへんと自慢げに腰に手を当てる。
そんな会話を尻目に凛はあっという間に怪物を追い抜き背後に回る。
胸元から拳銃を1丁取り出した。
弾は先ほど教室で手に入れていた瓦礫の残りだ。
構えて怪物の背中に目掛けて引き金を引く。
先ほどとは逆サイドの羽に当たり再度怪物はグオオオオオオオ!と喚く。
銃の扱いにはだいぶ慣れ、のけ反りも対応できるようになった。
「意外とコツが掴みやすいのね」
凛の方に向き直り襲ってこようとするも凛の速さにはついていけず徐々に体力消耗からかスピードが落ちてくる。
「愛!今よ!」
凛の合図と共に愛が怪物に向かって走る。
怪物は近くに誘導されていたことに気づいておらず凛の合図により愛に向き直ろうとする。
「おりゃーーー!」
大鎌に力を込めるとストーンと大鎌がピンクに輝く。
「魔法少女スラッシュ!!」
そのまま怪物を真っ二つにし、砂となり消失する。
「え、うそ、ダサ。」
昔からのネーミングセンスの無さに凛は苦笑した。
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怪物撃退後、3人は集結した。
「凛ちゃーん!ありがとう!私の最愛の親友よ!」
愛は凛に抱きつく。
やれやれと凛はため息つきながら愛の頭をぐしゃぐしゃにし、「本当に魔法少女なんだね」と笑う。
「まさか凛ちゃん!朝の信じてなかったの?!」
「そりゃ…ねぇ…」目線を逸らす。
愛はムキーと地団駄を踏む。
その様子を見て米川は微笑む。
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短髪の少女はグランドの3人を見つめる。
「ありゃりゃ?あれは…ははーん。なーるほどぉ。」
ニヤッと口角をあげた。
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愛と凛は緊張が解けると脱力感が襲ってきてその場にしゃがみ込んだ。
「体が…怠いような力が入らないような…」
「初めはそんなものよ」
米川が2人の肩を支える。
怪物襲撃後、教師が慌ただしく生徒や建物をチェックした。怪我をしているものや中には命を失っている者もいた。
「全員…助けられなかった…」
愛はその事実にショックを受けていたが、米川はよく頑張っていたと愛を慰めた。
明日の放課後に、米川から魔法少女について話を聞くと約束し帰路についた。
愛も凛もふらふらでありほとんど会話なく別れた。
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次の日の放課後
凛と愛の教室に米川がやってきた。
「ひとまず、2人ともありがとう。」
米川は頭を下げお礼を言った。
「私の知っている限りのことを2人に伝えるわ。今この辺りは魔法少女は私だけなの。」
先日まで魔法少女は3人いたそうだが、今は米川1人でこの辺り一帯の怪物を倒していたとのこと。
「もうすぐ別地区の魔法少女が応援に来る予定なんだけど…その人、気まぐれらしくて、予定より遅れてるのよ…」
米川は手を頬に当てため息をつく。
魔法少女はグリスター研究所で管轄されており、派遣場所など指定し街を守っているとのこと。
また、幼い少女達は魔法少女候補生として日々訓練に明け暮れているとのこと。
愛は勢いよく手をあげ質問する。
「はいっ!私は魔法少女だーって伝えもいいんですか?」
「うーん、絶対言うなとか規制は言われてないわ。関係者以外に研究所の詳しいことは言うなとは言われてるけど。」
愛はそれなら!とウズウズしているが、米川は続けて言った。
「でも、魔法少女って羨ましがられるだけじゃないの。私達は本気で戦ってもそうは受け取ってくれない人も多いのが実情。だから、魔法少女達は自分自身を守るという点でも言わないことが多いわ。」
愛は昨日のことを思い出し顔を俯ける。
「魔法少女ということで弱みを握られることもあるのよ。」
そう言い終わると同時に
「こんな風に、やな?」
と教室の前から声がする。
振り返るとそこには腰に黄緑色のカーディガンをくくりつけた短髪の少女が教卓に座っていた。
「不用心やな〜、うちが入っても会話に集中しすぎて気づいてないやん、ね、吹雪さん?」
「詩依…いつからそこに…」
3人のところに詩依は近づく。
「初めまして、うちは秋定詩依って言うんや、よろしくな!」
握手を求められ愛は自己紹介しながら握手する。
すると同時に体が宙に浮く。
「あわわわわ!」
抵抗できず愛は華麗に一回転後床に座り込む。
その様子を詩依はお笑いでも見たかのように腹を抱えて笑う。
「ちょっと何するんですか!」
「君は、凛ちゃんやな、全国2位って学校にデカデカと書かれとる子や!そんな華奢やのにどこにそんなエネルギーあるんかいなぁ〜」
そう詩依は言いながら凛に近づき足元から興味深そうに観察する。
「なーに、愛ちゃんは油断しすぎなんや。誰が敵かなんてわからんのに易々と手を差し伸べるなんてアホちゃうの?そんな子が魔法少女なんて…100年早いわ」
詩依は鼻で笑う。
その様子を見て米川はため息をつく。
「なんですって?愛は誰がどう見てもアホだけど、魔法少女への気持ちは誰よりも強いんだから!」
凛は強く言い返す。
愛は床に座ったまま「アホ?!」と驚いているが詩依と凛は気にしてない様子。
米川が間に入ろうとした時、
「もぉ〜ダメですよぉ〜!」
との声と同時に詩依が後ろにグイッと引かれる。
「お、お姉ちゃん!初対面の人にそんな態度いけません!仲良くして!」
お姉ちゃんと呼んだ髪を一つに三つ編みでまとめている小柄な少女は目を潤ませながら詩依に説教をする。
そして3人に向き、
「お姉ちゃんが大変失礼なことをしました…本当にごめんなさい。」
と泣きそうになりながら謝る。
「お姉ちゃん?」
愛が尋ねると、小柄な少女は酷く怯え再度頭を深々と下げる。
「す、すみません!私は秋定仁菜と言います!突然すみません。」
ペコペコと謝る姿を見て凛と愛は狼狽えてしまう。
「にーな、どないしたん?先帰ってええんやで?」
そう仁菜を撫でながら詩依が言うと、仁菜の表情は怒りに変わる。
「お姉ちゃん!最近怪物の出現率が増えてて、私と帰ろうって昨日誘ってくれたのに!ついでにクレープ奢ってくれるって言ってくれたじゃないですか!!!!」
詩依を両手でポカポカと殴る。
ダメージはないだろうが詩依は笑いながら謝る。
「せやったな、ごめんごめん、ほな一緒に帰ろうか!お姉ちゃんを待てて偉いでちゅね〜」
「子供扱いしないでください〜!」
そう言うと2人は教室を出る。
「ちょっと詩依!」
米川が声をかけるも詩依は前を向いたまま手をひらひらとさせ、「またね」と合図を送ってくる。
「あの人はなんなんですか?」
凛の質問に米川はため息をつきながら
「詩依は私と同じ施設で訓練を受けてた子なの。私と同い年で息もピッタリと言われるほどのコンビだったの。でも…」
米川は窓の外を眺めながら続ける。
「彼女はストーンに選ばれなかった。」
貴重なお時間で第3話見てくださりありがとうございます。次回は2人の過去が明らかになる予定です!定番ですね!