第2話 幼馴染のために!
魔法少女になってから数日後、愛は学校に登校した。
靴を履き替えようと靴箱に向かうと愛を呼ぶ声がした。
「おはよ!体調どう?それと…私のせいでごめんね」
朝練だったのか練習着姿の凛が話しかけてくる。
「元気元気!あの日私もさっさと帰ってたらよかっただけだよ…でも前々日に会って話してたし!ありがとね!」
両腕をムキッとさせてみせるが凛はそれでも暗い顔のままだ。無理もない、幼馴染の彼女も祖母にはお世話になっていたのだから。
「あんたとは幼馴染なんだから思ったこととか何かあったら教えて。朝練もう終わりだから一緒に教室行こう、待ってて」
彼女はくるっと体を翻し部室に戻る。
いい親友を持ったものだと愛の心は温かくなった。
退院後母親の迎えがあり、そのまま祖母の葬式に出席した。
凛とはそこで会うもお互いたくさん泣いており話は全くできなかった。
そのため、あの日白猫を迎えに行って何があったのか説明する必要があった。
凛は詰め寄ってくるため素直に何があったか伝えた。しかし、やはり信じてもらえず凛は
「はぁ?本当のことをはっきり教えて!」
と尋問のように詰め寄り続けた。
愛はたじろぐも嬉しく感じていた。
その時
長い髪との生徒とすれ違った。
振り返ると病室で会った女性だった。
「愛?どうしたの?」
凛も振り返り
「米川先輩がどうしたの?」
と尋ねる。
愛は首を捻り頭にハテナを浮かべる。
それを感じ取った凛は愛に説明する。
「米川吹雪先輩、スタイルも良くてバスケ部でキャプテンをしていた人。成績も優秀で外国の大学に進学するかもって噂があるくらい天才なの。先生方もすごく期待してるみたいね。まあここまで頭のいい人はなかなかいないものね。」
さすが学級委員であり教師からの信頼も厚いだけあって様々な情報を持っている。
「でも、急に米川先輩がどうしたの?」
自分が魔法少女になったことは伝えたが、他人のことはどうしたらいいだろうか?
唸り声をあげながら悩む愛を見て、凛はまーいいやと諦める。頭をぐしゃぐしゃと撫で教室に向かう。その姿を愛が追いかける。
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何事もなく授業が終わり、ぼーっと窓の外を眺めていると凛は話しかけてくる。
「大丈夫?私これから部活だけど…」
「ああ!凛ちゃん!頑張って!教室から応援してるねー!」
凛は手を振り部室へ向かう。
部活が終わるまでの時間、何をして時間を潰そうか考え机に目を落とすと、机の上に大量のプリントや教科書が開かれていた。
片付けしていると再度教室の扉が開く。
「凛ちゃんどうしたの…」
振り返ると米川が立っていた。
「ごめんなさい、凛ちゃんじゃなくて」
ふふっと笑う米川に慌てて言い訳をする。
「その、さっきまで凛ちゃんがいて、よく戻ってきたりしてて、まさか米川先輩が来てくれるなんて思ってなくて…」
あわわあわわと混乱している愛に、
「名前、知ってたの?」
と不思議そうに首を傾げる。
「あ、凛ちゃんから聞いたんです!大学は外国に行くんですか?!」
「うーん、どうだろ、もうすぐなのに決めきれてなくて。ただ、私には任務があるからそっち専念しようかなって。」
米川は口元に指を置いて悩む。
「任務…?あ!魔法しょっ!ハッ!」
咄嗟に口を手で覆う。米川はやれやれと言うかの如くふふふと笑う。
「あ、私、時畑愛といいます!愛と書いてめぐです!」
自己紹介を今更ながら行う。
米川はどうやら先日なぜあそこにいて、どうして魔法少女になったのか尋ねるために教室に訪れたようだった。
愛は捨て猫を怪物から守るためにあの場におり、白猫の力により変身できたことを伝えた。
「そう、あなたは施設の者ではないのね」
「施設?そんなものがあるんですか??」
米川の細い目がやや見開いた気がした。
「あなた魔法少女になりたいのにグリスター研究所を知らないの?そこでは魔法少女候補生が日々訓練を受けてるの。現役の魔法少女のほとんどがそこの施設の子で、私もそこ出身なの。」
魔法少女になりたいと幼き日から思っていたがまさかそんなものが存在していたなんて。
ショックで項垂れる姿に米川はふふっと笑う。
「それで…白猫ちゃんやストーンはどこ?」
愛はやっと気づいた。ストーンも猫もいないことに。
急いでポケットやカバンを覗くも何もない。
「どーーしよーー!」
頭を抱える愛に「あらあら」と米川は眺める。
するとけたたましいサイレンが鳴り響く。
「今?!」
愛は再度ストーンを探す。
米川はヘアピンのストーンに手を当てて光に包まれ、赤い魔法少女となる。
「先に行ってるわね」と言うと、ステッキに跨り怪物を探しに行く。
「どーしよーーー!」
愛は頭を抱え大きく叫んだが虚しく声が響くだけであった。
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けたたましいサイレン音が鳴り、凛達部活勢は急いで学校内のシェルターへ急ぐ。
ふと自分のクラスを覗くと両手を頭に置くシルエットが見える。
「まさか…愛?!具合悪いの?!」
凛は悩むことなく教室へ向かう。
背後から同じ部活の同輩から「葉山さん?」との声が聞こえるが聞こえてないことにした。
走ることには自信がある。昔からかけっこや鬼ごっこなどで敵無しだった。
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教室の扉を開けるとやはりそこには愛がいた。
「ないないないない!ないよぉぉ!」と叫んでいる。
「愛!」
「あ、凛ちゃーん。ないんだよおお!」
涙目の彼女はこちらに振り返ることなく何かを探す。
「サイレン鳴ったでしょ?!早く逃げよ!探し物は後でしてあげるから!」
「今じゃないとダメなんだよぉ…これじゃ魔法少女になれない!」
凛は一瞬何を言ってるのか理解できなかったが、朝方の愛の発言を思い出す。
「いや、もういいから、とりあえず逃げよ?あとでたくさん話も聞くから!」
突然窓ガラスの割れる音がする。見るとグランドに羽の生えた怪物が現れていた。
「こうなったら気合いで変身する!」
そう言い出すと愛は立ち上がり、うぉおおおおお!と唸り声をあげる。
「訳のわからないことをしてないで!命が1番大事でしょ!早く逃げよ!」
凛が愛を引っ張るもびくともしない。もともと愛は馬鹿力なのだ。
「魔法少女も来てるみたいだから大丈夫よ。逃げようよ!愛!」
すると砂埃が教室を遅い、2人は床に倒れ咳き込む。
バサバサと音が聞こえてくる。
凛の表情さみるみる青くなっていく。
「ど、どうしよ」
変な唸り声を上げる幼馴染と自分。下手したら命が危ない。
ぐるぐると思考を巡らすも結論は出ず。
「もう、無理…」
その言葉を遮るように愛は「まだまだぁー!私が凛を守るー!」と唸り声を続ける。
普段はいつも明るい幼馴染に根拠もなく信頼をしてしまうが、今回ばかりは無理だと感じた。
するとどこからか澄んだ声が聞こえた。
「やれやれ、大事な物なんだから無くさないで欲しいな。これがないことには気合いではなんともならないよ。」
目の前に以前の白猫がいた。
ただ、以前と違い尻尾が2つに割れておりやや白く発光してるようにも見えた。
白猫は愛の目の前に行きピンクの綺麗な石を渡した。
「ありがとう!!よし!行くぞ!」
と愛は言い、ストーンに力を込める。
すると眩い光が愛を包み一瞬のうちにピンクに染まる。
口を開けている凛に
「待っててね、今やっつけてくるから!凛をわたしが守るよ!」
と告げて怪物に向かって行く。
その姿は昔と変わらなかった。
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「遅くなりましたー!」
米川に向かい声をかける。
「見つかったのね、良かった。あいつ飛んで厄介なのよ…砂煙も出してくるし…」
どうやら苦戦しているようだった。
怪物は空を舞いなかなか降りてこない。激しく羽を羽ばたかせれば砂煙が立ち昇る。
グランドには遊具等もないため何かによじ登り側に行くこともできない。
「ステッキを投げても風のせいか届かないの…せめて風さえ収まれば…きゃー!」
米川は飛ばされる。
ダメージは強くないが風はどんどん強くなっているのか砂煙が大きくなる。
「えっと…やばくない?どーしよー!」
再度愛は悩むこととなった。
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「どんどん風が強くなってる」
凛は愛を信じ教室で待っていた。
シェルターに向かうべきだが、怪物に見つかるかもしれない。
風の強さや空中に止まっていることからなかなか倒されてないようだった。
「愛…」
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愛との家は斜め向かいであり、同い年だったため幼稚園の頃から親同士も仲良く遅くまで遊んだりしていた。
もともと体が細く気弱な凛は幼稚園のガキ大将にいつも揶揄われた。
泣くことしかできなかったがいつも愛が助けてくれた。
「私の凛ちゃんをいじめるなぁー!」
「来たな!ゴリラめ!やってやる!」
ガキ大将含めた男子3人に対し、枝を振り回して立ち向かっていく。
「魔法少女アターーック!」
「卑怯だなお前!覚えてろよ!」
ガキ大将達は慌てて帰っていく。
ボロボロになった彼女は凛のところに向かうと輝く笑顔で「正義は勝つ!」とピースサインを向けてくる。
「こんなボロボロなのに…無茶しすぎだよ。」
そう怒る私に向かって彼女は
「いいんだよ!魔法少女はどんな敵にも怯まず挑んでみんなを助けるの!私は凛ちゃんを助けるよ!」
きっと彼女は心の底から魔法少女に憧れ、心の底から人々を守りたいんだと感じた。
「お家帰ろ!」そう差し伸べる手を受け取る。
「ありがとう。それと…必殺技の名前ダサいね。」
「えぇー!かっこいいでしょ?!わかりやすいし!それに何かあったら凛ちゃんが助けてくれるでしょ!」
「え?私頼りなの?」
「もちろん!私の幼馴染で、私の相棒!凛ちゃんのおかげで私は頑張れる!」
きっと愛は覚えてないだろし何気ない日々だっただろう。それでも凛にとっては忘れることのない日々だったのだ。
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白猫は凛に尋ねる。
「逃げないのかい?危ないよ」
凛は白猫に尋ねる。
「私はこんなところにいられない。もしあなたがあの子に力を授けたのなら、私にも力を頂戴!」
白猫は首を傾げる。
「何のために?」
凛はニヤッと笑い断言する。
「私は愛の相棒だから」
白猫は無表情だが、何故だか笑ってるように感じた。
「いいだろう、君にも授けよう。」
白猫がストーンを凛に渡す。
凛はストーンを受け取ると力強く握りしめた。
その瞬間凛を眩い光が包み込む。
魔法少女3人目です!クールで冷静な幼馴染。きっと愛の助けになることでしょう。
この物語はサクサク進んでいきます!
貴重なお時間で2話目も見てくださり、ありがとうございます!誤字やご指摘等いつでも受け付けております。