コスモスが咲き乱れる星からのサヨウナラ
朝目を覚ますと窓の外を見るのが習慣になったしまった。
窓の外には色とりどりのコスモスの花が咲き乱れている、正確に言うとコスモスに似た花を咲かせる植物の花が見渡す限り地平線の先まで咲いている。
ワープ航法宇宙船の試運転で外宇宙を航行していた私達は、地球に似たこの星を見つけた。
星からは数種類の言語らしい通信が発信されている。
私達は歓喜して乗組員の中から選抜された私を含む数人が、宇宙船に載せられていた緊急脱出艇で星に降り立つ。
私達が星に降り立ったところで本船の直ぐ側にUFOが現れる。
地球に似た星を見つけただけで無く宇宙人とも接触できたと喜んだのも束の間、UFOの乗員銀河帝国の銀河パトロール隊の隊員に本船に残っていた乗組員は怒鳴られた。
コスモスに似た花を咲かせる植物は宇宙の彼方から飛来した植物で、この植物の為にこの星本来の植物は全て食糧として生産されていた植物を含めて駆逐され、植物を含めての食物連鎖は崩壊しこの星の生物は星人を含めて全滅する。
この植物が何処から飛来したものか不明だが、この星から他の星に拡散させない為にこの星は閉鎖されていたのだ。
星から出されていた通信は、銀河帝国の共通語と近隣の太陽系の言語による警告だった。
銀河パトロール隊との接触により地球連邦国は銀河帝国に所属する事になる。
完成されたワープ航法を伝授されるなどして地球人は皆歓喜した。
この星に降り立ってしまった私達を除いての事だが。
私達は伝授されたワープ航法船を建造した地球連邦国のワープ航法船から撃ち出される、無人補給船による物資補給により生き長らえている。
補給される物資の中には食料や生活必需品だけで無く、地球連邦国に所属する国々で開発生産されている枯葉剤などの除草剤も含まれていた。
私達がこの星に降り立ってから5年の年月が経つのに窓の外の風景は変わらない。
色とりどりのコスモスの花が咲き乱れている。
毎日毎日地球から送られて来るあらゆる除草剤を、無人飛行機やアンドロイドを使って撒いているというのにだぞ。
この星に共に降り立った仲間たちは皆、自殺したり狂って咲き乱れる花々の中に駆け去って行ったりして、残っているのは私1人。
でももう耐えられない。
私は物資補給の為に訪れたワープ航法船の乗組員に「サヨウナラ」と最後の通信を送り、私物の拳銃を持って寝室のベッドに横たわった。