(3)
「その事は……明日になってから考えるよ。当分は大丈夫なんでしょ?」
僕は、そう言って、もうすぐやって来る予定の山車を見ようとベランダの端の方に向かう。
月1回、その月の「冒険者ランキング1位」に選ばれたパーティーは魔法で動く山車に乗って町中にお披露目される。
その日は、ちょっとしたお祭りになる。
「ん? どうしたの、あれ?」
僕の横で通りを見ていたシュネが、そう言った。
何故か、大量の人達が一方向に走っている。
しかも、馬鹿デカい鐘の音が鳴り響く。
「今回……派手だけど……ん〜?」
「そうだね。何て言うか……演出は金かかってそうだけど……何かイマイチだね」
ランキング1位のパーティーが乗ってる山車やって来る予定の方向から、もの凄い光。
まるで昼間……いや、あの光、何か変だ。
あ……。
まさか……。
それに、あの鐘の音……いつか聞いた覚え……。
「火事だぁ〜ッ‼」
「みんな逃げろ〜ッ‼」
え……ッ?
あ……。
しまった……。
この酒場に来る前に放火した医者の家……。
ランキング1位のパーティーが乗ってる山車が通る予定の道の……すぐ近く……。
シュネと僕は、放火を指示したローアの方を見て……。
初めて見た。
ローアの冷や汗を……。
「○×△◇⁉」
「○×△◇⁉」
ローアは、またしても「猿ぐつわ」の魔法を発動。
僕とシュネは一時的にしゃべれなくなってしまった。
「あ〜……この件、どうするかは、気を落ち着けてから話し合おう」
ふと、通りの方を見下ろすと……。
え……えっと……あの状態で、自動運転の魔法の効果が切れてないのか?
燃え盛る山車が町中を疾走しながら、炎を撒き散らし続けていた。