(2)
鏡なんか見なくても、自分がゲンナリした表情になってるのが判るような状態で、トイレから2階のベランダ席に戻ると、ローアとシュネが変な表情で僕を出迎えた。
シュタールは……黙々と酒を飲んでる。
「あ……あのさ……それ……」
「どうしたの?」
シュネの顔色は……北方系白肌人種が「魔法の美容整形」で改造された偽エルフだって事を考慮しても……白過ぎる。
ローアは……やれやれと言いたそうな感じの表情。
「おい、お前に取り憑いてる奴ら……食ってもいいか?」
口調からして、僕がトイレに行ってる間に「本物かつ魔物」の人格に切り替わったらしい。
「へっ?」
次の瞬間……。
轟ォッ‼ 業ォッ‼
僕の体から……黒い煙のようなモノが出て……それがローアの口に吸い込まれる。
「うがあああ……」
「げええええ……」
「うきゃきゃきゃきゃあ〜ッ‼」
そして、ローアの口元で、その黒い煙みたいなモノは、次々と……人の顔の形になり……悲鳴をあげ……そしてローアの口の中に消えていった。
ちょっと待て……。
……あれ、幻じゃなかったのッ?
「お前さ……悪党に向いてねえよ」
「え……?」
「お前が、人殺しても何とも思わねえような極悪人や、人を殺す事の何が悪いのか判んねえような、この2人みたいな阿呆なら……」
「シュネ、阿呆じゃないもん」
「うるせえ」
「○×△◇⁉」
いつものように「猿ぐつわ」の魔法が発動。
「あの手のモノは、逆に、極悪人や阿呆には取り憑かねえ。けど、お前は中途半端だ。バレずに悪事をやるのが現実的だとイキがってる癖に、心のどこかでは、今までやってきた事を気に病んでやがる。だから、あの手のを引き付けちまう。こんな調子じゃ……いつか、あたしらのパーティーが殺した奴らの怨霊を1人で引き受けて、憑り殺される羽目になるぞ」
「は……はぁ……」
「ひょっとしたら、私らが冒険者ランキング1位になれる日が来るかも知れねえけど……その頃にはお前の脳味噌はブッ壊れてるぞ、死んでなきゃな」
「あ……あの……この馬鹿小説、ジャンルが追放モノに変るの?」
「悪い事は言わねえ。田舎帰ってマトモな仕事やれ」