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紫音の約束   作者: 吉田和司


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 彼女はこの時、自分はすでにある一線を越えてしまったことを思い、自分の責任において、その重荷を背負う必要があるのではないかと考えるのだった。もはや、躊躇している時間などないのだ。この際すべてを明るみに出さねばならないのだ。そうしなければ、自分達の幸せが、まともに築かれるはずがないではないか。しかし、そうは言っても、なかなか事の真相など、そう簡単に明るみに出るはずもないのだが、この時の彼女は、何かに取り憑かれたように自分の考えに固執するのだった。たとえ、そうすることで父との関係に軋轢が生じたとしても、それは、もうやむを得ないことだと思って割り切るしかないのではないのか。そういうある意味、勇ましい決意までしてみせた彼女ではあったのだが、いざその実行となると、その一歩がなかなか踏み出せないでいたのである。すると、父親は読んでいた新聞を脇にどけると、急にニヤついた顔から真面目な顔に変わって、まるでこれから親子の親密ぶりをアピールするかのように、取って付けたような優しい顔で、こう話し掛けるのだった。

「ところで、昨夜は禮子さんと、あれから何か話しでもしたのかな。いやね、私も彼女には色々と迷惑を掛けてしまったので、何とか彼女のためにも、その名誉を回復させてやらなければいけないと思ってるんだよ。それでなきゃ、彼女だって、これから先のことを安心して考えられないんじゃないかと思ってね。そのためには、私だけではなく、お前にしろ、華音にしろ、そのことをよく弁えていてもらいたいんだ。まあ、お前はいづれこの家から出て行く身であったとしてもだ、彼女との関係はこの先ずっと続いていくわけだし、私だってまだまだお前に相談しなきゃならんことだって、きっと出て来ると思うんだ。実際のところ、私が禮子さんと結婚出来たとしてもだよ、それでめでたしめでたしなんてことは、お伽話ならいざ知らず、この人生においては決して有り得ないことだからね。私だって正直この歳で結婚するなんてことは、数ヶ月前まではまったく想像すらしていなかったんだから。それを考えると、まったく自分でも不思議でならないんだが、これもまた人生の巡り合わせだと思えば、それはそれで何となく納得できるというもんさ。まあ、私のことはこのくらいにしてさ、ここでちょっとお前のこれからについて、二人で考えて見たいと思うんだがどうかね?お前も、これから何かと心配事も増えていくと思うが、自分だけで抱え込まずに何でも私に話してくれなくちゃいけないよ。なんせ母さんが死んでからというもの、私はただひたすらお前のことが心配でならなかったんだからね。それは本当のことだよ。どうしたらお前に結婚を決断させることが出来るのか、私もそのことではずいぶんと苦労したもんだ。いやまあ、そんなことはどうでもいいんだが、しかしまあ、これで私も親としての責任をまっとう出来ることになり実に肩の荷が下りるというもんだよ。あとは二人仲良く自分達の人生を生きて行ってくれれば他に何も言うことなどないしね。あの男だって、きっとお前を幸せにしてくれると思って間違いないし、まあ少し変わった男だが、それでも、お前は実にいい男を手にしたことになるんだよ。それだけは間違いない。だって、あの男は人間的に信頼出来るからだ。選挙の時だって面倒な雑用仕事を嫌な顔もしないで進んで手伝ってくれたしな。私は、あれでかなりあの男を見直したんだよ。お前だって、そう思うだろう?ところがだ。反対にお前は、昨夜とんでもない失態をやらかしてしまったんだ。お前のあの振る舞いだが、あれは実にまずかった。それも、みんなの前で、お前の隠れていた性格が思いっ切り暴露されたんだからね。あれじゃ嫁入り前のお前の印象がすっかり台無しだ。その証拠に誰もがお前の性格に疑問を持ったに違いないからだ。みんなすっかり驚いてしまったからね。私だって驚いたよ。自分の娘でありながら、そこまでやるのかって思ったし、まったく見たこともないお前を見たようだったからね。それにしても、もうちょっとほかにやりようがなかったのかな。いやだからって何もお前を責めているわけじゃないよ。あまりにも意外だったもんでね。まあ、華音は、もともとがああいう性格だから、ある程度は仕方がないとしてもだよ、お前までが、どうしてあそこまでしなければいけなかったのか、姉としてもう少し違ったやり方がなかったもんかと思ってね。だって、お前のような、いつも落ち着いて物事の道理をよく弁えている娘がだよ、いったいどうして、ああいうことを、それもみんなの居る前でしてしまったのか、それを思うと何て言うか実にその……残念でならないんだよ」

「あのことでしたら正直に言って、自分でもよくわからないんです。気が付いたら妹を殴っていたんです。自分でもおかしいとは感じましたけど、でも、よく考えてみると、私が本当に殴りたかったのは妹ではなかったのかも知れません。はっきりとは断言できませんが」

 父親は、娘の意外なというよりも実に奇怪な言葉に、一瞬、言葉を失ってしまったのだ。もちろん出来ることなら、この言葉の真意を、ここでまじめに問い質して娘の考えを明らかにしたほうが父親としても、そのほうがずっといいのかも知れないが、しかし、この時はさすがにそんなことはすべきではないと本能的に悟ったのだ。そんなことをするくらいなら一層のこと聞かなかったことにして無視したほうが、よっぽど精神衛生上お互いのためになると思ったのである。

「しかし、まったくあの華音にも実に困ったもんだな。これからのことを考えるとほんとに頭が痛いよ。もう子供じゃないんだから、もう少し大人の対応が出来てもよさそうなんだがね」

 父親は仕方なく妹のほうに問題をすり替えて、むしろ、こちらのほうが深刻だと言わんばかりに、苦虫を噛みつぶした呆れ顔で、わざとらしくため息をついて見せるのだった。しかし、そんなことをしたところで、彼女の強烈な言葉の前には焼け石に水で何の効果もなかったのである。それが証拠に二人とも急に黙り込んでしまって、これはやはりどう考えても変だと思い始めてしまったからだ。とくに紫音はなぜこんなことを言ってしまったのだろうと、我ながら理解に苦しむのだが、突然のことでもあり、こんな訳の分からないことを言って、父親を苦しめるなんて、なんて、心のあざとい嫌味たらしい女なんだとひどく後悔するのだった。もちろん、これは禮子のことが念頭にあったためで、これによって、ますます自分が悪賢い女になっていくのではないかと危惧するのだった。それに対して父親は、すっかり混乱してしまい、いったい娘が何を言いたかったのか、それを思うと何か途轍もない不安が襲って来るのだった。すると紫音は、父親の戸惑いに満ちたその顔を見ながらも、ここはどうしても父親に自分の懸念を正直に話しておくべきだと強く思い、こう切り出したのだ。

「お父さんと、ちょっとお話ししたいことがあるんですけど、いいかしら。禮子さんとは、あれからけっこう長くお話したんですよ。それこそいろんなことをね。ほんとに面白かったわ。お父さんにも実際聞かせてやりたかったもの。きっと禮子さんがどういう人間かってことがよく分かったと思うの。ねえお父さん、お父さんは実際のところ禮子さんのことはよくご存じですよね?もちろんご存じのはずだわ。それでなきゃ、結婚などするはずがないもの。私ね最近こう思うようになったの。結婚は、鏡の中の自分と向き合うように、相手の心と親身に向き合うという行為じゃないかしらって。そう、お互いの顔を通して心と向き合うってことが何よりも大事なのよね。確かに人の顔は大事だもの。その人が何を考えているのか、そんなこと顔を見れば大体のことは分かっちゃうものよ。もちろん、その人が自分にとって何よりも関心のある人でなければならないけどね。私もね日頃見慣れた人の顔が、ある日突然違ったふうに見え出したっていう経験をしたことがあるの。それは自分にとっても、とても信じられないことだったんだけど、でも、仕方がなかったの。ある思いが私にそう見させてしまったのだから、どうしてもそう見えてしまうのよ。それでも娘としてそんなわけはないと、何遍も言い聞かせてはみたんだけどね。それでも、どうしても言うことを聞かないのよ。私の中のもう一人の自分が、何度も私に言ってくるの。あの人はきっと何かを隠しているに違いないって」

「お前も、最近ときどき面白いことを言うようになってきたね。ほんとにいい傾向だよ。お前のような、一途で細かいことを気にする女は、とかく融通が利かなくなって面白みのない生活に嵌まりやすくなるもんだからね。そのへんを注意すれば、結婚生活もそんなに窮屈にならなくて済むもんだよ。それに相手の男と、あんまり親身に向き合おうとすると、却ってお互いしんどくなっちゃうから、そこも注意したほうがいいよ。まあ、最初のうちは、お互いのぼせ上がってるからいいけどね。それでも限度ってものがあるからね。まあ、こんなことはお前には余計な説教だとは思うけどね。それに第一、私がそんな偉そうなことを言える人間ではないってことは、自分でもよく分かってるんだが、それでも一応お前の父親として何かアドバイスでも出来ればと思ったってわけさ。ああ、それから、確かに人の顔というものは大事なもんだよ。お前もなかなかいいところに気が付いたもんだ。そうなんだ。人の顔というものは実に厄介なものなんだ。お前は自分の顔をはっきりと思い浮かべることができるかね?恐らく出来ないだろう。自分の顔を知ろうとするには鏡を見なければ駄目なんだ。つまり、自分の顔は鏡を見ない限り無意識の闇の中に忘れられてしまっているんだ。そんなこと誰も考えたこともないだろうが、実際そうなんだ。それが他人の顔に変なものを見てしまう一つの原因にもなっているんだよ。今お前が人の顔が違って見え出したっていうのも、要するに相手の顔に自分を見てしまうからさ。それにお前は、顔を見れば何を考えているか大体分かるようなことを言ったが、果たしてそれは本当かね?人間はそんな単純なものではないよ。顔を見ただけで人の心が分かっちゃうなんて、そんなことはまあ何かの喩えとしてならおもしろいが実際問題としてはまったく話しにもならんよ。でも、ひょっとしてお前は、そういうことが出来ると純粋に思っているのかも知れないね。もっとも、そう信じているなら、それはそれでいいんだがね。いや、むしろ、お前のような感受性の強い女には、そういう能力が実際にあるのかも知れんからね。そう考えれば、私も何となく納得出来ると言うもんだ。確かに、お前にはそういうところが小さい頃からあったよ。それはつまり、お前の心が綺麗だからさ。一点の曇りのない鏡には、何の誤魔化しも起きようがなく、すべてがあるがままに映るってやつさ。そのくらいお前の心は澄んでいるから、相手の心など手に取るように分かるのだろう。もちろん、これも一つの喩えとして言ってるんだがね。それで、お前の話したいことって、いったいなんだい?禮子さんのことかね?」

 橘氏はこの時、自分が何か非常にまずい状態に置かれるのではないかと、娘の言葉の雰囲気から何となく感じ取ったのだが、今さらジタバタしても仕様がないと思い、そこは父親として踏ん張って耐えるしか他に方法はあるまいと覚悟するのだった。

「お父さん、私ね、昨夜、禮子さんからとても変なことを聞いたの。変と言うよりとても信じられないことで、今でもまだ何がなにやらさっぱり理解出来ないでいるの。なぜかと言うと、どうやらその裏にはお父さんが居るらしいからなのよ。まだ断言は出来ないんだけど、というのも、禮子さんも、はっきりと言ったわけじゃないから。そこでねお父さん、私がこれから言うことに正直に答えて欲しいのよ。それでないと、そのことでずっと苦しむことになってしまうわ。そんなこと、とても我慢できないわよ。お父さんだって自分の娘が苦しんでいるのを、黙って見ているわけにもいかないでしょう?何か恐ろしいことが、私の知らないところで起きてたのよ。いったいそんなことが許されていいのでしょうか?お父さん、何とか言って下さいよ」紫音は、こうして、そのか細い腕で何とかその疑惑の重い扉を、少しだが、こじ開けようとしたのである。

「まあ、そんなに興奮しないでさ。お前が何かに苦しんでいるってことはよく分かったよ。でも、私には正直何を言ってるのかさっぱり分からんのだがね」

 確かに、彼女は気持ちばかりが焦ってしまい、まるで、子供のようにただ自分の苦しみだけを訴えていただけなのだ。どうやら、まだどこかにためらう気持ちがあって、それが邪魔をしていたのかも知れない。彼女は自分を落ち着かせようと頻りに顔に手をやったり、髪の毛をいじったりしていたが、ようやく、決心がついたのか、その動きがピタリと止まり、父親をジッと見据えながら、こう話し出すのだった。

「ごめんなさい、私も、つい、興奮してしまって。でも、もう大丈夫だから、ちゃんと分かるように説明するわね。……いつでしたか、お父さんに連れられて柏木さんの待つレストランに行ったことがありましたね。今思うと、すべてがあそこから始まったのよ。柏木さんとの関係も、それに禮子さんとの関係もね。お父さんはあの時、すぐ帰ってしまったから知らないと思うけど、あの後、しばらくして禮子さんがお店に現れたの。それも、如何にも偶然を装ってね。そして、私のことなど、まったく無視して、柏木さんと親しくお喋りを始めたのよ。私はその時、ただ柏木さんのお知り合いだと単純に思って、二人の会話を黙って聞いていたけど、何だかそのうち柏木さんの様子が変わってきて、私の目にも、ああ、この二人は完全にワケありなんだって思えるくらい奇妙な空気になってしまったわけなの。その時の柏木さんは、ほんとに困った顔をして私のほうをチラチラ気にして見てたけど、それがまるで、これは別に何でもないんですから、そんなに心配しないで下さいって、私を安心させようとしたいのでしょうけど、なぜか汗びっしょりで目も血走って真っ赤だったわ。ほんとに気の毒なくらい私のことを気にしてね。私も内心、どういう顔をすればいいのかほんとに困ってしまったことを今でも覚えているわ。そのうち、禮子さんは帰って行ったけど、彼は、ただ嫌な印象を残しただけの彼女に茫然自失となって、この後始末をいったいどうつけたらいいのか、さすがに困っているようだったわ。でも私はその時、彼に対して別に嫌な気持ちは抱きませんでした。彼にだって大人の事情というものがあるでしょうしね。でも、正直、私にだって、それなりに好奇心もありますから、家に帰って来てから、この二人の関係について色々と考えては見ました。それでねえ、お父さん、お父さんは、柏木さんと禮子さんの関係については、もちろん、ご存じよね。でも問題は、そんなことではなく、なぜ禮子さんがその時レストランに現れたかってことなのよ。そこが問題なわけ。なぜだか分かる?お父さん。その真相らしきものが、昨夜、禮子さんの口から出たからなのよ。それがまたおかしいの。禮子さんは、私たちがあのレストランで会うことは事前に知っていたと言ったんです。名前はさすがに言わなかったけど、自分の親しい人に聞いたって言ってたわ。でも、よく考えて見れば、その親しい人ってもうほとんどお父さん以外いないんじゃないかしら。だって、ほかに誰がいるというんですか?そんな何のためだか分からない物好きなことをしようなんて考える人が」

 橘氏は、如何にも平静を装っていたが、顔面が次第に硬直してきて、なぜか冷たい汗が背中をゆっくりと伝って行くのが分かるのだった。父親としては、すっかり忘れていたことでもあり、何で今頃この事が問題として表に現れなければならないのかと訝るのだが、それ以上に、なぜ、よりによって娘の口から直接、検事のように詰問されなければならなかったのか。このことだけでも、何か得体の知れない力を感じて空恐ろしくなるのだが、そうはいっても、これだけは何としてでも秘密にしておく必要があるのではないかと、そう感じてはいたものの、親として果たしてそれでいいのかという思いもないわけではなかったのだ。橘氏にとっても、確かに今考えれば親としてまったく罪深いことではあったのだが、しかし、そのお陰で娘も何とか婚約できたのだし、なかなかそう簡単に良い悪いの判断を下せないところが、彼の苦しみでもあったのである。そういうわけで、実に困ったことになったわけだが、しかし、それ以上に理解できなかったのが、なぜ禮子はそのことを娘に話したのかということだった。その狙いはいったい何なのか。これは、確かに橘氏にとって、緊急に考えなければならない重要な事柄であることだけは間違いなかったのだ。しかし、この時は、そんな込み入ったことを考えている暇などなかった。そんなことより、娘に何と言えばいいのか、そっちのほうがそれこそ緊急を要することであったからだ。すると、彼は父親らしく覚悟を決めたのか、それとも血迷ったのか、そこはよく分からないが、意外とあっさり白状してしまったのである。

「私はね、お前に謝らなければならないことがあるんだよ。確かに禮子さんにお前達のことを喋ってしまったことは認める。そのことは本当に申し訳なかったと思っているんだ。でも、問題は、何でそのことを話したかってことなんだが、それは、つまり何だよ、つい口がすべってしまったからなんだ。もちろん、こんな実につまらん言い訳では、お前も納得など出来ないだろうが、しかし、いくらつまらなくても実際そうなんだから仕方がないのだ。うまく説明できんが、要するに簡単に言うと、それはつまりだね、父親として感極まったんだろうな。自分の娘がこういう社会的に有望な男と結婚するってことが、親として誇らしかったので、つい自慢がてら禮子さんに話してしまったんだよ。きっと」

 確かに、あの時、彼は調子に乗って、うっかり口をすべらしたことだけは事実なのだ。しかし、そのうっかりの裏には橘氏にしか分からない、何と言うか、実に苦しい理由が隠されていたのである。しかし、そんなことまで娘に話す必要などないと思われたのだ。やはり、そんなことは自分の胸だけに収めて置いたほうが、よっぽど娘のためになると考えたからである。とはいえ、こんな言い訳では、さすがの彼女も信じられなかったのだが、ところが、自分がその張本人だと、ここまで素直に父親が認めたことに却って驚いてしまったのだ。もう少し、何やかや抵抗して逃げ回るのかと思っていたからである。もちろん、これで疑惑のすべてが晴れたかというと、恐らく以前の彼女だったら、うまく父親に丸め込まれていたかも知れないが、この時の彼女は、むしろますます疑惑が深まってしまったのである。しかし、彼女としては、この先いったいどうやって父親の疑惑を追及していったらいいのかまったく思いも及ばなかったのだ。彼女の優しさが、これ以上、父親を追い詰めることに抵抗したのかも知れないが、それでも、これで諦めるわけにはいかないという思いもあったのだ。一方、父親のほうは、娘が意外にも自分を信じてくれたように思われたので、一先ず胸をなで下ろすのだった。もちろん、これで解決したとは思ってもいなかったし、いや、それ以上に、この問題は、二人の間に下手をすると手痛い禍根を残すかも知れないと危惧したのである。 

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