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紫音の約束   作者: 吉田和司


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 華音のこうした言動は、ある意味確信犯的な要素がなきにしもあらずだったが、しかしまあ、もっと平たく言ってしまえば、意地の悪い女がごく普通に使う手口だと言えなくもなかったのだ。それにしても、こういう思い切った喧嘩のやり方は、彼女独特のものなのかも知れないが、それ以上に、こういうやり方の裏には、本人さえはっきりとは意識していない、何か特別な感情があったからだと見ることも出来る。また別の見方をすれば、これも一種の女同士の腹の探り合いで、それこそ相手が何を考えているのかを、たとえ危険を冒してでも探ってやろうという女の執念とも言えるのだ。要するに華音は現実的な脅威を禮子に感じていたので、今後、彼女がどういう行動に出るのかを、この際はっきりとさせたかったのかも知れない。その一方で、禮子はこの時、彼女の言葉の真意云々よりも、その裏に隠れている姿勢そのものがとても気になったので、ここは一つ彼女に揺さ振りを掛けてみようと思い、挑発するような態度をわざと見せながらこう言うのだった。

「私もひどく見くびられたものね。でもまあ、あなたからすれば、私なんかどうせ欲の皮の突っ張った、どうしようもない女にしか見えないんでしょうが、それにしても、なんか変ですね。私に言いたいことがあれば、もっと正面からはっきりと言うべきです。華音さん。それでなければ私だってお答えのしようがないじゃありませんか。でもね、もし、まともにそんなことを言われたら、正直言って、うまく答えられるかどうかよく分かりませんの。でも、問われた以上、何かお答えするのが礼儀ですからしますが、たぶん私の何かがお気に召さないからでしょう。そうではありませんか?しかし、こういうことになるのも、私の不徳の致すところと言ってもいいのでしょうが、思うに、あなたとしては、よほどお父さんと結婚させたくない理由がお有りなのかも知れませんね。でも、もしそうなら、ここは一つあなたの寛大なお気持ちで、どうか私たちの将来を見守ってはいただけないでしょうか。それにしても、あなたは本当に面白いお人ですね。だって、何があなたをそういう考えに駆り立てているのか、正直そちらのほうが私にはずっと興味があるからです。これは何も今に始まったことではなく、あなたと初めてお会いした時からの疑問なんです。実を言えば、私にとってあなたのような方は、決して嫌いなタイプの人間ではないのですよ。似た者同士って言うのかしら。時々、自分の若いころを見ているようで自然と笑っちゃうことだってあるんです。ですもの、あなたが何を考えているのか、ある程度の予想くらいはついているんですよ。でも、あなたの口から言ってもらったほうが、あなたのこれからのためにも、また私にとっても、そのほうがずっといいと私は考えているんですが、どうでしょうか、華音さん」

 相手にはちゃんと質問しろと言いながら、自分はうまく答えられそうにもないと逃げたり、また、お気に召さないところはあるだろうが、私たちの結婚を寛大な気持ちで見守ってほしいとお願いしたり、挙げ句には、あなたのことは決して嫌いなわけではないし、お互い似たもの同士だから、何を考えているのかおおよそのことは分かるとまで言ったりと、まさに人を煙に巻くような油断のならない話しっぷりに、さすがの華音もすっかり混乱してしまい、いったい彼女は自分に何が言いたいのかまるで分からなくなるのだった。しかし、こうした巧まれた会話の中に隠れている駆け引きが、これからのお互いの立場を決めてしまうと認識したので、彼女の口車にうっかり乗ってベラベラと本心を語ることなどもちろん論外なのだが、とはいえ、このまま何も言わないわけにもいかないので、たとえ不利な立場に立たされることになったとしても、そこはうまく立ち回り絶対妥協などしてはいけないと覚悟するのだった。

「あたしは、ただ禮子さんが、このことによって苦労するんじゃないかと思って心配しただけよ。何もお父さんとの結婚に反対しているわけじゃありませんから。その辺のところ、どうか誤解のないようにお願いしますわ。それに、禮子さんに何か不満でも持っているのではないかというご指摘には、ここではっきりと否定させていただきます。そんなことはまったくありません。でも、あなたのおっしゃることは正直あたしには分かりません。いったい何が言いたいのでしょうか?それとも、ただ、あたしをからかっているだけなのかしら?だって、あなたがおっしゃる、お互い似たもの同士だという理由だけで、あたしが何を考えているのか、まるで何もかも知っているような口振りだったからです。おまけに、そう言っておきながら、あたしから口を割らせようと、うまく誘導しようとするなんて本当にずるいやり方だわ。ひょっとして、あなたの本当の狙いは、あたしをわざと混乱させといて、語るに落ちるよう、うまく持って行こうとしたのではありませんか?」華音は、恐ろしいくらい意識を集中して話していくうちに、すっかり熱くなってしまい、まるで話しの矛盾を暴き出す検事のように椅子から立ち上がって、どう反論できるものなら反論してみなさいよ、と如何にも勝ち誇ったように禮子を睨み付けるのだった。ところが、ここで彼女にとって、とんでもなく強烈で、想像すらしていなかった出来事が起きたのである。今の今までずっと沈黙を守り続けていた紫音が、突然ソファーから立ち上がると、つかつかと華音に近寄り、間髪を入れず、いきなり彼女の左頰に見るも鮮やかな平手打ちを一発お見舞いしたのだ。これには、さすがの華音もただ呆然とするだけで、しばらくは自分に何が起こったのかまったく理解できないようだった。

「華音、あなた、いったい自分が何を言っているのか分かっているの?そんな言い訳は私が許しませんよ。いいですか、あなたが今一番しなければいけないことは、ただ禮子さんに素直に謝ることだけです。そんなことも分からず勝手な理屈をこねて禮子さんを貶めようとするなんて、あまりにも卑劣なやり方ではありませんか。どうしてそんな恥ずかしい事を平気でするような人間になってしまったんですか?あなたは」紫音は、これだけのことを、それこそ自分でも信じられないくらい興奮して一気にまくし立てたのだ。こんな経験は今まで一度だってなかったので、本人もそうだが、それ以上にまわりにいる家族たちも一様に驚いてしまったのである。この頃からだろうか、あの大人しい控え目な紫音が、突然自分の意見をはっきりと言うようになったのは。父親などは、これを見て記憶にある娘のイメージからは程遠い、まったく今まで見たこともない別人の姿を、垣間見たような印象を持ったのである。この意外な紫音の振る舞いは、もちろんすべての人を驚かしたが、一番驚いたのは華音その人であったことは間違いないであろう。華音としても、一瞬頭に血が上るほどカッとしたのだが、それでもそこは仲の良い姉妹だけあって、逆上したというわけではなく、ただ交通事故にでもあったような感覚だったのだ。彼女は姉の今まで見たことのない怒りの表情に驚きながらも姉の言った言葉に顔をしかめるのだった。すると、とっさに彼女は左頬を押さえ、そのまま何も言わずに部屋から逃げるように出て行ってしまったのである。つまり、姉の平手打ちをその理由にして、この場からうまく退散したというわけである。禮子に謝ることなど自分の負けを認めるようで、とても容認などできなかったからだ。

 この突然の紫音の怒りは、華音の逃亡によって、その対象を失うことになってしまったが、それでもその余韻は消えることもなく、部屋の中に重苦しく残ってしまったのである。一人ポツンと部屋の真ん中に立ったままの紫音は、自分が起こした怒りによって、自分が一番傷つけられたような格好になってしまったのだが、この辛い役回りの後始末をつけるために、彼女は禮子のそばに近寄ると、妹に代わって頭を下げるのだった。

「いったい何があったんです?華音お嬢様が血相を変えて二階に上がって行きましたけど。せっかくお食事をお持ちしたのに」と、ばあやはびっくりして紫音に説明を求めるのだが、それでも部屋の空気から、これはただならぬことが起こったことだけははっきりと理解したので、そこは何事にも察しがいい家政婦だけあって、それ以上出しゃばることもせずに、ただ持ってきた食事をどうすべきか、その指示だけでもしてくれないかと紫音をじっと見詰めるのだった。

「それなら、そこのテーブルに置いといて下さい。誰か食べるでしょうから。だったら貴臣、あなたが食べなさい。あなただってお腹が空いているんでしょう?」紫音は、こう言って貴臣に優しく食べるよう促すのだった。もちろん、こうなれば弟として食べないわけにはいかなかったのだ。それが、この尊敬すべき姉を気遣う弟の第一にすべき義務だと考えたからである。

 紫音はその時、余程グッタリしたのか、近くのソファーに腰を下ろすと、まるで催眠術にでも掛かったかのようにまぶたが重くなり、そのまま眠るかの如くその場で動かなくなってしまったのだ。これは彼女の性格から言っても、かなり珍しいことだった。このようなことがあった後、ましてや周囲には家族をはじめ禮子や柏木がまだ控えていたのである。そういうことから考えても、これは極めて異常なことだったのだ。とはいえ、この時の紫音は、自分ではどうすることも出来ない心の状態に陥っていたわけで、彼女自身にとっても奇妙なことが起こっていたのである。いったい何が彼女の中で起こったのだろう。確かに彼女は、この時極めて不思議な体験をしていたのだ。ソファーに腰を下ろした瞬間、彼女は深い眠りに落ちてしまったのである。それは一瞬のことであり、身体は置いてきぼりを食らったようにこの世に残り、意識は冥界へと旅立って行ったというわけだ。またその夢の世界が、現実よりも現実らしい感覚さえ伴った不思議なものであった。深い森の中を流れる谷川の水に素足を浸けた彼女は、そのあまりの冷たさに驚き、一旦戻りかけたが何とか我慢してそのまま向こう岸まで渡るのだった。彼女はその川を渡れたことでホッと一息ついては見たものの、いったい自分はこれからどこへ行けばいいのだろうと途方に暮れるのだった。すると、どこからともなく人の声が聞こえてきたのだ。それがまた聞き覚えのある声だったので、とても嬉しくなって、どこから聞こえて来るのだろうと、もっと耳を澄ますのだった。その時、意識が戻り彼女は目を覚ましたのだが、しばらくはそのまま眠った振りをして、その話し声に耳を傾けるのだった。

「姉さんは、本当に変わりましたね。ぼくはそう思いますよ。いや、これは実に驚くべきことです」貴臣は、食事をしながら柏木に向かって、小さな声で如何に姉が変わったかを説明するのだった。「一人の女が何をきっかけに、このような変貌を遂げるのか。それは大いなる謎ではありますが、やはり、そこには男の存在があるのではないかと、ぼくは思うのですがね」

「何ですって、それは君にしては随分と大胆な意見ですね」と柏木は冗談っぽく言うのだが、どこか意味ありげな目で彼を見るのだった。

「もちろん、これは一つの仮説にすぎません」貴臣は柏木の反応にちょっと驚いたものの、そこは踏ん張って自説を主張するのだった。「これには彼女ならではの歴史があるわけです。しかし、そうは言っても、女が一番変わるとしたら、それは、やはり男の存在が一番だってことは、これはもう自然の摂理ではありませんかね。それにその大本にあるのは、あなたご自身だってことは、つまり、その何ですよ、あなただって、そのへんのところは多分お気づきだったんではありませんか?」

「そんなことを、こんな所で、それもお姉さんの前で言ってもいいのですか?驚きましたね」柏木は明らかに狼狽してこう言うのだった。

「大丈夫です。ぐっすり眠っているから静かに話せば目は覚めませんよ。きっと疲れたんでしょう。華音のせいでね。それにしても、あの平手打ちは実にスカッとしましたね。華音のやつ何も言い返せず逃げて行きましたからね。これで、恐らく華音の立ち位置は、きっと禮子さんに譲られることになるかも知れません」

「それはいったいどういうことです?」

「いや、ここだけの話し、華音は禮子さんとの覇権争いで、ずっと悩んでいたからです。要するに禮子さんは華音にとって、目の上のたんこぶになりかねないからですよ。今までわがまま放題で、この家で暮らして来ましたからね、だから禮子さんがこの家に入ることで、自分の立場が危うくなると思ったのかも知れません。いやきっとそうでしょう。彼女の性格から言っても絶対そうだと断言できますね。これは、長年彼女に虐げられてきた弟の直感でそうだと分かるからです。いやね、もうだいぶ前になにますが、初めて禮子さんと道でお目に掛かった時から、こうなることはすでに見通していたからです。ぼくはその時、禮子さんとある約束をしたのです。話してもいいですよね。禮子さん。別に秘密の約束でもないのだから。その時彼女はとても心配していたのです。何を心配していたかというと決まってますよ。女の館に一人で乗り込むということをです。お分かりでしょう?自分がどう迎えられるのか、それも相手が自分とそれほど歳も違わない女どもですからね。心配して当然です。で、ぼくはさっそく華音には気をつけなさいと助言したのです。絶対何かしら言って来るからと。現にそうなりましたし、これからも恐らく対立は続いていくでしょうからね。これはどちらかが折れない限り、ずっと続いて行くことになると思います。困ったことに、恐らくどちらも自分から折れるということは、まずないと言えるのではないでしょうか。そうなると取りあえず、二人を仲良くさせるための方策をこれから何とかしなければいけないわけです。そこで、ぼくは考えたのですが、禮子さんにこの家で気持ちよく生活していただくためにも、ぼくが微力ながらも力を貸そうと思ったわけです。つまり、ぼくは華音を牽制するためにも、彼女の味方になることを決心したわけです」彼はすっかり夜食を平らげると、自分のささやかな計画を誇らしげに語り終えるのだった。

「なるほど、貴臣くん。それは実に君らしい賢明なやり方だと思いますね。でも、一つだけ余計な助言をさせてもらえば、あまり禮子さんにばかり肩を持ってはいけませんよ。華音さんが怒りますからね。そこはうまくやらないと、女が怒ると手が付けられませんからね。いや失礼。ご婦人の前でとんだ失言をしてしまいました。でもね、貴臣くん。ひょっとして、あなたも女によって変わった男の一人なのかも知れませんね。だって、どう見たって、禮子さんにまったくメロメロじゃありませんか」

「メロメロとは失礼な。そんな低俗なもんじゃありません。妙な言い掛かりはやめて下さい」すっかり、顔を赤くした貴臣は禮子のほうをチラッと盗み見するのだった。すると禮子と目が合ってしまい、ますます顔を赤くするのだった。柏木はそれを見逃さず、さらにこう言ったのだ。

「貴臣くん、きみも、これから色んなことを学ぶことになるかも知れません。でもそれは、あなたのこれからの人生にとって決して無駄にはならないでしょう。それに禮子さんも、これでずいぶんと安心されたのではありませんか?こんな強い味方が出来たのですからね。それに紫音さんだって、きっと力を貸してくれるでしょうからね。こうなりゃ、あなたも百万の援軍を得たようなものだ。もはや何も恐れる必要などどこにもないわけだ。ねえ、橘さん、あなたもこれで次の選挙に安心して取り組めるじゃありませんか。ですから、希望を持ってこれからも頑張っていただかなければいけません。ぼくも、それなりの協力を今回以上にさせてもらいますからね。それじゃ、ぼくはこれで失礼させていただきます。あっ、お姉さんはそのまま休ませてあげて下さい」柏木は、貴臣が姉を起こそうとしたので、慌ててそれを止めさせたのだ。しかし、紫音としては、さっきから目を覚ましていたわけで、このまま狸寝入りしているのも変なので彼女は思い切って目を開け、さも今目を覚ましたかのように立ち上がって慌ててこう言うのだった。「ごめんなさい、すっかり眠ってしまいました。皆さんがいらっしゃるのに、いったいどうしたんでしょう。本当にごめんなさいね」と、自分でも驚くほどの自然な演技で自分の無作法を詫びてみせるのだった。

「紫音さん。あなたの態度は実に立派でしたよ。こんな言い方は、失礼かと思いますが、本当に見直しました」柏木は、こう言って紫音に笑顔で自分の気持ちを伝えるのだった。

「柏木さん。実際あなたには色々と協力していただき本当に感謝しておりますよ。今回の選挙であなたが示して下さった数々のご厚意は一生忘れることはないでしょう。ですから私も反省すべきところは反省して、次回の選挙まで心を入れ替えて頑張っていきたいと思いますので、また是非ともご協力のほどをよろしくお願いします」橘氏はこう言って深々と彼に頭を下げるのだった。これには柏木も意外なことだと思ったのだが、よほど今回の落選が身に応えたのだろうと、そう勝手に解釈して次回こそきっと祝杯をあげましょうと誓うのだった。しかし、この時橘氏の頭にあったのは、選挙のことより娘のことだったのだ。本当言えば、彼は娘のことをよろしくお願いしますと言いたかったのである。

「柏木さん、私からもお願いいたします。どうか次の選挙でも父にお力をお貸し下さい」いきなり紫音が、こう言って柏木に頭を下げるのだった。このとき紫音が示したこの態度は、誰もが、ああ、彼女も父親のことが心配だったのだろうと、ごく普通に受け取ると思うのだが、その時の禮子には、まるで違って映ったのだ。変に聞こえるかも知れないが、彼女は、この紫音の父親のために進んで頭を下げた健気な姿に、なぜかひどく感銘したのである。というより、そう感じた自分に恐れ戦いたのだ。自分の人生には、そういう家庭の強い絆など、まるで縁がなかったことに思い至ったからで、そんなものは、きずなではなくほだしとして自分には常に感じられていたことを今ふと思い出したからだ。そんな自分が、どうして強い絆で結ばれている家庭に入り、この家庭のために役に立つ人間として、これからを生きて行こうなどと一瞬でも思ったのだろうか。そんなことを思うこと自体、正気の沙汰ではなかったのだ。なぜなら自分の性格に、どこまでもそぐわないものであったからだ。自分の本当の生き方はこんなものではないと、はからずも紫音の姿を見て悟ったのである。紫音のような親を思うその強さが、禮子には一番欠けていたものであり、それこそ彼女がもっとも忌み嫌っていたものであったからだ。もちろん、そう悟った以上、おそらくもはや二度と、その意思は覆ることはないだろうことも同じように悟ったのだ。このような恐ろしい決断をした彼女は、何か束縛の鎖から解放されたような、妙に野性的な力に満ち溢れたような気分になるのだった。すっかり視界が開け、あらゆるしがらみから一挙に解き放たれた自由な人生を、もう一度生きられるのではないかと、心の底から湧いてくるような喜びを全身で感じるのだった。もちろん彼女のこのような考え方を誰もがすんなり理解できるとは思っていない。しかし、人間は、そもそも他人に理解しやすいように生きれるはずもないのだ。誰しも定かではない自分の運命を信じて生きるしかないもので、それを否定したら、生きること自体が意味のないものに成り下がってしまうだけではないか。そんな人生など誰も真剣に生きたいとは思わないだろう。そんな人生を生きるくらいなら、たとえ間違っていようが、もっと充実した人生を生きたいと思うのではないだろうか。その充実したものこそ、その人にしか分からない一番重要な、生きる上での糧となるものだからだ。




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