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ブラックバイトにて

作者: ぺさ

職場に置かれている古いCDラジカセから

最近流行りの脱力系の音楽が流れる

この歌を歌う歌手は若干二十歳の

天然系アイドルで、

その発言や行動が、たびたび

メディアを賑わしSNSを炎上させ

ているようだ。


しゅんも一応、その歌手の事を知っていて、何曲かサビを歌えるぐらいな有名人だったが、

別に好きでもないが嫌いでもなかった


加藤さんは、その曲がラジオで流れた後

苦々しい顔になり

「これを聴いてどうなの?って感じじゃない?何も残らないとゆうかさ」と批判して

しゅんに同調を求めてきた


ブルーハーツや、昔の

有名なロックバンド

ばかり聴いている

いわゆる本物嗜好の

加藤さんには気に入らなかったらしい


しゅんは困った顔をし

苦笑いをうかべて

「そうっすかね」といってごまかしたが、加藤さんの批判は止まらず


「こうゆう歌が売れるのが信じられないよな。どんだけ世の中の奴等って見る目がないんだよ、」

といって世間を嘲笑い

いかにも、自分に音楽を

見る目があるかのような言い方をした



最近まで加藤さんは

バンドを組んで活動していたらしいが

メンバーとうまくいかず

解散してしまい、

現状は

新しいメンバーを探しながら

生活費のために、

しゅんと同じ職場でバイトをしているようだった


そんな加藤さんにとって

苦労知らずで

メジャーデビュー

し、次々とヒット曲をだしている

この若い女性歌手の存在は

もっとも嫉妬や憎悪の対象になるべき

存在な

のかもしれないと

しゅんは、ふと思った


少し前に

なんでバンドを解散したか

加藤さんに聞いてみたら


「大体バンドやりたいやつらって

本当に音楽が好きなやつじゃなくてさ

ただ目立ちたがりやの自己中のやつばっかなんだよ

俺が組んでたバンドのやつらも、結局そうだったし、そんなやつらとバンドやりたくないし」

そう嫌そうな顔をして、

その時も批判して答えてくれた




しゅんが、そんなことを思い出している

間も

加藤さんの機嫌は治らず

近くで作業をしていた

バイト先の一番の古株である

自称映画監督の

山川さんにも話を振っていた


「山川さん、この歌聴いてどう思います?ひどくないすか?」そう加藤さんが聞くと


「うーん」と山川さんは嬉しそうに、

声をあげ

笑顔で語り始めた


「僕的には、好みではないけど、

今の時代に受けそうだよね

若者には聴きやすいんじゃないかな


加藤くんのゆうように、

何も残らないとゆえば、

そうだけど


でも、

僕だったら

お金払って聴きたいとは思わないかな~」と

評論家みたいな口調で喋り終えると

ニヤリと笑った、


加藤さんは、それを受け

「そうすよね。ほんと薄っぺらいすよ

しかもこいつマジで痛い女で

裸足でコンビニ行って買い物したとか

友達いないから人形に名前つけてるとか、

しょうもないことばっかツイッターでつぶやいてるんすよ」と、更に批判を続ける


「そうなの?うわーキャラ作りえぐいね」



「安っぽい炎上商法すよ。だまされてるバカ多すぎて、見てらんないすわ」


「単純にいい音楽知らないん

じゃないの?」


「この女もこの女のファンもセンスない

すからね」などと二人で罵り始め


「絶対5年後消えてますよ」


「確かに、ミュージックシーンも時代によって様変わりするからね」


「歌も下手だし、ルックスだけじゃん」

などと言いたい放題いって

二人とも満足そうに笑ってる


その横で

しゅんは無表情で作業をしていた


内心、

(売れてない奴等が何語ってんだろう)と

思っていたが口にはださず、

ただ心を押し殺し

この時間が過ぎるのを望んでいた。



数日後、バイト先のトイレで

加藤さんと一緒になった

しゅんが

「お疲れ様です」とゆうと


突然

「お疲れ。俺、このバイトやめるから」

と加藤さんが発表した


「えっ」と、しゅんが驚くと


「俺引っ越すんだよね山梨のほうに」


東京にいて何か意味ある?人多いし、物価高いしさ、」と悟った表情で語った



「まぁ、そうっすけど

でもバンドはどうするんすか?」としゅんが疑問に思い尋ねると


「いいメンバーも集まらないし

もうプロではやる気はないよ、やるとしたらあっちで

趣味でやるかもね」と悪気なく飄々と

加藤さんは答えた



(だったらこの前の語り合いはなんだったんだよ。

偉そうに批判してたから、てっきり

音楽で勝負するつもりなのかと思ったら

なんの意味もねーのかよ)と

しゅんはいらっとしていたが顔にはださないで黙っていると、


「松田くんはずっと東京にいるの?」

と聞かれ

本当はもう加藤さんと

喋るのも嫌だったが

「わかんないっすねー」と

適当に答えてごまかした

すると、

加藤さんは若干馬鹿にしたようにフンッと鼻で笑い

「わかんないって、、

松田くんもう30でしょ?やばくない?

「もう、年齢的に先のことを考えたほうがいいよ」と自称ロッカーとは思えないような心配をしてきた


「貯金はあるの?」とデリカシーのないことも聞かれ

しゅんが戸惑いながら

「いや、全然」と答えると

「ヤバイでしょ

少しずつでも貯めてったら、老後のことも考えて」

と余計な心配をしてきて、

「こんなブラックバイト早く辞めたほうがいいよ」と、言い残し

バタンとドアをあけトイレからでてった


(なんだよあの人、自分が辞めるから

言いたい放題言いやがって

大体田舎に行って救われると思ってるけど田舎は田舎で大変らしいからな

でもたしかに東京にいて何になるんだろう?このままずっと東京にいて、

ここで働いてるおっさんたちみたくなったら、もう手遅れだぞ、てかもう手遅れだよな、どこに行けば救われるんだ)


しゅんはいらつきながらいつものように自問自答していたが

答えは出なかった

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― 新着の感想 ―
[一言] 良くまとまっている感があります。すらすら読めました。
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