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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

脱皮(ハードボイルドSF)

作者: カタツムリ

夜が明けない。

染みるような振動が体を貫く。


この階層まで揺れることは珍しい。

窓の外には建築者の大きなネオンが光る。


何が起きた?・・・頭は回らない。

そうだ、今日の夜食に酒を飲んだ。

水・・・と思う間もなく、

さらに大きい振動が部屋をピリピリと言わせている。


動けない・・・

気づけば観葉植物やらなにもかもが無音で倒れて

俺自身も床に倒れている。


打った頭の中でドクドクと音がする。


遅れて部屋がメチャクチャになる音が聴こえた。


「音速モードがONになっている?」


声がする。


きゅるるるという音とともに強化ガラスがひび割れ、

外に飛んでいく。


俺は中空へ一気に飛び出した。


「逃げたぞ!!」


はるか下に黒い影が顔を出している。

自警団が来たのだと理解する。


パラライザーは使ったことはあったが、

自分にくらったのははじめてだった。


音速モードがONになっていなければ、

おれはあそこで自警団に惨殺されていただろう。

ビルのあちこちに、くし刺しにされたしゃれこうべが見える。


「逃げ切れるか?」

自警団の使うパラライザーは部屋ごとめちゃめちゃにする。


空中に発したら広範囲に広がる。

重力羽を操って一気にビルの通気口まで上昇して入り、

手りゅう弾を落としておく。


通気口のどん詰まりでまた「ビン」という音がする。

音速モードがONになり、通気口に穴をあけて飛び込んだが、

パラライザーをくらった。

通気口を滑り落ちることは避けられたが、

この動けない数ミリ秒の間に自警団は近くまで来ているかもしれない。


俺は紛争時に作られたアンドロイドだが、

自警団は危険視して駆除しに来る。

ニンゲンがおれと何が違う。


俺の何が悪い。


暗い部屋のドアを壊して飛び出した廊下には、

俺が破壊できない甲冑に俺のペットの血を塗ったなんとも醜い

自警団が待ち構えていた。


「ジワを殺したな・・・」

ジワの美しい顔が甲冑のとげに刺さっている。


ペットのジワは自警団と同じ人間だが、

俺が育てたという理由で殺された。


というか、あの甲冑を着ていないと、パラライザーで人間は爆死する。


我々の力で作ったビルやアンドロイドを管理できずに、

破壊しようとだけする自警団が、ジワと同じ生き物だとは思いたくない。


ジワは俺の子を孕んでいた。

我々はニンゲンと交信するのに、最初、

脳とこちらのシステムをつながないといけない。

その時に入った細胞が、ニンゲンも予測していなかったが、

子を孕ませる。


孤児だったジワを見つけたとき、俺は新しい体が必要なほど損傷していた。

ジワに寄生し、ジワから生まれなおした。

何が悪い。

ニンゲンどもも、最後まで生きようとするだろう。


そのシステムを使って、その甲冑を我々の子どもから引きはがしてきただろう・・・



自警団の設備では、我々を孕んだ子宮は破壊できない。

まだあそこにいる。

ジワと俺の子は。


シュッ


俺はジワも嫌った姿に帰る。

戦闘モードの虫のようなこの体。作ったのはお前らだろう!!

自警団の甲冑の隙間から首をはねる。

「字護早危険流入死!!」


自警団から声が上がるが、

おれのムチのような手は止まらない。


ジワが俺にくれたこの体。


ジワの子は奪わせない!!・・・



血と骨と甲冑しかない空間で、

ジワの断片から小さいかけらを取り出す。


・・・ここまで育っていたら、

ジワから出ても生きていける・・・


かけらを通気口に投げる。


我々は子供を育てるという風習がない。

混血はニンゲンが育てたがる。


・・・美しいからだ。


・・・わが子と暮らせないことがジワを失ってはじめて俺を襲う。


我々は、互いが会えば、死ぬまで争うように作られている。

しかし、ジワの胎を借りた俺にも何かが混ざったのだろうか・・・


自警団は駆除に失敗した区画には、二度とこない。

勝てないからだ。


イエへカエロウ・・・


散らかって窓も壊れたイエに帰ったら、

ジワに似た女の子が窓辺に立っている・・・


「おまえ・・・なぜ帰ってきた?」


次の瞬間俺のシステムは止まった。


ジワの子がやったのだと、死後の世界ともいうのだろうか、

暗闇とも光ともつかない空間で、

思念だけで、思った。


我々は親も殺し、孤独に生きていく・・・


俺のシステムをダウンさせたことで、

ジワの子に俺がダウンロードされたはずだ。。。


この終わりのない苦しみを、

ジワから教わった。


悲しみが俺の復活しようとする本能を絡めとった。


おれは恐らく、もう親を殺さなくていい・・・


暗闇で考え続ける小さな細胞は、

ニンゲンの中に産み落とされ、

なにを思うのdろう・・・と、考えた。


ジワの子はニンゲンに捕獲され、

子も大事に育てられた。

蝶のような羽を持つ姿は

妖精と賛美され、

笑顔の中で永遠に生きていく・・・


代替わりも悪くない。

そう思った人間に近い少女は、

何かに呼ばれた気がして、


高いビル群を見上げるのであった。

「読みたいものを、書けばいい」

そんな言葉でメモパットに書きました。


友人に当サイトを案内いただき、のせました。


楽しんでいただけたら幸いです。

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