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今年の夏は涼しくていい

作者: 夢路鈴

今年の夏は涼しくていい。


今日は8月12日、天気は雨のち曇り。

昨日の夕方から今朝にかけて雨が降ったおかげで、夏のくせに今日はとても涼しい。


今年の夏は涼しくていい。


いくら涼しいからと言って、外には出ないんだけどね。


春に大学生になって、私は驚いた。高校生の時のクラスメイト、講義で隣に座った女の子、サークルの仲間。みんな垢抜けていて、私には眩しい。


___この子、全く日に焼けてない!肌が元から白いのかな?あの子はすごく綺麗な黒髪…。髪の毛、染めてないのかな?どうしてあんなに真っ直ぐな髪をしているの。いつも端に座ってる背の高いあの人は、真っ赤なリップが良く似合ってる___。


大学に入ってから、美醜のことばかり考えている。せめて今年は日に焼けまいと、外出は必要最低限に抑えると決めた。…私もあの子みたいに、白くて細くて儚い女の子になりたいから。


今年の夏は涼しくていい。


昔はもっと暑かった気がする。


でも、高校生の頃の夏休みも、こんなもんだったかもしれない。案外暑くない、夏らしくない夏。私はいわゆる帰宅部で暇だったから、部屋にこもってゲームしたり、友達と遊園地やライブに行った。


中学生の頃はバレー部に入っていて、夏休みはその練習や大会でびっしりと埋まっていた。毎日蒸し暑い体育館で、全身に汗をかきながら白線の向こうへボールを叩き込んでは、夏の暑さを恨んでいたっけ。


小学生の頃はどうだろう。あの頃は日焼けなんか気にせず、海に遊びに行ったりしたっけ。反抗期もまだ来てなくて、両親と一緒に色んな場所に行ったな。残暑が厳しかったような気がする。


…今年の夏は涼しくていい。


私はもう大人にならなくてはいけないから。自身にも他人にも気を遣わないといけないから。親を頼らず生きていかなければならないから。


大人になるって、きっとこういうことだ。


今年の夏は涼しくていい。


気づいたら、頰が濡れていた。

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