自己紹介
俺は勢いよく血圧測定機に似た装置に手を入れ、起動スイッチを押した。
すると俺の右腕に這うようにして付いている痣が白く輝き始め、やがて消えていく。
(うわぁ!!)
凛子の事をすっかり忘れていた。
おーい大丈夫か?
(うん、大丈夫だけど、何か変な感じ。・・・うわ!! 引き剥がされる・・・ッッッ!)
大丈夫か!?
しかしこれ以上凛子に話しかけても反応がない。
装置の横のホルダーにセットしていた宝石が、鮮やかな濃いコバルトブルーの色に輝き始める。
「ふーん、凛子ちゃんが『神の如き者』なんだね。」
「・・・なぜ名前を知っている? 陽人」
「まぁ、それはおいおいね。それより君達がミカエルかー。」
ミカエルと言うとあれだよな、大天使とか言われてるやつ。
「・・・まぁ、徠翔君には『神の如き者』の説明をしようかな。」
「おう、よろしく頼む。」
「君達の『神の如き者』の象徴は炎、所属は四大天使、七大天使。さらに大天使、力天使の長だね。」
「それで、武器はどこにあるんだ?」
「この宝石を使うよ。」
宝石を使う? そんなんで勝てるわけないだろう。まさかこれが剣やら銃になる訳でもあるまいし。
「この宝石を握って胸の前まで持って行って。」
俺はコバルトブルーの宝石を胸の前に持っていく。
「それで、中にいる凛子ちゃんに力をくれって話しかけて。」
「凛子、力を貸してくれ。」
すると宝石が光だし、目の前まで宝石が浮かび上がってくる。そして宝石から上下左右に真っ赤な光が迸る。上に伸びていった光は先端が細くなりながら1.5m程まで伸び、下の方に伸びていった光は20cm程で止まる。左右に伸びた光はともに10cm近く伸びて、真紅の光剣が出来上がった。
「これが徠翔君の剣だね。」
「ふぅ、初めてだけどうまく出来たみたいね。」
ここでやっと凛子の声がした。
「これ全部凛子がしたのか? すっげーな!!」
「ふふん、凄いでしょ、もっと褒めてもいいぞ。」
得意そうに鼻を鳴らす凛子。自分でも満足しているようだ。
「でも、注意が一つある。」
陽人が喜んでいた俺達に水をさす。
「なんだよ。」
「ついでにみんなも聞いてくれ。これからもっと勉強して、訓練して天使の力を沢山引き出せるようになるんだけれど、力を出しすぎたら、自分では制御出来ずに『堕天使』になり力が暴走してしまう。」
「なんだよそれ、無限に力を使える訳では無いのかよ。」
「うん、君達一人一人の容量てものがあるからね。」
「その容量を増やすことは出来るのかよ?」
容量を増やせば強くなれるということじゃないのか?
「それはもちろん出来る。修行をしないといけないけどね。よし、皆も武器を得たわけだしちょいと自己紹介でもやりますか。」
いきなりかよ!! 俺何も考えてねぇぞ。
まずは上本徠翔ですからだろ、それから武器は『神の如き者』ですだろ、それからそれからうーん…あ、俺は端っこじゃないから大丈夫か。早くても3番目だ。
「では徠翔君から行ってみよう。」
「はぁ!? 何で俺からだよ!? 普通は端っこからじゃねぇのかよ!!」
「いや、君がどうせ端っこからだからトップバッターは無いなとか思ってそうだったから。」
「ちっ、馬鹿にしやがって。分かったよ分かりましたよ、やりゃいんでしょ。」
このやろう、完璧な自己紹介して陽人を嘲笑ってやる。
「初めまして上本徠翔れふ(噛んだ)」
「プクッ」
この瞬間俺の中の何かが切れた。
すぐさま俺は行動を開始する。まずは目標を確認する。もちろん陽人だ。次に体を低くしとてつもない力で地面を蹴る。そしてまだ腹を抑えて笑っている目標の目の前に移動。右腕を後ろに引いて目標の顔面めがけて振り抜く。
しかし陽人はこの時笑っていた。まるで赤子をあやすように。
(・・・なんだこの感じは。)
思いっきり振り抜いた俺の右腕は陽人の顔面に当たることはなく、空振りした。
(あの零距離からの一撃を避けるだと? あいつは何者なんだ?)
「早いね、けど僕には当たらない。」
「・・・お前何者だ?」
陽人を睨みつける俺とヘラヘラ笑っている陽人を驚いた様子で見つめるみんな。
「なんだ、あいつめっちゃ早くなかったか?」
「ですよね、陽人さんも良くよけれましたね。」
みんながざわざわ話し始める。
「はい、皆さん静かに。では、僕から改めて自己紹介をしようかな。僕は梓真陽人。君達と同じ陽人班の班長さ。使用武器は聖剣序列第1位『裁キノ聖王』。階級は大佐ね。僕には敬語はいいけど他の上官には必要だよ。てことでこれからよろしく。徠翔君から回して。」
今度こそしくじらないようにしないと。
「俺は上本徠翔、歳は17。宝石には『神の如き者』が入る。凛子って名前だ。これから宜しく。」
元の席に戻ってチラリと横の男を見る。身長が高く赤いバンダナを巻いている筋肉男だ。海賊船に乗せても違和感がないな。
「俺は轟灰、20歳だ。天使は『神の秘密』、徠翔と同じ長剣だ。名前は美加。以上だ。」
次に最初に陽人に質問した金髪ツインテールの少女が立ち上がり、高いソプラノ声で話し始める。まさに名家のご令嬢って感じだ。
「私は西園寺真央、17歳よ。天使は『神の高潔』、短剣だったわ。名前は婚約者の澪、これからよろしくね。」
次は目線が鋭い物静かな青年だ。西園寺と並べたらお嬢様と脇に控える若い執事って感じだな。
「・・・月見里聖、16歳。天使は『神の獅子』、巻物みたいなのもだった。名前は幼馴染みの里凪。・・・因みに西園寺とは赤の他人だ、勘違いしないように。」
ギロッとこちらを睨んでくる月見里。
コイツはココロが読めるのかよ。
「・・・心が読めるわけではなく君の表情がわかりやすいだけ。」
・・・瞑想瞑想瞑想瞑想瞑想瞑想瞑想瞑想瞑想
「・・・あの、私やってもいいですか?」
俺と月見里の茶番をはたから眺めていたこの中のメンバーでは一番背が低い短い茶髪の女の子が声をかけてくる。
「うん、ごめんね。」
微笑みながら軽く頭を下げる。するとその子はいえいえと掌を横にして顔の前でヒラヒラと左右に振り、頭を下げ返してくる。
うん、かわいい。
「私は進藤燈華って言います! 歳は15です! 天使は『神を見る者』で、ピンク色の長剣と赤い鎧が出てきました!名前は弟の冬夜です! よろしくお願いします!」
元気いっぱいの自己紹介ありがとう!
次は誰だと思って見ると燈華にそっくりな子がもう一人いた。
「・・・わ、私は進藤颯華です。15歳です。燈華とは双子で私が妹です。天使は『神の栄誉』です。水晶が出てきました。名前は弟の昼夏です。因みに冬夜と昼夏は双子の弟です。よろしくお願いします。」
2人はとても顔が似ているが、性格が対極なので見分けれずに恥をかくことは無いだろう。
次は最後の男だ。年は同じぐらいで、1人で街に行くと周りに沢山の女の子を侍らせていてもおかしくないぐらい白髪の美形だ。
「東山颯汰だ。17歳。天使は『神の代理人』だ。武器は『翼』だ。名前は妹の智子。よろしく。」
「うん、全員終わったね。明日からこの、クソったれた世界について勉強していきます。普通の学校生活に戻れたと思っていいよ。」
うえぇ、人類滅ぼされかけても授業があんのかよ。
「はいはい、みんな嫌な顔しない。殆どが戦闘訓練だから楽しいよ。」
うん、楽しくない。
「明日は1人1人能力を個別に解説します。今日はこれで解散。」
次回で一人一人の能力を説明します