一人
超短編。
他の作品とは全く関係ないです。
「悪魔」
人は俺をそう呼んだ。
なぜかって?
それは…
俺が
“世界を壊したから“
途切れ途切れに浮かぶ雲の下を、神秘的な深い青が覆い尽くす。
大地を失った世界には、もう海と空しか残っていない。
その二つを区別する境目さえ曖昧で、世界は一つになったかのようだった。
遥か遠く、太陽が顔を覗かせている。
心細げな顔で、少年がこちらを見つめた。
足にぐるぐると巻かれた包帯が痛々しい。
今にも消えてしまいそうなほど頼りないその影は、太陽の光を背にぼんやりと佇んでいた。
少年は、まだこの現実を理解できていないようだった。
なんせ、俺は少年にとって殺すべきはずの相手であるというのに、まるで助けを求めるようにこちらを見上げているのだから。
この世界にいる人間は少年と俺、だだ2人だけ。
―だけど、ホンモノは…
空と海が地響きのような音を立てて動き始めた。
脳みそが覚醒し、身体中の血が沸き立つ。
遥か遠くで太陽が俺たちを照らす。
ジリジリと真っ赤な光は肌を焼きつ尽くすように燃えていた。
その時、光に目を奪われた少年がふらふらと前に歩き始めた。
足元では、光を反射してきらきらと輝く水面が
パシャリパシャリ と音を立てて揺れている。
目の前のことしか考えられないタイプなのだろうか?それとも忘れっぽいのか。
どちらにせよ、もはやこちらのことなど頭にはないらしい。
やっぱりあいつはダメだな。
呆れて笑いさえ込み上げてくる。
そろそろお別れの時間だ。こんな世界、さっさと終わらせてやろう。
じゃあな。
空と海がどろどろと溶け出す。
青と青は混ざり合って、黒みがかった濃い青色へと変容していく。
太陽の光が少年を包み込み、少年の影は霞んで薄くなっていった。
投げかけた言葉はついぞ少年のもとには届かなかった。
ーーー
その日、彼の心から一人の人格が消えた。
もう彼の心に二つの人格が存在する必要がなくなったからだ。
この日を境に、人々は彼のことをこう言うようになった。
「いつまでも少年のような心を持っている、天使のように愛らしい人だ」と。
もう世界に残っているのは一人だけ。
消えたのは…。




