スヴァールクスの意志
「それで?まずはどこから手を付けるのだ?とは言ってもお前の勢力はソラリスで最大だ。すぐに攻めるべきだと思うが?」
「勿論だ......と言いたい所だがな......私はこの通り大きすぎて洞穴から出るのも一苦労でな。だからこそ遺伝子改造で作った私の目であり耳、そして手足でもあるクイーンと、それが生み出す圧倒的な数の力が我らの武器だ。ただ、それだけでは残る敵のベイアとロンリオの2人には勝てぬのだよ」
メルターはオロニアルを見上げる。
彼の身体は洞穴を埋め尽くすほどの大きさの目玉であり、奥の方には剥き出しの脳みそとそこから生えた触手が僅かに動いていた。
「更に厄介な事に奴ら2人は手を組んで我らに対抗しようとしているのだよ」
「まぁ、強敵に対抗するならば常套手段だろうな......それで何か策はあるのか?」
「片方を良い条件で釣って偽りの同盟を結び、もう片方を滅ぼそうかと考えている。ちょうどその交渉の為にベイアからの使者をここへ呼んでいる。ここは私に任せて、君は大船に乗ったつもりで居ると良い」
「そうだな......まぁ悪い策では無い......試してみるか.......?というか、やけに自信があるな......」
「ふふっ......まぁ、見ていてくれ」
2人はとりあえずオロニアルの提案を実行に移す事にした。
ーー
しばらくしてベイアからの使者が2人の元へやってきた。
「主人であるベイアより遣わされました。オロニアル殿。よろしくお願いします」
洞穴の2人の居る部屋へ入ってきたのは強靭な鱗を持つ半魚人型のスヴァールクスだった。
「よく来たな。早速だが私がオロニアルだ。姿を見せるのは初めてだからな。そしてこちらはメルター殿だ。訳あって私と手を組んでいるのだよ。聞いた事くらいはあるだろう?」
「はい。お目にかかれて光栄です」
形式的な社交辞令を述べて使者との会話は始まった。
「さて早速だが、我らはベイア殿に対して同盟を申し込みたいのだよ」
オロニアルは早速本題を切り出した。
「結論から申し上げます。我が主人ベイアは今のままでは同盟の申し出を拒否すると仰っています」
使者はオロニアルの申し出を即座に拒否した。
「ほう......それはどうしてかな.......?」
「詳しい事は申し上げられません。ただ、現在のオロニアル殿と我らの勢力は均衡を保っており、それを変えるつもりは無い、という言葉のみ預かっております」
オロニアルは少しの間沈黙してから口を開いた。
「そうか......ベイア殿の言葉しっかりと心に刻んだよ。また話し合えることを楽しみにしているよ。だが、せっかく来たのだ。ベイア殿への友好の印として古代龍の骨を用意したのだ受け取ってはくれぬか?」
「え?いや......しかし......」
使者は品物の受け取りを渋った。
「分かっている。同名の件については承知済みだ。ただ、せっかく用意したのにだ。受け取るだけ受け取ってはくれぬか?それに使者殿への食事も用意してあるのだよ」
オロニアルは使者を少し怪しい程に引き留める。
善意の提案であるが故に使者も断りづらく、渋々食事と贈り物を受け取ることに同意した。
しかしその時
「我が主人、ロンリオより遣わされました。オロニアル殿はいらっしゃいますかな?」
そこに姿を現したのはロンリオからの使者だった。
「ああ、よく来てくれたな。そこで待っていてくれ。今ベイア殿からの使者と話しているのでね」
オロニアルはロンリオからの使者に対して、対照的に冷たく接した。
「オロニアル殿からの好意は受け取りました。これ以上長居しては主人が心配致しますので、これにて失礼致します!」
ベイアからの使者は逃げるように去って行った。
「ふぅ......では、休むとするかな......」
「お、おい......ロンリオからの使者を待たせたままだぞ!」
「ん?ああ、そうだったな......」
オロニアルはロンリオからの使者の存在を忘れたかの如く、そしてそれを思い出してからも非常に無礼に振る舞った。
そして使者との話し合いは淡々と終わった。
「それでは失礼致します」
ロンリオからの使者は頭を下げて去っていく。
「こうして使者の対応に差を付けて溝を作るのがお前の狙いだったのか?」
「流石に分かりやすかったか。まぁその通りだよメルター。これで使者からの報告を聞いたロンリオはベイアが我らと通じてると疑うだろう。それが私の狙いだ」
オロニアルは得意気に返答した。
「そんなに上手くいくもんか?」
「ああ、これは成功する。それは間違いないさ」
やがてベイアとロンリオの小さい疑いは大きくなっていき彼らの離間は成功した。
その争いの隙を突いてオロニアル達はソラリス星を統一する事に成功した。
その後2人は今後について話し出した。
「驚いたな......こうも上手く行くとは......お前の慧眼は凄まじいなオロニアルよ」
「ああ、実は私は未来を見れるのだよ。まぁそんなに万能では無いのだがね。断片的にポツポツと見れるだけだ。だが、この離間の策の結果は見えていたから自信を持っていただけさ」
「未来......だと.......?お前が嘘を言うとは思わんが......少し信じがたいな......」
「そうだろうな、故に見せよう。私が目にした遥か先の未来を......そして宇宙の終焉を......メルター、もう一度私の意識を共有してくれ」
メルターはオロニアルに意識を向けて彼の予言した未来を追体験し始めた。




