2人の居所
「あと、もう少しで着くよ」
少年とシタデレはキャンプの端の方まで歩いてきた。
「あ、見えてきた。あのテントだよ!」
少年は指を刺してキャンプの隅にある小さなテントを指差した。
「......待て......」
シタデレは直前で突然立ち止まって周囲を見回した。
「え?どうしたの?」
少年はシタデレを不思議に思って声を掛けた。
「ふん......隠れているつもりか?バレバレだぞ」
シタデレは数メートル離れた木箱を睨みながら話した。
「ばれてたのかよ......」
「どうする?出ていく?」
木箱の裏からは複数人の子供の話し声が聞こえた。
「さっさと出てこい......さもなくば箱ごと撃ち抜くぞ」
シタデレは担いでいる弓を手に取って構えた。
「わ、分かった!分かったから......撃たないでくれ!」
隠れていた子供達はゾロゾロと姿を現した。
彼らは先ほど少年を見捨てて逃げた仲間たちだった。
「お、お前ら!よくも俺を置いて逃げやがったな!」
「わ、悪かったよ!でも、この人のオーラがホントに怖くて......つい......ホントにごめん......」
少年の仲間達は謝罪したが、少年は許さずに言い合いに発展した。
「お前らの仲直りごっこなんてどうでも良いんだが......とりあえず約束通り礼はやるよ。ほら」
シタデレは一枚の金貨を少年に向けて指で弾いた。
「おっと......!」
少年は飛んできた金貨をキャッチした。
「え!?これって......本物の......宇宙政府の金貨だよね!?すごい......ありがとう!」
少年が渡された金貨は宇宙政府発行の物であり、戦闘によって元々流通してたドルゴヌの貨幣がインフレしたオイミャク星ではまさに基軸通貨と呼べる代物だった。
「言っておくが、この情報が嘘だったら地の果てまで追いかけてやるからな......」
「う、嘘じゃないよ!ホントだよ!」
シタデレはそのまま少年に教えられたテントに向かった。
「おい!イーダ、居るか?」
シタデレはテントの入り口を捲って声を掛けながら中を覗いた。
「んん.......?シャナ......ちゃん.......?」
イーダは眠っていたが声に気付いて起き上がった。
「シャナ.......?ああ、あいつか......私だ、シタデレだ。覚えていないか?」
「あ......シタデレさん......思い出した!でも、どうしてここに.......?」
イーダは首を傾げながら質問した。
「お前の力が必要だ。だから私と共に来い。ここよりは良い生活を保証してやる」
シタデレはイーダに手を伸ばした。
「え......えっと、その......どうしたんですか.......?とりあえずシャナに聞いてみないと......」
イーダは突然の事態に困惑した。
「仕方ない......シャナはいつ帰って来るんだ?あいつが帰ってきたら出発するとしよう」
「シャナは......多分......そろそろ帰ってくると思います......」
「そうか......ならば、ここで待とう」
シタデレはテントの入り口に背を向けて居座った。
「イーダ、お前は身体が悪いのか?顔色が良くないぞ」
シタデレは暇を潰すためにイーダに話しかけた。
「はい。私は身体が弱くて......あまり運動とかが出来なくて......」
「そうか......こんな不衛生な瓦礫の中にいれば治るものも治らんと思うがな......」
シタデレは独り言の様に呟いて、会話はすぐに終わりテントの中にしばらく静寂の時が流れた。
「うおりゃあああああああああ!」
突然シタデレの背後から叫び声が聞こえた。
声の主はシャナであり棒切れを手にシタデレへ向かってきた。
「ふん!」
シタデレはシャナの棒切れを抑えて、そのまま彼女を持ち上げて無力化した。
「なんだいきなり......気でも狂ったか?」
「って......あれ?シタデレ......さん?」
シャナはシタデレの顔を見て彼だと気付いた。
「ご......ごめんなさい......怪しい人がテントの中に入ってきたのかと思って......私の勘違いでした......でも、どうしてシタデレさんがここに?」
「確認ぐらいしろ......まぁ良い、私はイーダを連れて行く為に来たのだ」
「え?イーダを?どうしてですか?」
「前にイーダに特別な力があるという話はしただろう?それで実験したい事があるからだ。勿論危険は無い、それに......この劣悪な場所よりかは安全な暮らしをさせてやるのだ。断る理由は無いだろう」
シタデレはシャナへ自らの目的を説明した。
「そう......なんですね......シリカさんのお友達のシタデレさんが言うのなら間違い無いんでしょう......このままイーダちゃんがここに居ても良い事は無いと思いますから......イーダちゃんをよろしくお願いします」
「でもシタデレさん!イーダちゃんが安全っていうのは本当なんですよね?そこだけは本当に......本当にお願いします......」
説明を聞いたシャナは懇願する様にシタデレに伝えた。
「あ、あのシタデレさん?いいですか?」
突然イーダが口を開いた。
「なんだ?」
「その......私がお役に立つのなら協力します。でも、シャナちゃんを一緒に着いてきても大丈夫ですか?」
「ふむ......まぁいいだろう」
「あ、え?良いんですか?ありがとうございます!」
イーダは承諾されることが意外だったのか若干驚きつつも礼を言った。
「さて、それでいつ出発できるのだ?私は早く行きたいのだが?」
シタデレが2人に問いかけた。
「私は......いつでも......ここに友達も居ないし......でも......お姉ちゃんが帰ってくるかもしれないから......早めに終わらせたくて......きっと......きっと帰ってきてくれるから......」
イーダは今までの差別を思い出してオイミャクへの未練は無いと考えたが、唯一の気掛かりである姉のシリウスと入れ違いになる事を考えた。
「ああ......お前の姉、シリウスはこっちに居るぞ。来るなら会わせてやる」
シタデレは伝えるか一瞬悩んだが、シリウスの安否を伝えた。
「え?お姉ちゃんが居るんですか?......でも、どうしてシタデレさんの所に?」
「え?シリウスちゃんがそっちに?どうして.......?」
2人は驚いてシタデレに質問した。
「詳しくは言えんが......こちらに居るのは確かだ。嘘ではないぞ」
「分かりました......シタデレさんを信じます」
シャナとイーダは改めてシタデレに同行する決意を固めた。
「そうか......ならば来い。ここに長居する理由もない」
シタデレは即座に動き出し、慌てて2人も彼に着いて行く。
(正直信じさせるのに難儀すると思ったが、こうもあっさり上手くいくとはな......この2人、もう少し他人を疑うという事を覚えた方がいいんじゃないか.......?)
シタデレは顔見知りとはいえ2人の警戒心の薄さを案じながら歩きだした。




