目的への障害
「この辺りか......」
シタデレはブリンクを駆使してテントの密集する難民キャンプの一つへとたどり着いた。
シタデレがキャンプに足を踏み入れると複数のテントの中から貧相な身なりの子供達が姿を現してシタデレを物珍しそうな視線で見つめた。
「何の用だ......?」
視線を不愉快に感じた彼は苛立ちながら子供達を睨み付けた。
「うわっ......!」
睨まれた子供達は即座にテントの中に隠れた。
「ちっ......!」
シタデレは舌打ちしながら視線を元に戻す。
彼が視線を背けると子供達は再びシタデレを見つめ始めた。
「ハァ....何なんだ一体......」
やがて子供達はシタデレをまるで狩りをする狼の群れが獲物を狙う様にゆっくりと囲み始めた。
そしてちょうどシタデレの背後に居た1人の少年が彼に気付かれぬ様に抜き足差し足で、ゆっくりと近づいてきた。
(気付かれていないつもりなのか......?私も舐められた物だな......大方、金目の物を盗もうとしているのだろう。捕まえて案内させるか)
シタデレは辺りを見渡して何かを探しているのに集中して気付いていない素振りを見せた。
(そろそろか......)
1人の少年がシタデレの背後から彼の背負う弓に手を掛けて持ち去ろうとした。
「へへっ......!ちょろいもんだぜ......って、あれ?」
弓を手に取った少年は走りながら先ほどの場所を振り返ると、居るはずのシタデレの姿が見えなかった。
「うわああああああ!」
少年が視線を前に戻すと目の前にはブリンクで先回りをしたシタデレが居た。
「ふんっ!」
シタデレは走ってきた少年の胸に強烈な前蹴りをして、少年は吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。
「やべえぞ......逃げろ......!逃げろ......!」
シタデレの強さを目の当たりにした周囲の子供達は戦意を喪失して逃げ出した。
「全く......狙うにしても、少しは相手を選べ......」
シタデレは少年が衝撃で手放した弓を拾い上げながらゆっくりと近づいていき、そのまま倒れた少年の胸ぐらを掴む。
「いいかクソガキ......一度しか言わないからよく聞け。このままボコボコにされてから警察に突き出されるか......それとも私に協力するか......好きな方を選べ」
「だ、誰がお前なんかに協力してやるか!警察に突き出したきゃ出せよ!」
捕まった少年は強気の言葉を返すが、それを聞いたシタデレは少年の首を強く握り締めた。
「ボコボコ......とは言ったが、その途中で死ぬ可能性も考えておけよ......言っておくが私は、情け......容赦......と言った言葉は知らん......これが最後のチャンスだ......協力するのなら、窃盗の件は不問にして相応の対価を払ってやる......死にたいか?生きたいか?......早く選べ」
シタデレは少年に明確な殺意を持った冷酷な目線を向ける。
「ひっ......わ、分かりました......協力します......」
「1つ教えてやろう。利口な奴は長生きするぞ。逆に利口じゃ無い奴ほど早死にする......早く立て......」
少年とシタデレは立ち上がった。
「それで......一体俺は何をすれば.......?」
少年はシタデレに尋ねた。
「イーダ・ヤゴーダという人間を知っているか?知っているなら案内しろ」
「イーダ......ヤゴーダ......聞いた事はあるな......でも、何だったか......」
「なんだ?知ってるのか?」
「あ!......思い出した!」
翔はしばらく考えた後にハッとした様な顔をした。
「場所が分かったのか?ならば案内しろ」
「え......ああ......」
少年は突然歯切れの悪い返事をした。
「なんだ突然?何かあるのか?」
「イーダ・ヤゴーダは......レッド遺伝子の一族人間だ......その認定を受けた人やその家族は、国家に反逆したり大きな害を与える恐れがある人間だから根絶されるべきだって......大人達は言ってた......」
「レッド遺伝子......?ああ、ドルゴヌの差別制度だったな。馬鹿馬鹿しい......たとえ祖先が誰であろうと、生物の能力や性格は全て環境で決まる。そんな事すら分からないから国がこうなったのだろう......とりあえず早く案内しろ」
「あ、ああ......分かったよ......」
少年は嫌々ながらも案内を始めてシタデレはそれに着いていった。
「くそっ......!あいつら俺を見捨てて逃げやがって......後で覚えてろよ......」
少年は歩きながら自らを見捨てた仲間への文句を垂れた。
「文句を垂れるだけならば誰でも出来る......その失敗を認めて成長出来ない、お前の様な人間こそ根絶されるべき人間だ」
「なっ......なんだよ突然......失敗を認めるくらい......それくらい......俺だって出来るよ......」
シタデレの言葉に少年は自信無さげな返答をした。
「ていうか、あんたはどっから来たんだよ?その......なんていうか、変なの着てるし......身体がロボットみたいだ......」
「これはエリディアンの機動甲冑だ......戦闘用にも正装にも使える物だ。変なのではない......」
シタデレの身に付ける紫色の甲冑に少年は興味を示した。
「ちょっと触らせてくれよ!」
少年はシタデレの甲冑や弓に手を伸ばした。
「汚い手で触るんじゃない!これが欲しいのならばお前ら人間が一丸となってここを復興させろ......私から言えるのはそれだけだ」
シタデレと少年は目的地へ向けて歩き続けた。




