残る爪痕
戦火の過ぎたオイミャク星では、住居を失った難民達が大量に発生して、彼らは各地でテントを建てて難民キャンプを形成していた。
ソルア率いる旧ドルゴヌの将兵達が、治安維持等を行うも、あまりにも多い難民の数に軍の対応は追いついていなかった。
「これでパンの配給は終了だ!まだ貰ってない奴は次の配給を待ってくれ!」
難民キャンプの中央にある広場で、配給の担当官はパンを求める長大な難民の列に呼びかけた。
「そんな......俺は前回の配給だって貰えてないんだぞ!」
「私の子供がもう3日も食べてないの!誰か......食べ物を分けてちょうだい!」
列に並んだ難民達は配給への不満や周囲の者に食べ物を求める者など様々な人間が声をあげた。
(良かった......今回は何とか配給を受けられた......急いで帰らなきゃ......イーダちゃんが待ってるから......でも、周りにはばれない様にしなきゃ)
そんな中、運良く配給を得られたシャナはそれを隠しながら足早く帰ろうとした。
「ねえ、そこのあなた。お願い、そのパンを私に譲って貰えないかしら?」
シャナに声を掛けたのは小さな子供を引き連れて、痩せ細りボロボロの服を着た女性だった。
女性が連れた子供達も物欲しげにシャナを見つめた。
「え......?いや......わ、私は持ってなくて......」
シャナは誤魔化そうと嘘をついた。
「いえ......私はあなたが配給を得たのを見ていたわ。だからこそ、お願いしているの......この子を見て?昨日から何も食べてない......その時だって沢山食べられた訳じゃないの......」
女性はシャナが運良く配給を得た事をたまたま見ていた。
「......あなたより小さなこの子が食べられていないの......お願い!それを分けてちょうだい!」
女性はシャナに土下座をして懇願した。
「......ごめんなさい......私も前回の配給が無くて......それに、私だけじゃ無くて待ってる人もいるので......」
シャナは心を鬼にして女性の頼みを断った。
「......何よ!こんなに頼んでるのに!あなたみたいなガキが貰えてどうして私が貰えないのよ!よこしなさい!」
断られた女性は突如として豹変してシャナに襲いかかった。
「おい!お前何してる!」
「何よ!話しなさいよ!」
女性は治安維持のためにパトロールしていた警備兵に抑えられた。
「君、大丈夫か?怪我は無いか?」
「......は、はい......ありがとうございます......」
もう一人の警備兵はシャナに声を掛けた。
「くそ!話しなさいよ!大体配給が滞ってるのが悪いのよ!こんな事してるのは私だけじゃ無いわよ!もっと悪いやつを捕まえなさいよ!」
「いいから、大人しくしろ!」
女性は尚も抵抗を続けていた。
シャナは周囲を見渡す。
「......ずりいぞ!俺にもそれを寄越せ!」
「貰えなかったのはお前のせいだろ!そんな事知るか!」
周囲には同じ様に少ない物資を取り合う人々の争いがそこら中で起こっており警備兵達の数も足りておらず、秩序は崩壊寸前だった。
「とにかく君はもう帰りなさい!......本部、至急応援を......!」
シャナを助けた警備兵達は女性を連れて去って行った。
「は、はい!」
シャナはそのまま走り出した。
テントの間に出来た狭い道を駆け抜けてイーダと2人で暮らすテントに辿り着いた。
2人のテントは難民キャンプの端の方であった。
レッド遺伝子のイーダはやはり周囲から良い印象を得られずに2人は外にはあまり出ない様にして、端の方でひっそりと生活をしていた。
(やっと着いた......広場まで遠いから大変なんだよなぁ......まぁ仕方ないけど)
「イーダちゃんただいま!」
シャナはゆっくりとテントの中に入る。
「あ、シャナちゃんお帰りなさい!」
シャナの姿を見たイーダは笑顔で出迎えた。
テントの中には簡易的なベッドが2つ置いてあり、それ以外はちょっとした小物がある狭い空間だった。
「ジャジャ〜ン!今日は配給貰えたよ!一緒に食べよう!」
シャナはサプライズのごとくイーダに配給のパンを手渡した。
「うわぁ......ありがとうシャナちゃん!......でも、ごめんね......私のせいで......」
イーダは申し訳なさそうにシャナに謝った。
「全然大丈夫だよ!ほら、久しぶりのご飯だし早く食べようよ!」
「あ......う、うん。ありがとう」
「「いただきます!!」
2人は配給のパンにかぶりついた。
元々ドルゴヌの食料事情は良くなかったがこの状況で品質は更に悪化していた。
それでも久しぶりの食事にありつけた2人は夢中で食べ続ける。
「......ふぅ......美味しかったぁ......ありがとうシャナちゃん」
イーダは食べ終わって再び礼を言った。
「大丈夫だよ。そんなに言わなくても。一緒に頑張ろう!......ね?」
「うん......ありがとう」
2人は互いに励まし合いながら苦難を乗り越えようとしていた。
外では未だに人々が争い合う声が聞こえていた。




