次なる行動
シタデレはゆっくりと説明し始めた。
「今、研究室にいるシリウスって人間のガキはアラデスク殿下を狙ったドルゴヌの刺客だったのですよ。それ自体は阻止しましたが、暗殺に失敗して捕虜になることを恐れたシリウスは自害しました」
シタデレは続けて
「しかし、シリウスの死体は通常の意味では死んでいませんでした......いえ、死んでいるはずなのです。ですが、死体は謎のマインドエネルギー源を持っていて、腐敗する事無く、ただ眠っている様な状態なのです」
「そんな事......あり得るの?」
「私も完全には解明できていませんが......それで、その状態からシリウスを起こすには、身体を動かす燃料となるマインドエネルギーを流し込む必要があるのです」
「それは......シタデレとかがあげるのはダメなの?」
「そうですね。さっきも申し上げた、謎のマインドエネルギーがそれを拒否しているのです。しかし、同じ形状のエネルギーであれば、拒否されずに身体に取り込まれるというのが分かりました」
「ふんふん」
「それで先日行ったオイミャクでシリウスと同じ形のエネルギーを持つ妹のイーダを見つけたのですよ。なので後はイーダを連れてくるだけという訳です」
シタデレは説明を終えた。
「......そうだったのね。でも、そのシリウスって子が生き返るのなら、どうしてリュウキ達に伝えちゃダメなの?」
バヤンの疑問に対してシタデレは
「生き返る......という保証はありません。あくまで理論上の話ですから、妹のエネルギーであっても拒否反応を起こす可能性も十分にあり得ます」
「それにシリウスとあいつらは......知り合いだったようでして、中途半端に生きていると言って最終的に落胆させるのは士気にも関わりますし、知り合いが死んだ後も研究対象として葬られずにいるという事実は気持ちが悪いでしょう。だからです」
「......難しい......わね......」
シタデレの説明を聞いたバヤンは顎に手を当てて悩んだ。
「......姉上、シタデレはあの時シリウスを撃ったのです。彼はそれを後悔しているからこそ、彼女を生き返らせて、リュウキ達にせめてもの償いにしようとしているのです」
アラデスクがシタデレの心情を補足した。
「......違いますよ。共鳴技術が使える様になれば、さらなる進歩が生まれるからです......」
シタデレは即座に否定した。
「あら〜。シタデレも可愛いところあるわね〜」
バヤンはニヤニヤと笑みを浮かべながら、シタデレを見つめた。
「だから違うんですよ!!!」
「隠さなくて良いのよ?その隠れた可愛さは貴方の魅力だと思うわ?」
「......もう良いですよ......とりあえず日程だけ分かったら教えて下さいね殿下。後、バヤン殿下に余計な事を吹き込むのもやめて下さい。それでは」
シタデレは足早に部屋から出て行った。
「あら.......?ねぇ、アラデスク私何か悪い事しちゃったかしら?」
バヤンは首を傾げながらアラデスクに聞いた。
「いえ......どちらかと言えば私ですので、姉上は悪くないかと」
「あら、そう?......その、シリウスちゃんの妹さん、来たら私も会いに行って良いかしら?少し興味あるわ」
「私は構いませんが、非公式に連れてくるつもりなので、あまり事を大きくはしないで頂きたいです。というか姉上は会ってどうするつもりなのです?」
「仕方ないじゃない!貴方も最近はカイマンも私に構ってくれないんだもの!しかも、そのイーダって子は女の子なんでしょ?私は妹も欲しかったのよ!」
バヤンは机をペチペチと叩いて訴える。
「私もカイマンもそういう歳では無いのですよ......姉上とて、国母として民から慕われる存在なのですから......もう少し......こう......品格と言いますか......何と言いますか......」
アラデスクは何か言いたげな顔をしたが、言葉を選んで呟いた。
「......そういえば......最近カイマンが変なのよ。私に何か相談しようとした時があってね。でも、直前でやっぱり大丈夫って言って帰っちゃったんだけどね」
「相談......ですか......私はカイマンに嫌われていますので......話す機会がありませんが......少し気にかけて置きましょう」
「ええ、お願いね。アラデスクも、カイマンも、兄弟喧嘩なんてダメよ?あんまり続けるようならお姉ちゃん怒るからね?」
バヤンはウインクをしながらアラデスクに注意した。
「......カイマンともいつか話さねばならないと考えていますので、今しばらくお待ち下さい」
「ふ〜ん?......あ、私そろそろ公務の時間だから行くわ。またね、アラデスク」
「はい。姉上もお気をつけて」
バヤンは2人を振り回すだけ振り回して退出していった。
「姉上の天然にも困ったものだ......」
残されたアラデスクは静かに呟いた。




