生死の境目
2人は部屋を出てリッテンの研究者へ向かい歩きだした。
「それでシタデレ、何か進展があったと言う事か?」
リッテンはシタデレに問う。
「ええ、オイミャクでおそらくはあの人間......シリウスの血縁者を発見しました。そして、そいつもまた似たような力を持っているようです」
「おお......ぜひ、一度会ってみたい物だ......」
リッテンは子供のように興味津々に目を輝かせた。
「ハァ....会いたいじゃなくて、研究したい、の間違いでは?」
シタデレは呆れたように呟く。
「し、失礼な......まるで私が研究にしか興味ない様な物言いをするな!」
「......はい、はい、分かりましたよ」
2人はリッテンの研究室に入った。
研究室の中は先ほどの会議室の様に広く、天井や壁は真っ白であり、清潔感はあるものの、隅に置いてあるリッテンの机の上には乱雑に書類が積まれており彼の性格を表していた。
そして中央には丁度人間1人が入る大きさのカプセルが鎮座していた。
「......やはり生きている様にしか見えませんね」
シタデレはカプセルの中を見て呟く。
「ああ......だが、目を覚ます事は無い......さながら人形の様だ」
シタデレはカプセルに触れようとした。
「......ああああああ!待って待って!ちゃんと消毒してないなら触っちゃ駄目ですよ!シタデレさん!」
後ろからシタデレに声を掛けた青いショートカットの髪にメガネを掛けて小柄な白衣を着た女性が声を掛けた。
「......リトムか......久しぶりだな......というかお前がここを管理しているのか?」
リトムという名の女性はビニール手袋を2人に手渡した。
「ああ、人間と言っても女性であることには変わりないからな、彼女にシリウスの事を任せているのだよ」
リッテンはシタデレにリトムの事を説明した。
「ほらほら、この子が汚れちゃうでしょうが、ていうかリッテン博士は前にも言いましたよね?」
「......すまん......気を付ける......」
リッテンはしおらしく謝罪した。
「まあ、触るのは駄目ですからね。そして今から彼女のメディカルチェックをしますから。それを見るのは許可しましょう」
リトムはそう言うと、近くにある端末を操作した。
「解除......っと」
彼女がキーボードを打つとカプセルは煙を吹き出してゆっくりと開き始めた。
そしてやがて煙が晴れて、カプセルの中の存在が露わになる。
「さ〜て、シリウスちゃん。今日も健診を始めるよ!」
リトムは手袋とマスクをして近づいていき、シリウスの着ている患者服を脱がそうとした。
「あ、ていうかここは見せちゃ駄目だわ。はい、男どもは出ていきなさい」
リトムは「シッシッ」と手を振るジェスチャーで退出を促した。
「あ、そうだったな......行こうシタデレ」
リッテンはシタデレを連れていこうとした。
「私はそんな人間のガキに興味はない、興味があるのはそいつの力だ。だから気にするな」
シタデレは自信満々に言い放つ。
「......おい......変態......」
リトムは静かに返した。
「シタデレ、君がそういう下心が無いのは理解してる。それは分かっているのだがな......まぁ、その......ここは君が折れてくれないだろうか?」
「ちょっと......!何引っ張るんですか!?」
その一触即発の空気を察したリッテンはシタデレを引っ張る様に連れて行った。
「ハァ....馬鹿2人ね......」
リトムはため息をついた。
「それじゃ......改めて始めようかシリウスちゃん......」
リトムはシリウスの身体をチェックする。
「生きてるのに......死んでる......不思議ね......心臓も自力では動いてないのに......痣から流れ出るマインドエネルギー......一体これは何なのかしら......?」
端末に表示されるデータだけを見れば、心拍も脈も無く、明らかにシリウスは死んでいる。
「この子を目覚めさせる手立て......マインドエネルギーを共鳴させるなんて......ホントに出来るのかな......」
ーー
外に出された2人はリトムの声が掛かるのを待っていた。
「ハァ....私はあのガキの、エネルギーの形さえ確認できれば良かったんだがな......」
シタデレはため息をつく。
「まぁまぁ......女性の事は難しい問題だ。君もそういう事は少し空気を読む事をおすすめするぞ......」
リッテンはシタデレを嗜めた。
「まあ、いつ終わるかはまだ分からんからな......タバコでもどうだいシタデレ?一本やろう」
リッテンはタバコの箱をシタデレに差し出した。
「......結構です。ここで待ってますから」
「そうか......なら、私もやめておくよ」
2人は部屋の前で待つことにした。
「ほら、変態コンビ......もう入っていいよ」
「......ちゃんと出て行っただろうが......」
リトムから許しが出て2人は部屋に入る。
部屋の中にあるカプセルの蓋は開いており、2人はそれに近づいていく。
「さて、早速確認しますか」
シタデレはそう言うと、少しの間シリウスの身体に手を翳して、目を閉じた。
「......早くしてね。この子、いま免疫がない状態だからあまり外気に触れさせたくないんだから」
リトムは2人に注意した。
「ああ、分かっているよ。すぐ終わらせる。だから少しだけ待ってくれ」
リッテンはリトムに謝罪した。
しばらくしてシタデレは目を開いた。
「間違いありませんね。オイミャクで出会った人間と同じです。我々の理論が正しければマインドエネルギーの共鳴という新たな使い方が出来るようになるかもしれません」
「おお!本当か?ならば、早く実行しようではないか!」
リッテンは研究者としての血が騒いだのか急に嬉しそうな顔をした。
「まぁ、落ち着いてください。またオイミャクへ行く機会がある時に連れてこれるか検討しますから」
「そうか......なるべく早く実行したいものだ」
リッテンとシタデレは共鳴の為にイーダを連れてくる段取りを検討した。
「リッテン博士はホントに研究バカね......それにしても、シタデレが何故協力するのかも不思議ね......めんどくさがってやらなさそうなのに......」
リトムは2人の事を見ながら静かに呟いた。




