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Space Liberator  作者: ツインタニア
銀氷のアリゲーター

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この世の全ての上にあれ

スヴァールクスの侵攻によってオイミャク星が受けた被害は大きく、住居やその他の設備など多くの物が戦闘によって破壊されており、復興にはかなりの時間を要する見通しだった。


オイミャク星に残っていたドルゴヌの兵士と民衆は宇宙政府に降伏するという形で星ごと編入された。


「......ドルゴヌ軍、オイミャク星長官ハルア・イオリアです。此度の救援、誠に感謝いたします」


「宇宙政府軍のゲオルギー・ウラソフです。これよりは仲間として共に人類の発展に寄与していきましょう」


2人の代表者は瓦礫に覆われた即席の会談場所にて握手を交わして、それを見た各軍の兵士達は大きな拍手を送った。


「そして......こちらの方が同じくオイミャクの救援に尽力して頂いたエリディアンの皇太子アラデスク殿下です」


アラデスクはウラソフに紹介されて壇上に上がった。


アラデスクはシオとの戦闘で受けた傷から立っているのも、やっとの状態だったが本人の強い希望により、短時間のみという条件で医師から許可を受けた。


「......争い合った宇宙政府とドルゴヌという2つの人類の組織が手を取り合う歴史的な瞬間に立ち合えた事、非常に喜ばしく思っています。そして、そこに我らエリディアンも加わり種族の垣根を超えて外敵に協力して対抗していく事が重要だとも思っています」


アラデスクは軽く演説を行い始めた。


「しかしながら今まで争い合ってきた者同士が手を取り合うのは難しい......故に少しずつでもお互いに歩み寄っていく事が必要です。その為に我らエリディアンに出来ることがあるなら何でも協力させてもらうつもりだ。そして最後にこの融和が永遠に続く事を願っています。以上です」


アラデスクは自身が万全でない事を考慮して非常に簡潔にまとめた言葉を述べて手を振りながら退場した。


会場は再び各軍の兵士からの大きな拍手で満たされた。


「続きまして......」


司会により次の項目が始まった。


やがて会談も終了して、司令官同士の意向で両軍の兵士達やオイミャクの一般市民、そしてエリディアンの兵士も加わり、それぞれの持ち寄った食材で料理を作り宴が始まった。


最初は、敵同士だったという事もあり、宴は静寂に包まれていた。


誰もが互いの顔色を窺い、杯を持つ手さえためらっている様子だった。


「ふむ......どうでしょう、ここは一つ互いの料理や酒を交換し合っては如何かな?」


アラデスクは2人の司令官に提案をした。


「......そうですな、このままでは折角の酒も美味くない......ですが、兵士達にそれを促すのは難しそうだ......まずは、司令官である我々が先陣を切りましょう」


アラデスクの提案にウラソフは同意してイオリア、アラデスク、そしてウラソフの3人は互いの料理や酒を味わい合った。


「ふむ......エリディアンと言うから人間とは食文化が違うのかと思いましたが、中々美味ですな......」


「そちらの食事も中々良く出来ていますな」


司令官の姿を見た兵士達も少しずつ互いに会話が始まり、やがて宴は大きく盛り上がっていった。


この流れはアラデスク達の宴会場だけではなく、オイミャク星の全てに広がっていった。


「くそっ!......こんなに楽しい席ならあいつも来て欲しかった......」


やがて1人のドルゴヌの兵士が口を開いた。


彼は戦闘で戦友を失っており、そのことを思い出して涙を流した。


「俺もだ......スヴァールクスの奴ら......絶対に許せねえ......!お互いに絶対に仇を取ってやろうぜ!俺も協力する!」


1人の宇宙政府の兵士がそれに賛同した。


その賛同はやがて周囲に波及していき、共通の敵を倒すという形で兵士達は団結する事になった。


最初はぎこちなかった笑顔も、酒が回るにつれて少しずつ自然なものへと変わっていった。

言葉は違えど、戦場を生き延びた者同士の間には、説明の要らない共感があった。


「失礼......飲み過ぎた様だ......少し外の風に当たってきます」


イオリアはアラデスク達に告げるとテントを出て瓦礫の闇の中に消えていった。


それに気付いた副官が彼の後を走って追った。


「イオリア司令!......このままで良いのですか!?このまま宇宙政府の言いなりになっては......死んでいった者に顔向けが出来ません!」


副官はイオリアに追い付いて訴えた。


「ソルア......お前は若いながらも、良く私の補佐を務めてくれた......感謝するぞ」


タバコを咥えたまま振り向いたイオリアの目は我が子を見守る親の様だった。


「え......?あ、ありがとうございます......ですが......なぜ、突然......」


ソルアは突然の事に困惑を隠せなかった。


「だが......まだ、お前は若いな......兵士達にとっての望みが分かっていない......」


「の、望み......ですか......?」


「ああ......兵士達にとってはどこの国に属しているか......などは関係ない......重要なのは自らの身と家族、友人の無事だ。お前とてそうだろう?」


「うぐ......で、ですが!国の為に命を散らすという事も習ってきています!」


ソルアは自らの父母の顔を思い出した。


「例え......そう習っても、最終的には......行き着く場所は同じだ。......勘違いして欲しくないが、私はそれが駄目だと言っているのではない。皆、家族は居るものだからな。だからこそ、宴を心から楽しむ兵士の顔を見た時、私は宇宙政府に心から降伏する事を決めたのだよ......」


イオリアは近づいてソルアの肩に手を乗せた。


「お前は若い......そして......皆を指揮して纏める確かな力がある。お前に教える事はこれで最後だ」


「え?いや......私はまだ司令に学びたいです!学ばせてください!司令が宇宙政府に行くと言うのなら何処にでもお供いたします!」


ソルアはイオリアに誠心誠意、頭を下げた。


「......冗談だ......もう行け。私も後一本吸ったら帰る......ああ、そうだ。この資料をアラデスク殿下とウラソフ司令に渡してくれ」


イオリアは一つの封筒を差し出した。



「は......はい。これは......何でしょうか?」


ソルアは差し出された封筒に困惑した。


「案ずるな、オイミャクの今後を説明するための資料だ。私が戻る前に軽く目を通しておく様に言っておいてくれ」


イオリアは心配をかけない様に明るく振る舞った。


「わかりました。皆、心配していますからお早く帰ってきて下さいね」


ソルアは去っていき、やがて見えなくなる。


「......老兵は死なず......ただ消え去るのみ......」


そう呟きながら、彼は家族の写真を見た。


「ソルア......お前が兵士達を導くのだぞ......それはドルゴヌの思想に染まった老いた私には能わぬ、若いお前にしか能わぬのだ......」


イオリアは腰の拳銃を抜いて自らの頭に銃口を当てた。


(ドルゴヌよ......全ての物の上にあれ......この世の全ての上にあれ......)


イオリアの頭の中には祖国を讃える歌が流れていた。





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