地中からの奇襲
全てを思い出した兵士は牢屋の中で大声で奇声を発しながら悶えていた。
「お、おい!しっかりしろ!大丈夫か?」
異常に気付いた看守が数人入ってきて暴れる兵士を押さえつける。
「ハァ....ハァ....苦しい!......痛い!......」
兵士は尚も暴れ続けた。
「おい!応援を呼んでこい!」
看守は更に人を呼んで兵士を抑えようとした。
「ああ......!これは......これは違う!悪い夢だ......あんなのが神である訳ない!」
兵士は幻覚を見ているかの如く何かに怯えていた。
「ああ......真なる......スヴァールクスの神よっ!我が慈愛の女神よ!私は......目的を達成致しました!星庁舎への侵入を成功させましたぞっ!」
しかし突然、落ち着きを取り戻したかと思えば、また暴れるのを繰り返していた。
「やむを得ない。射殺しろ......!」
今いる看守の中で最も階級の高い者が下の看守に命令した。
「えっ.......?宜しいのですか......?」
「今の状況で......こんな狂った奴を置いておく訳には行かないのだ......責任は俺が取る......」
「承知......致しました......」
看守は拳銃を握って兵士に照準を合わせる。
「くそっ......!」
看守は呟きながら引き金を引いた。
ーー
星庁舎から10キロ程離れた場所にシオは佇んでいた。
周りは瓦礫に覆われており、そこに人が住んでいたとは思えない程荒廃していた。
「誰......?私の事を呼ぶのは......私の力を求める......この声は......少しずつ......強く聞こえる様になってる......」
シオは呟きながら、宇宙に顔を向けて目を閉じる。
すると目を閉じている筈の暗闇の視界に2つの小さく丸い光が見えた。
1つは白く清らかな光、そしてもう一つは暗い深淵の闇の輝きであった。
「......見えた......そう......貴方だったのね......だから......プライマリークリスタルを......私に取らせようとしたのね......」
シオは閉じていた目を開く。
「......でもね......貴方の手のひらで......踊ってあげるのも......ここまでよ......マルドゥーク......全てを喰らい尽くして......頂点に立つのは......私達よ......」
シオは星庁舎の方を向いた。
「ふふふ......あの子......ようやく目が覚めたみたいね......私たちにとっては......救済でも......あの子にとっては......地獄でしょうね......」
シオは星庁舎にいるあの兵士の方へと手を伸ばす。
「悪い夢であると願えば......それは地獄を加速させる......救われるには夢のまた夢......私達に帰依するしか無かったのに......残念ね......」
シオはゼータヘッグの元へと向かう。
「シオ様!お越しになったという事は......目覚めた......という事ですか?」
「うん......あの子は死んで......目覚めたよ......あれを出口に......アビスモールにトンネルを掘らせて......」
「ははっ!」
ゼータヘッグは軍勢を大量に呼び寄せると
「我らが女神の力が星庁舎への攻撃の活路を開いた!強きスヴァールクスの者どもよ!今こそ女神の慈愛に応えるべき時ぞ!」
ゼータヘッグの演説に対して集結した凄まじい数のスヴァールクスは雄叫びをあげて応えた。
「行けっ!アビスモールよ。トンネルを掘って我らの道を開くのだっ!」
ゼータヘッグの言葉にアビスモールと言われた巨大なモグラの様な生物も雄叫びをあげる。
その固く鋭い爪は地面に地下鉄も軽く通れるほどの巨大なトンネルを掘り進める事に特化しており、そのトンネルを進む事で地中から奇襲を掛ける事ができる。
アビスモールは命令を受けて即座にトンネルを掘り始め、その後ろに無数の軍勢が続いていた。
「アビスモール......目標が無ければ......掘れないというのさえ無ければなぁ......メルターに相談してみるか......」
ゼータヘッグは小さく呟きながらも進み続けた。
ーー
牢屋には射殺された兵士の死体と2人の看守の姿があった。
「ハァ....ハァ....俺......俺が......人を撃ったんだ......俺が......」
錯乱した兵士を撃った看守は自らの手で人を殺した事で、呆けてしまっていた。
「惚けている場合かっ!今の状況を考えろ!まずは死体を片付けるぞ!」
上官に一喝されて、正気に戻った兵士は何とか身体を動かした。
「ま、まずは......どうすれば......?」
看守は上官に質問した。
「......まずは......死体を運び出すぞ......ほら、持つぞ......」
上官は死体の元へ向かって抱き抱え様とした。
「よいしょっと......ってなんだ......これは......どういう事だ.......?」
「どうしたんですか?」
上官は無言で死体が横たわっていた場所を指差した。
「......えっ?......どうして......血が......緑色なんですか.......?」
看守は理解し難い状況に混乱していた。
「ていうか、地震.......?何かが近づいてきている様な揺れですね......」
「何?気のせいじゃ無いのか......?」
看守は破滅の足音と共に迫り来る災厄の気配を感じていた。




