死への行進
「ルインさん!見て下さい!皆さん無事に砲台を止めてくれたみたいですよ!」
ザメルはルインに4人がミサイル砲台から出てくる映像を見せた。
「流石ですね......」
ルインは静かに呟いた。
「これで私達も自由に動けますね!......ってあれは......」
ザメルは何かに気付いた。
「どうかしましたか?ザメル」
ザメルは今度は遠目に見える黒い巨大な建造物を画面に写した。
「どうやらドルゴヌ軍がここに集結してるようですね」
「これは......オイミャクの星庁舎ですね......」
そのオイミャク星の全てを司る巨大な建物は3つの小高い塔が等間隔に建っており、その建物にドルゴヌの軍勢が集まって行くのを映像から確認できた。
「これは......彼らは要塞に篭って戦おうとしている様ですね」
ドルゴヌ軍はその周辺に長大な防衛戦を敷いてスヴァールクスを迎え撃っていた。
大量にいるスヴァールクスも、地形を巧みに活かしたドルゴヌの集中砲火の前には手も足も出ず、戦いは膠着していた。
ーー
オイミャク星のある場所にてシオとゼータヘッグはドルゴヌの兵士達と戦っていた。
「ハァ.......ハァ......何だよ......何なんだよ......お前......人間じゃないのか!?」
1人のドルゴヌの兵士は声を荒げた。
「ふざけやがって......俺達......第5中隊の皆をよくも......殺してやる!」
兵士の部隊はシオ1人にに全滅させられ生き残っているのは2人だけであり、その仇を取るべく彼は立ち向かった。
「うがぁ......」
しかし、いとも簡単に兵士はまるで豆腐の様にシオの黒く硬い羽で両断され、倒れた。
それを見た隣の兵士は腰を抜かして震えながら地面にへたり込んだ。
「ヒィ......!ど、どうか......どうか命だけはお助け下さい!......お助け頂けるなら......何でも......何でも致します!」
怯えた兵士は土下座してシオに助命を懇願した。
「ゼータヘッグ、星庁舎はまだ落ちないの?」
シオはゼータヘッグに問いかけた。
「......申し訳ございません......ドルゴヌは我らの狙いが星庁舎だと気付いた様でして、厳重に守りを固めており突破口を見出せない様です」
ゼータヘッグは緊張した声で戦況をシオに伝えた。
「あら、そうなの?......私の可愛い子供達だけでは荷が重いかしら......」
シオはいつも通りの口調で呟く。
「お命じ頂ければこのゼータヘッグ、身命を賭してオイミャク星庁舎を陥落させてみせましょう!」
ゼータヘッグは自信に満ちた口調で名乗り出た。
「いや、貴方にはやってもらう事があるから大丈夫よ。別の方法を取るわ。......ねぇ、そこの貴方?助けてくれるなら【何でもする】って言ったわよね?」
シオは怯えた若い兵士に優しい口調で問い掛けた。
「は、はい!何でも致します!ですので......ですのでどうか......命だけはっ!」
「うんうん。大丈夫よ。【命だけ】は助けてあげるから私の言う通りにしてくれるかしら?」
「わ......分かりました......一体......何をすれば......」
シオは兵士の返答を聞き終えると彼の身体に手を翳した。
「目を瞑って」
「は......はい......!」
兵士は言われた通りに目を瞑った。
「痛っ......!」
兵士は目を瞑ってすぐに、左腕に注射針に刺された様な鋭い痛みを感じてそのまま意識を失い地面に倒れた。
「ゼータヘッグ......この人間を星庁舎の近くに置いてきなさい......しばらくしたら目を覚ますから......」
シオは冷たい口調で命令した。
「ははっ......!しかし......一体何をなさるおつもりなのですか?」
「メルターに作らせた新しい兵器を試すだけよ......その為には星庁舎の中に目印が必要なのよ......この人間にそれを埋め込んだから、後は中に入ってもらうだけよ......」
「......承知致しました」
ーー
しばらくして、兵士は目を覚ますと、視界に巨大な星庁舎の塔が映り込んだ。
胸の奥が、理由もなくざわつく。
「痛っ……なんで俺……こんな所に……?
化け物と戦ってて……皆は……?」
記憶のつながらない空白。
しかしそれ以上に──頭の奥で何かが囁いていた。
(星庁舎へ行け……早く……)
「なんだ……この気持ち……でも……星庁舎なら……誰か……」
よろける足で歩き出したそのとき、
廃墟の影から巨大なオメガインフェストが姿を現し、こちらへ向かってくる。
「うわあああああっ! もうダメだ……!」
目を瞑った──だが。
……襲撃は来ない。
恐る恐る目を開くと、オメガインフェストは兵士の横をすり抜け、
まるで 同胞に触れたくない かのように、何事もなかったように通り過ぎていった。
「……どういう……ことだ……?」
理解が追いつかない。
ただ、命が助かった安堵よりも、
自分の身に起きた“変化”への薄暗い恐怖が胸に広がっていた。
それでも足は勝手に星庁舎へと向かって動き出す。




